HOWL BE QUIET|苦しみ抜いた失意の2年間と決別し、新しい仲間と手に入れた喜びのサウンド

僕らを待ってくれていたお客さんに「名脇役」を返したいと思った

──松本さんはバンドに加入されて約半年が経ったわけですけど、心境の変化はありました?

松本 僕は今までサポートとしてバンドに関わることが多かったので、いわゆるバンドマンの方とはタイプが異なっていると思うんです。ちょっとクールになってしまうというか、ライブも「ちゃんとやらなきゃ」という意識が強くて、そこのギャップにすごく悩んでました。

松本拓郎(B)

──サポートをやっていたからこその悩みですね。

松本 そうですね。3人は高校生の頃から一緒にバンドをやっているので、その共有している時間の差も感じました。一緒に演奏してて「この間はなんだろう」という、そのバンドでしか汲み取れない空気があるので、最初はそこを理解する作業から入って。曲に関しても「そういうアプローチがあるんだな」という発見の連続でしたね。特に「幽霊に会えたら」という曲は、初めて聴いたときに「速すぎるやろ!」と思わず言っちゃいました(笑)。

黒木 アハハハ!(笑) もともとはBPMが235くらいあったんですけど、「これ速くないっすか?」と拓郎が言って、それでテンポを変えたんだよね(笑)。

松本 彼らのいいところって、6個下の僕の意見も優しく受け止めてくれるところなんですよね。僕だったら、そんな年下に何か言われたらムカつきますもん。

黒木 ふふふ、全然ムカつかないよ(笑)。

──今作で目を引くのは、竹縄さんがSexy Zoneに楽曲提供された「名脇役」のセルフカバー。そもそもはSexy Zoneが歌うために書いた曲ですよね?

竹縄 そうです。「Mr. HOLIC」のリリースツアー中に、マネージャーから「Sexy Zoneさんの曲で歌詞が決まっていないのがあるから、よかったらコンペに出してみないか?」と言われて。それで「アナタノセイデ」を作詞したら採用していただけた。それがSexy Zoneさんの曲を書いた最初のきっかけなんです。で、その後にまたマネージャーから「春にアルバムを出すらしくて、今度は詞曲提供でコンペに出してみないか?」と誘われて。そのときに作ったのが「名脇役」でした。

──その曲が見事コンペで勝ち抜いて。

竹縄 そんな流れがあったので、最初は自分が歌うなんて微塵も考えてなかったです。だけど、この2年間で「名脇役」を書かせていただけたことは大きかった。拓郎が加入したタイミングで、僕らを待ってくれていたお客さんに何か返したいと思ったときに浮かんだのがこの曲だったんです。

──だけど、よくジャニーズ側から許可が下りましたね。

竹縄 ライブでも歌わせてもらったり、セルフカバーという形で収録できたりしたのは、裏でジャニーズ事務所にお願いをしてくださったウチのスタッフのおかげなんですよ。しかも「名曲をありがとうございます。全然歌ってください」と言ってくださって。そういういろんな方の力添えによって、この曲を歌えると思ったら感謝しかないですよね。

マジで聴いてほしい。それだけ自信があるんですよ

──ちなみに、TBS「音楽の日」に出演されたときは「fantasia」を披露されてましたね。

竹縄 「fantasia」はアルバムの中で最後に作った曲なんですけど、最初は7曲入りにしようという話もあったんです。でもレコーディングを始めるときに「もう1曲、竹縄らしい曲も欲しくない?」ということになって。そのときは「俺らしいってなんだっけ?」と思ったんですけど、すぐに書けたんですよ。多分、心のどこかで答えがわかっていたんだと思うんです。この曲には「当たり前がどれだけ幸せなことか」という意味を込めていて、この曲のおかげでようやく作品としてパッケージできた感じはありましたね。

──今までは切ないメロディで泣かせる楽曲も多く歌われてきましたけど、今作を通していよいよ「明るい曲だけど泣ける」という域に到達した気がするんですよね。

竹縄 そういうのが今までなかったんですよ、僕ら。ド明るいか、ド暗いかだったので、前向きなバラードを書きたいと自分の中でずっと思っていて。だから、今そう言っていただけたのはすごくうれしいです。

