Homecomings「knit」特集|バンドのすべてを注いだ新体制初シングル (3/3)

関根史織、高井息吹を迎えて

──「knit」は「see you, frail angel. sea adore you.」以降のバンドのムードを汲みつつ、Homecomingsがもともと持っている温かな空気感をまとった楽曲になっています。お二人の中で共通認識として持っていた楽曲のイメージや、サウンド面でリファレンスにした曲はあったんですか?

福富 最近のHomecomingsを表現したいと思いつつ、地上波のドラマの主題歌やからちゃんとポップスとして仕上げることを前提としました。だから、それに対して今の自分たちの感覚を合わせるならフォークトロニカ的な音像がいいんじゃないかと。細かくグリッチの音を入れていたり、今のHomecomings感が持続するように意識しながら作りました。

左から福富優樹(G)、畳野彩加(Vo, G)。

左から福富優樹(G)、畳野彩加(Vo, G)。

──レコーディングには吉木さんがドラム、Base Ball Bearの関根史織さんがベース、高井息吹さんがピアノで参加しています。関根さんと高井さんは、どういう経緯でご一緒することになったんですか?

福富 まず関根さんのことから話すと、ほなが卒業するとなって、どんなベーシストと一緒にやりたいかを話し合う中で、吉木さんが関根さんを提案してくれたんです。2人は同い年で昔から友達なんですけど、一緒にバンドをしたことはなかったみたいで。

畳野 ベボベは高校の頃からすごく好きなバンドだったから、関根さんの名前が出てきたときはビックリしました。

福富 僕が最初に買った「ROCKIN'ON JAPAN」は2003年の12月号なんですけど、表紙はレミオロメンで、ニューカマー紹介のページに「夕方ジェネレーション」の頃のBase Ball Bearが載っていて。メンバーが高校生であることとか、バンド名のインパクトでベボベを覚えて、それからどんどん好きになりました。それに「see you, frail angel. sea adore you.」の1曲目「angel near you」のイントロのギターのグリッチっぽいフレーズは「リンダ リンダ リンダ」(関根が主要キャストを務めた2005年公開の青春映画)のオープニングタイトルをイメージして作ったんですよ。

──それはたまたま?

福富 そうなんですよ。その時点では「リンダ リンダ リンダ」がリバイバル上映されることも全然知らなかったですから。

畳野 いろんな偶然の重なりがあったよね。実際にお声がけしたら関根さんも喜んでくださって。

──スタジオで音を合わせてみていかがでした?

福富 先輩だけど自分たちの作品だから、ただ「素晴らしいです。バッチリです」とだけ言うのはよくないし、関根さんに変な気を遣わせるのも申し訳ないので、演奏を聴いて感じたことをちゃんと伝えようと思ってたんですけど、本当に言うことなかったよな?

畳野 うん(笑)。

福富 その場のアイデアでアレンジが変わっていくのもめっちゃ面白かったですね。曲の土台を作るのに時間はかかったけど、バンドで演奏したりレコーディングする作業はすごくスムーズでした。

──高井さんとはどういうつながりなんですか?

畳野 息吹ちゃんとは3年くらい前にソロで弾き語りライブをやったことがあって、それからプライベートでも遊ぶような関係になりました。

福富 デモの時点でピアノの音は入れていて、ピアノは彩加さんも弾けるんですけど、せっかくやったら誰かにお願いしようかって話になったんです。その中で名前が挙がったのが息吹ちゃんで。

畳野 私は息吹ちゃんの作品がすごく好きで、彼女にしか作れないピアノの音像があると思ってるんですよ。「knit」を作るうえでイメージしていた冬のキラッとした光や夕日が沈む瞬間の眩しさを、息吹ちゃんの作品からも感じていて。そしたら息吹ちゃんも前向きに「この曲に雪を降らせます」と言ってくれて(笑)、その言葉通り素敵なピアノを入れてもらいました。

畳野彩加(Vo, G)

畳野彩加(Vo, G)

キーワードは“編み直す”

──今泉監督は完成した「knit」を聴いて何かおっしゃってましたか?

