ナタリー PowerPush - 星野源

復活の武道館、療養期間、今の思いを語る

3月8日(土)13:00より、WOWOWにて星野源の特集プログラム「星野源スペシャル」がオンエアされる(参照:星野源づくし!WOWOWで武道館ライブ、初主演映画OA)。この番組では、2月6日に行われた初の日本武道館単独公演「STRANGER IN BUDOKAN」の模様、初主演映画「箱入り息子の恋」、特別コーナー「TV Bros.TV 別冊 星野源」という3つのコンテンツが楽しめる。

ナタリーでは放送を前に、番組用に収録された本人インタビューの模様をテキストで公開する。星野は、和やかな笑いに包まれた復帰ライブの裏側や、療養のための活動休止期間、高評価を得ている俳優業について大いに語ってくれた。

取材 / 加藤蛍 文 / 鳴田麻未 ライブ撮影 / 磯部昭子

「初めての武道館はあっという間」は本当でした

──日本武道館でのライブを終えて、まだそんなに日数が経ってないかと思うんですけど、今振り返ってみて率直にどんな感想を持っていますか?

「星野源 ワンマンライブ “STRANGER IN BUDOKAN”」の様子。

ものすごく、あっという間でした。いろんな人から「初めての武道館はあっという間だよ」って言われて「本当?」って思ったんですけど、本当でした(笑)。ほんとにあっという間で。ちゃんと歌わなきゃとか、ナースの段取り忘れないようにしないととか(笑)……考えてるうちに終わりました。でもすごい楽しかったです。すごい楽しかった。

──緊張はされてましたか?

してたと思います、たぶん。

──それもちょっと曖昧な感じで(笑)。

うん。なんていうか、舞台に出ちゃうともうそれどころじゃないんでわかんないけど、やる直前はやっぱりどうしても変な感じになってましたね、動きとか。

──ナースに抱えられての登場をはじめ、すべての演出やセットリストは星野さんご自身がお考えになったと聞きました。

はい。間に入る「一流ミュージシャンからのコメント映像」とか、その人選とか、客入れ、客出しの音楽もそうです。

──その構想は、延期となる前からすでにあったんですか?

幕間のコメント映像に関しては1回目に療養したタイミングで思いついて、アンコール2曲をギターなしでハンドマイクで歌うっていうのは、そのあとの休み中に思いつきました。

──お休みされている間、武道館ライブのことはいろいろ考えてらっしゃったんですか?

うーん……考えましたね。もちろん武道館のことだけじゃなくて。テレビ観てると知り合いがお芝居してたり、ラジオ聴くと知り合いの曲が流れたりとかするんで、どうしてもね……考えちゃいますよね。

──でも、当初の予定どおりやっていたら見れなかったようなことが、延期になったことで進化していたり、バージョンアップしていたりという側面もきっとありますよね。

そうですね。1回目の復帰のときは、血圧を上げちゃいけなかったんですよ。静かにしてないといけなくて、楽しむとか、盛り上がるとか、テンション上げるっていうのを抑えなきゃいけなかったんです。だからたぶんあのまんま武道館をやってたら静かなライブになってたと思います。今回はそんなことなくて、すごく具合がよくなって「もう何してもいいですよ」って言ってもらえたんで。

──お医者様に。

「暴れてもいいし、激しい運動してもいいし、ヘビメタやっていいよ」とも言われたので、「じゃあヘドバンしてもいいんだ」と思って(笑)。まあそこまではやらないですけど、自分が楽しいと思うこととか、テンションを上げたりとか、大声で歌うとか走るとか、そういうのをやれるようになったので、それがすごくでかいですね。

ずっと1人で家でWii Uカラオケやってましたね

──リハーサルはどれくらい前から始めたんですか?

今年に入ってからです。

──じゃあ今年に入ってから身体が自由に動かせるようになったという感じ?

星野源

そうですね。だからそれまではずっと1人で家でWii Uカラオケやったりしてました。練習として、自分の歌を歌うんです。そのときは夏フェスの時期だったから、知り合いのミュージシャンとか事務所の人はみんな夏フェスに行ってて。で、俺は1人で家でWii Uカラオケの夏フェスステージで自分の歌を歌うわけですよ。「何これ? 何この孤独感!」みたいな(笑)。でもすげえ面白いの、あはは(笑)。最近、自分Sだと思ってたんだけどMなんじゃないかなと思い始めました。

──1人遊びにちょっと悦びを見出してしまったと。

悦びっていうか、すんげー寂しいけど面白え、誰かにこの面白さを見せたい!っていう。「♪映すだーけー」(※「夢の外へ」)とか歌ってるんですよ。それに合わせて、自分の作ったキャラのMiiが踊ってるんです。バックダンサーとかいて、すげー盛り上がってる!って。

──その歌はその人たちだけに向けて歌ってたわけですよね(笑)。

そうです。任天堂に向かって。

──その行動は、歌いたいっていう欲求とか、勘が鈍らないように、感覚を保つためにみたいな気持ちだったんですか?

