1stアルバムに近いニオイ

──先程MICROさんがおっしゃったとおり、HOME MADE 家族のアルバムは毎回バランスが良く、各々コンセプトに沿った良質な作品という印象があります。過去5枚のアルバムと「AKATSUKI」を比較して、何か明らかな違いがあれば教えていただけますか。

KURO　前作までは、ある種の方程式に基づいて成り立ってたような感じがするんです。気の知れたプロデューサーと制作することで見えてくる答えとか、3人で導き出す答えとか、だいたい決まりつつあった部分が、音楽に対する気持ちがフラットになったことで一度壊れ、とりあえずやりたいことをやるっていう初期衝動が強く出ましたね、今回は。無骨なんだけどエネルギーの塊みたいな12曲になりました。

MICRO　僕はむしろ、1stアルバム「ROCK THE WORLD」に近い感触がありますね。それは楽曲の選び方、言葉の選び方、やりたいことをやったっていうコンセプトも然りなんですけど、「ROCK THE WORLD」以降にテクニックや知識を積んで“HOME MADE 家族らしさ”も追求して、デビュー8年目に入った今、あの頃と同じ空気感が3人の中に漂ってるような。この作品での3人のコンビネーション的なもの、ニオイっていうんですかね。それが1枚目と似てる気がするんです。

──なるほど。U-ICHIさんはいかがですか。

U-ICHI　昔は、自分たちのルーツであるヒップホップやブラックミュージックとポップなフィールドの両方に受け入れられたらっていうオールマイティな攻め方をしてたなって。それに比べて「AKATSUKI」はこの曲でここを攻める、この曲でここを攻める、っていう振り分けがうまくできているというか、アルバム全体で幅広さを表現できるようになりましたね。そうやってジャンルレスにクロスオーバーしているのが僕らの持ち味だと思うんで。

これがいいんですよ。良い意味での泣かず飛ばず感（笑）。

──HOME MADE 家族って、今や十分な認知度があって、固定ファンもいて、順調に活動できる環境がしっかり整っていると思うんですね。でも逆に、その安定感のせいでモチベーションが停滞することや、今より上のステップに進めないという歯がゆさを感じることはないんでしょうか。

KURO　……ここは難しいところでね、歯がゆさはあります。ぶっちゃけもっと売れたいですよ。だけど「売れたい」という気持ちだけで曲を作ってしまうとダメなんです。それは3人ともわかってると思う。だから、そのとき自分たちがいいと思ったものを積み重ねるしかないんです。実際にミリオンヒットを出したことはないからまだ語っちゃいけないと思うんですけど、そうじゃないときっと後悔するから。

MICRO　うん。僕だって歯がゆさはめちゃくちゃ感じますよ。若いアーティストもどんどん出てくるし、曲で訴えかける層も徐々に変わっていくし、僕らのカラーが知られてるからこそ「ホームメイドだからもうわかるわかる」って聴かずして通り過ぎてしまう人もいるかもしれない。そういう人たちを振り向かせる鍵は、新しさか、自分たちに元々あるものか、構築してきたものの中か……どこにあるかは常に探求していこうと思います。

KURO　ただ、ヒットって“当たる”というだけあって事故みたいなものなんですよね。いつどんなタイミングで何が売れるかなんてわからない。だから、もしかしたらもっと効率良くHOME MADE 家族が売れる方法はあるのかもしれないけど、わからないから、自分たちの信じることを研磨して1つひとつ積み重ねていくしかないだろうなって。

──なるほど。もうベテラン手前のHOME MADE 家族が、今「売れる」ことについて語るって興味深いですね。

U-ICHI　実はメジャーデビューする前、誰かに「お前らどっちなの？」って訊かれたことがあって、そのとき僕らはコアなことをやるんじゃなくて「売れたい」「チャート1位取りたい」っていうほうを選んだんですね。だけどシングル単体とか曲単位で僕らを評価してほしくないというか、アルバムでいろんな曲を聴いて、ライブでいろんな側面を見てから判断してほしいっていう気持ちがずっとあって……。

KURO　ちょっと時間かかるよね、だから。

──かなり地道な方法かもしれませんね。

KURO　こういうグループにしては簡単にフィーチャリングとかしないしね。

MICRO　これがいいんですよ。良い意味での泣かず飛ばず感（笑）。

一同　あははは（笑）。

MICRO　まあいつか、僕らがいいと思ったものが時代の流れとかタイミングと合えばヒットが生まれるだろうと。かと言って時代に合わせようとはしたくないし、自分たちの納得できない楽曲でブレイクしてもあまり幸せに思えないかもしれないから、僕ららしいやり方でやっていくのが一番なんでしょうね。