福富 オフィシャルのコメントが出る前にLINEで感想を送ってくださったんですよ。それはパーソナルな内容なので意訳になるんですけど、「knit」の歌詞が持っている決めつけなさ、手放すことや離れること=マイナスではないという表現をとても気に入ってくださったみたいで。ドラマの脚本を読んだときに自分の中で浮かんだキーワードが“編み直す”だったから、そこを読み解いてくれたのはうれしかったですね。

畳野 うん。これ以上ないくらいいろんなことを試して、これ以上ないくらい考え抜いた結果が「knit」なので、楽曲に込めた冬っぽさを全力で感じてもらえたら私はそれで十分です。

福富 「冬のなんかさ、春のなんかね」は会話の描写が多くて、主人公がいろんな人に自分の身の回りに起こったことを話すんですよ。気軽に話せる人がいて、気軽に話を聞いてくれる人がいる。その関係っていいなと思う一方で、そういう存在が誰にでもいるわけじゃないですよね。「親愛なる安心のひかりたち」という言葉で表現しましたけど、「knit」がそういう存在の曲になったらいいなと思います。

福富優樹(G)

福富優樹(G)

純度高く開けた音楽を

──2月から新体制初の全国ツアーが開催されますが、バンドとしての今後の展望を最後に聞かせてください。

福富 「see you, frail angel. sea adore you.」で自分の作家としての軸を確立できたと実感していて、歌詞を書くにしても曲のアレンジをするにしても1つの指標になっているので、あのアルバムと同等かそれ以上の作品を作りたいです。いくつかレコーディングが終わっていて、それはバンドとしての強度が高まった曲になっていると思います。

畳野 ほなの卒業がポジティブなものだったこともあるし、サポートメンバーやスタッフの人たちのおかげで前向きなモードになっていて。好きなことを続けてきた結果、これからもバンドとして進んでいく自信がついたから、もっと表向きになってもいいのかなという気持ちになってますね。前向きな空気感を持ったまま進んで行くのが理想で、「私たちも大丈夫だし、みんなも大丈夫だよ」ってことを楽曲で表せたらいいかな。

福富 今は作家性を捨てずに外に開いたものを作れる時代だと思うんです。むしろ作家性を出すことがポップさにつながる素敵な時代やと思うし、作り手としてやりがいもあるので、そういう曲を作っていきたいです。「see you, frail angel. sea adore you.」を出したあとに、次のアルバムは思いっきりエレクトロニカに振り切った1枚にしようかって話もあったんですけど、彩加さんが言うように外に向ける感覚も大切にしたくて。外に向ける=無理してポップにするわけでもないし、自分たちなりの美しいものを提示して、それがポップなものとしてポニーキャニオンからリリースされる面白さがあると思うんです。それはIRORI Records、カクバリズム、Second Royalという座組やからこそできることやと思うから、やりたいことの純度を高くしたまま、なおかつ外に開けた曲を作れたらいいですね。

左から畳野彩加(Vo, G)、福富優樹(G)。

左から畳野彩加(Vo, G)、福富優樹(G)。

公演情報

Homecomings Tour 2026「I'm not ok. you're not ok. and that's ok.」

  • 2026年2月10日(火)京都府 KYOTO MUSE
  • 2026年2月11日(水・祝)石川県 vanvanV4
  • 2026年2月20日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2026年2月21日(土)香川県 sound space RIZIN'
  • 2026年2月23日(月・祝)福岡県 BEAT STATION
  • 2026年2月28日(土)北海道 SPiCE
  • 2026年3月13日(金)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2026年3月15日(日)宮城県 Darwin
  • 2026年3月18日(水)東京都 LIQUIDROOM

プロフィール

Homecomings(ホームカミングス)

2012年、京都精華大学在学中に福富優樹(G)、畳野彩加(Vo, G)、石田成美(Dr)、福田穂那美(B)の4人により結成されたバンド。2014年に1stアルバム「Somehow,Somewhere」をリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演などライブ活動も精力的に展開している。2019年に活動拠点を京都から東京に移し、2021年5月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsからアルバム「Moving Days」をリリースしてメジャーデビュー。2023年4月にはメジャー2ndアルバム「New Neighbors」を発表した。2024年2月にくるりを迎えて地元・京都のKBSホールで開催したライブイベントをもって石田がバンドを卒業。11月にメジャー3rdアルバム「see you, frail angel. sea adore you.」をリリースした。2025年12月に東京・EX THEATER ROPPONGIで行われた過去最大規模のワンマンライブをもって福田が卒業。2026年1月に新体制初の新曲「knit」を発表した。