そうですね。ものすごい時間が空いちゃったので練習しないとまずいだろうっていう、それだけですね。もともと歌がすごくヘタなので。しかも人前に出る機会も前は頻繁に出てたから慣れてたけど、今回は振り出しに戻ったみたいな感じで。「ちゃんと練習しないと」と思って。

一発で「この人バカなんだな」と諦めてくれる言葉

──そんなふうにパワーを溜めていた期間があって、感慨深い気持ちで迎えた武道館の日だったと思うんですけど、実際ステージに立ったときは何を思っていたんですか?

始まった瞬間は「お客さん楽しんでくれるかな、大丈夫かな」っていう感じでした。でもエロナースとイチャイチャしながら出ていった瞬間にみんなワーッとしてくれて、ゲラゲラ笑ってくれたんで、それですごいホッとしました。なんかこう、お客さんに「大丈夫かなあ」って不安に思われるのはイヤだったんです。普通にやったらそうなっちゃうから。すごい長いこと延期しちゃったんで、みんな心配してくださってるんでね。だから、いい意味で「大丈夫だな」って思ってもらいたかったというか、「この人バカなんだな」って半ば諦めるみたいな(笑)。そういうふうになったらいいなと思ってました。

──「心配して損したよ」くらいに思ってもらえれば。

そうですね。

──それがあの第一声の「ただいまんこー!!」に(笑)。

あれはWOWOWでは流れるんですかね。

──どうなんでしょう。

ピー音になるかもしれない(笑)。

──あれでファンの方は「あー、元の星野さんだな」ってすごく感じたんじゃないかなあと。

別に普段からすごく(下ネタを)言うわけじゃないんですけどね。ただやっぱり、一発で諦めてくれる言葉って何かなって考えたんですよ(笑)。一発で「あー、こいつバカだなあ」と。それで「楽しもう」って思ってくれたらいいなっていう、その一言で。

──シリアスにならないほうがいいかなっていう?

そうですね。やっぱりどうしてもね、自分で言うのもアレですけど、重いじゃないですか、症状が。だから普通にやったら“感動”になっちゃうと思うんで。別に感動させようとかしなくてもそうなっちゃうと思うんです。それはちょっとやりたいことの本意ではないんで。僕は面白いことができたら基本的にはいつも満足なので。

──お客さんとの掛け合いも相変わらずでしたし、そこは武道館になっても変わらないんだなあと思いました。

いつも通りにできました。びっくりしたしうれしかったのは、男の声援が多かったことですね。ステージから見たら客席の4割くらい男の人がいて。

──そうですね。客席から観ていても男性が多いなあと思いました。

「ウオー!」みたいな声が聞こえたり、「キャー」って声もあって、偏ってない感じがして。みんな来てくれた感というか。すごく居心地のいい場でした。

──年齢層もちびっこから上の方までいらっしゃいましたしね。

自分はいわゆるターゲットを設定してるわけじゃないんで、ほんとにいろんな人がいて。その中で好きにいろいろやれたのがうれしかったなあ。やっぱりカツラかぶってサングラスして踊ってると楽しいですね。

──楽しいですか(笑)。あれ、以前だったらやろうと思えてましたか?

うーん……。やっぱり1回目の休養のあとは思えなかったですよね。体調的にできなかった、そういうことが。「こういうのやりたいな」とはずっと前から思ってたんですけど、やれたし楽しかったですね。それから、いわゆるお金をたくさんかけてるライブ……今回もかなりかかってますけど、特別な装置とかないじゃないですか。そういうのはあまり使わず、今まで出会ってきた面白い人と一緒に何かやりたいっていうのが一番強かったです。映像を作ってくれた山岸聖太さんも、アナウンスをやってくれた寺坂直毅さんも。バンド含めてみんなであのライブをやれたのが、すごいうれしかったですね。

WOWOWプライム「星野源スペシャル」

2014年3月8日(土)13:00~

<放送内容>
13:00~ TV Bros.TV 別冊 星野源 #1武
13:15~ 「箱入り息子の恋」
15:15~ TV Bros.TV 別冊 星野源 #2道
15:30~ 星野源 ワンマンライブ “STRANGER IN BUDOKAN”
17:00~ TV Bros.TV 別冊 星野源 #3館

星野源(ほしのげん)

星野源

1981年1月28日埼玉県生まれのシンガーソングライター、俳優、文筆家。代表的な出演作はテレビドラマ「11人もいる!」「ゲゲゲの女房」、映画「箱入り息子の恋」「地獄でなぜ悪い」、アニメ映画「聖☆おにいさん」など。2000年には自身が中心となりインストバンドSAKEROCKを結成。2003年に舞台「ニンゲン御破産」への参加をきっかけに大人計画に所属する。2010年に1stアルバム「ばかのうた」、2011年には2ndフルアルバム「エピソード」をリリース。その後も順調にリリースを重ねる中、2012年12月にくも膜下出血のため当面の活動を休止することを発表。翌年復帰すると5月にアルバム「Stranger」をリリースするも、6月に病気治療のため再び活動休止へ。これを終えて2014年2月に、延期していた日本武道館公演を開催した。3月からホールツアー「星野源の復活アアアアア!」を行うことが決定している。