広く届いてほしいけど、歌う対象は半径1メートル以内

──皆さんはコアな層に寄ったこともできるでしょうし、もっと売れ線なこともやろうと思えばできるはずなのに、その真ん中の一番難しい位置で勝負している気がして。

KURO　うん、そうですね。協調と主張のバランスはいつも曲作るときに悩むところです。

──このポジショニングには、グループとしての姿勢や信条みたいなものが関係してるんでしょうか。

MICRO　アーティストによって、わかる人に届けばいいっていう人と全方位にメッセージを発信する人とがいると思うんですけど、僕らは欲張りなんで両方加味した上で作りたいんですね。さらに、曲は常に一番いいものを生み出したいし、それを1人でも多くの人に聴いてほしい、1人でも多くの人にライブに来てほしい。紅白も出たい、オリコン1位も取りたい、ドームライブだってアリーナツアーだってやりたい、海外にだって行きたい。そういうハングリー精神は今もあるし、いくつになっても変わらないと思います。

KURO　そこに補足すると、そういうでっかい気持ちはあるけど、歌にする対象はものすごく狭かったりします。自分の半径1メートル以内にあるほど身近なことを取り上げたり、実際そばにいる人のことを思って曲を作ることが多いですね。でも世に出すからには広く届いてほしいっていう。

──多くの人に聴いてほしい、という気持ちはあっても、それを狙った曲を作ったりはしないと。

KURO　はい。世界中を視野に入れてみんなを幸せにしたいっていう気持ちはさらさらないですね。まずは身近な人やものを大事にしたい。

MICRO　例えば、僕にとっての「みんな」と聴く人にとっての「みんな」をリンクさせるのはなかなか難しいことだけど、僕にすごく好きな人がいるとして、その人への思いっていうのは聴く人の一番好きな人への思いと重なる部分があると思うんですね。同じ人間なんで。

──確かにそうですね。そういう精神はグループ結成当初からあるものですか？

KURO　インディーズの頃からわりと意識してますね。もちろんメジャーフィールドで活動するにあたって、ヒップホップのヒの字も知らない不特定多数の人たちにメッセージを発信していくわけですから、スタイルの変化は多少ありました。でも言葉選びとかアプローチの仕方が変わっても、やっぱり歌う対象、インスピレーションの発芽はものすごく足元にあるんですよね。

メンバーとの出会いは奇跡

──ところで、皆さん3人とも本当に仲が良いですよね。これまでにグループ存続の危機などはなかったんですか？

KURO　表立ったケンカはなくても、やっぱりそれぞれ鼻持ちならないこともあっただろうし、言わないだけで腹わた煮えくり返ってるときもあっただろうし、2人は危機的じゃなくても1人は危機的って感じてるときもあったと思いますよ。だけど、なんていうか……3人ともすっごいいいヤツなんですよね。

一同　わははは！（笑）

KURO　いやいやホントに。僕らは、自分にないものをほかの2人が補ってくれていることを、全員よくわかってるんです。俺にないものをMICROは持ってるし、MICROにないものを俺が持ってて、U-ICHIは俺とMICROにないものを持ってて、っていう絶妙なバランスがあって、どんな危機的な状況になっても誰かがそれを察してフォローするし、誰かが優しいんですよ。だからメンバーを心底嫌いになったこともないし、音楽に対してもそう。我ながら本当にいいグループだなと思います。

──うんうん。

KURO　俺ね、2人との出会いって奇跡だと思うんですよ。いいメンバーと巡り会えなかったってだけで、音楽は素晴らしいのに終わっていくアーティストっていっぱいいるでしょ。でも僕らはそうならなかったし、これからもそうならないと信じてます。

U-ICHI　音楽的になんでケンカにならないかっていうと、やっぱメジャーでやってるからじゃないかな。メジャーでやろうって3人で決めた、イコール売れたいっていうのが一番なんですよね。だからそのために歌モノっぽくなるのも、キャッチーなものを求められるのも必然だったし、方向性を変えることも受け入れられたんだと思います。あと、3人だと多数決とっても2対1でちゃんと白黒つきますからね。そこが2人だと折り合いつかないことがあるかもしれない。

MICRO　それから、3人がお互いのことをわかってるからこそ、気を遣って、コミュニケーションに時間がかかることもあるんですよ。それで周りのスタッフから「男同士なんだからもっとガンガンぶつかって、時には殴り合いのケンカしたっていいんじゃない」なんて言われたりもするんですけど、僕らはそうしたいわけじゃないから。怒りの沸点で油をひっくり返すようなことするより、冷めてきた良きタイミングで話し合うとか、そういうバランスはお互いわかってるつもりだから。KUROが言った「優しいんですよ」っていうのはそういうところ……ちょっと気持ち悪いですね、僕ら（笑）。

──いえいえ！（笑） 3人のグループ愛、しかと受け取りました！