──初期衝動を取り戻しつつ、松本拓郎という強力なメンバーを迎えてサウンドのクオリティも上がっている。今、すごくいい状態だなという感じがします。

岩野 まさに僕自身も感じていて……すごくいいアルバムができたと思っているんですよ。それぞれのよさも出ているし、拓郎が入ってきてHOWL BE QUIETがやってきたことをいい意味で昇華したアルバムが作れた。だけど音楽の場合は、どんなにいいアルバムを作れたとしても聴いてもらえないと意味がないんですよね。聴いてくれた人にとって、いつ僕の曲が懐メロになるかわからない。1回“懐メロ”と認識されちゃったアーティストって、もう一度聴いてみようと思ってもらえないんじゃないかなと思うんです。でもすごくいいアルバムができたからマジで聴いてほしい。今はどうやったらこのアルバムのよさを直接ライブで伝えられるのかばっかりを考えているし、たくさんの人にライブへ来てほしいなと思います……それだけ自信があるんですよ。

お客さんとの関係こそが自分にとっての“ステージに立つこと”

──最後にお聞きしますけど、今の竹縄さんにとって“ステージに立つ”ってどういうことですか。

竹縄 ちょうど最近、僕もそんなことを考えてて。いろんな意味合いがあると思うんですけど、僕の中でステージに立つって「待ってくれている人がいる」ということだなって。学生の頃はまた違ったと思うんですよね。音楽が好きで、バンドが好きで、ライブハウスで歌ってみたいという好奇心でバンドをやっていたんですけど、今歌えるのは待っていてくれる人たちがいるからで。特にこの前のツアーで思ったんですけど、2年間も作品を出してないのに「ワンマンをするよ」と言ったら来てくれるお客さんがいたんですよ。2年って言葉だけだと、そんなにたいしたことないように聞こえますけど、すごい長さだなと思うんです。だから、ステージに立ってみんなの顔を見たときに心から「ありがとう」と言いたくなったし、そこに立てることがどれほど幸せなことか本当に噛みしめながらライブをしていたんです。自分にとって“ステージに立つこと”は当たり前のことじゃないし、お客さんとの関係こそが自分にとっての“ステージに立つこと”だなと思った。だからこそ、これからも立ち続けたいなって。

──岩野さんはどうですか。

岩野 俺はこのバンドを大きくしたいし、このバンドを評価してほしいんですよね。別に趣味で音楽をやっているわけじゃなくて、しっかりとたくさんの人に必要とされたいからHOWL BE QUIETをやっている。やっぱりステージに立っているときに自分を一番評価していただいてるなと思うんですよ。

黒木 「お客さんに評価してもらっているな」と思うの?

岩野 うん。嫌いだったら嫌いだし、好きだったら好き。ライブが一番そういう評価ができる場所だと思うんですよね。だから俺は、ファンの人に感謝しているからこそなんだけど、全身全霊でぶつかれるのがステージです。人によっては「ステージが一番落ち着く」と言う人もいると思うんですけど、俺は全然そんなことなくて。やっぱりステージは勝負する場なんですよね。逆に言うと、一番バンド自身が商品としていられる。そういう自分自身の力を発揮できる場が、まだ自分たちにあることがめちゃくちゃうれしいことだし、この2年間で「ライブをできることはありがたいな」と痛感した。だからこそ本気で勝負したいと思います。

HOWL BE QUIET
HOWL BE QUIET「Andante」
2019年7月31日発売 / ポニーキャニオン
HOWL BE QUIET「Andante」

[CD] 2484円
PCCA-04805

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収録曲
  1. 覆水盆に返らず
  2. fantasia
  3. ヌレギヌ
  4. Reversi
  5. バーバラ
  6. 名脇役
  7. 幽霊に会えたら
  8. Dream End

公演情報

HOWL BE QUIET「HOWL BE QUIET 2019 album release ONE MAN LIVE」
  • 2019年9月1日(日)千葉県 千葉LOOK
  • 2019年9月8日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2019年9月21日(土)福岡県 INSA
  • 2019年9月23日(月・祝)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2019年9月28日(土)広島県 Back Beat
  • 2019年9月29日(日)大阪府 Music Club JANUS
  • 2019年10月3日(木)東京都 LIQUIDROOM
HOWL BE QUIET(ハウルビークワイエット)
HOWL BE QUIET
2010年結成のピアノロックバンド。2013年12月に発表した1stアルバム「DECEMBER」が、タワーレコードのスタッフが選ぶ「タワレコメン」に選出される。2016年3月にシングル「MONSTER WORLD」でポニーキャニオンよりメジャーデビュー。8月にテレビアニメ「DAYS」のオープニングテーマを表題曲とするシングル「Wake We Up」を発表し、2017年5月にメジャー1stアルバム「Mr. HOLIC」をリリースした。2018年秋からは竹縄航太(Vo, G, Piano)、黒木健志(G)、松本拓郎(B)、岩野亨(Dr)の4人編成で活動。2019年7月に2年ぶりのアルバム「Andante」を発売した。