ナタリー PowerPush - 日笠陽子

自称「恥ずかしがりの緊張しい」声優 一大プロジェクトの看板を背負う

日笠陽子&長濱博史対談

きっかけはコンビニ感覚

──そもそもPVの監督に長濱さんを起用することになったきっかけは?

日笠 私が「長濱さん、ちょっとやってくれませんか?」って(笑)。

──「ちょっとコンビニ行かなーい?」くらいのノリで誘ったのがきっかけ?(笑)

写真左から日笠陽子、長濱博史。

長濱 こっちにしてみたら、その「コンビニ行かなーい?」くらいのテンションで、「長濱さんちょっと死んでくれない?」くらいの案件を持ち込まれた感じですけどね(笑)。

日笠 いや、お仕事がお忙しいのはわかってたんですけど「言ったらやってくれるんじゃないかな?」と思いまして……。忙しいかもしれないけど。

──無責任に声をかけたわけではない、と。

日笠 私もみんなも死ぬ気でやるから!って。「自分たちの大切な何かを賭けられるものを作りたい」とは思ってました。だから「一緒に何かやりたいです」って話をさせていただいて。

長濱 「で、何を?」って聞いたら「忙しいのはわかってるんだけど、PVを一緒に作ってみたい」って言ってくれて。「長濱さんとなら新しいものができると信じてます!」って話をされたので「ならいいよ」って。

日笠 それを聞いて私は「じゃあプロデューサーさんに言ってみます!」って。

長濱 完全にコンビニ感覚、安請け合いで始まった企画なんです(笑)。

「たぶん私と監督は同じところにいるんだろうな」

──一緒にお仕事されて長いんですか?

長濱 「惡の華」(2013年)が初めてなんですよ。ただ、なんて言うんだろうな? こう、カチッとつながる部分があって。

日笠 ピンとくる、みたいなところがあるんですよね。

長濱 だから最初、日笠さんはやたらと「怖い!」って言っていて。「なんなの?」「何、あんた!」って。もちろん「あんた」とは言われてないけど(笑)。

日笠 「なんなんですか?」「なんでそんなにわかっちゃうんですか?」とはよく言ってましたね(笑)。

──それが長濱監督に白羽の矢を立てた理由?

日笠 ホントにそうかもしれませんね。「映像作家だから」とか「監督だから」とかっていうよりも、私も監督と一緒。「たぶん私と監督は同じところにいるんだろうな」っていう感覚があったので。

「イメージを聞いた。わかった。絵コンテを描いた」

──「同じところ」って? 感性が似ているということ?

日笠 「感性」って言っちゃうと……。

──安直すぎます?

長濱 でもなんて言うんだろう?

日笠陽子

日笠 「感性」が一番近い言葉なのかもしれないですね。「Glamorous days」っていう曲をもらったときから「PVはこういう映像にしたいんだよなあ」っていう画がなんとなく頭に思い浮かんでたんですよ。でも私はそれを人に伝える術をもってなくて。想像する力しかないみたいで、映像のイメージを絵に描き起こすとか、話をして伝えるっていうことがうまくできなくて。「ぬいぐるみがバーン!ってするんです」とか「それがグシャグシャになるんです」っていう感じで、断片的なイメージは言葉にできるんだけど、それではなかなか全体像は伝わらないじゃないですか。

──PVを観れば、確かにぬいぐるみがバーン!ってなっているし、部屋の中がグシャグシャになってはいるものの、その逆。「ぬいぐるみバーン!」という言葉からあの映像を作れるかって言われれば、確かに難しそうですね。

日笠 でも長濱さんは……。

長濱 なんかわかっちゃうんですよ(笑)。「一緒に作りたい」って言ってくれたあと「じゃあ、イメージをメモして持ってくるから」って「ぬいぐるみバーン!」とか「宝石でデコレーションされたクマ」とか「なんかこうアンティークっぽいイス」とか、とにかく断片的な言葉がいっぱい書いてあるメモを持ってきたんですよ。

日笠 「ちょっと謎の絵」とか「宝BOX!」とか(笑)。あとは「そういうものがいっぱい置いてある部屋で、私はドレスを着てアンティークっぽいイスに座ってて」「人形みたいになって部屋に閉じこもってるんだけど、でもライブはやりたいと思っている」とか、曲を聴きながら思い付いたことを全部書き殴ってお渡ししました。

長濱 で、オレはそれを見て「うん、うん」と。「じゃあそのドレスやデコレーションされた部屋は○○っていうことを表していて、そのデコレーションされた部屋にいる日笠さんと、ライブの場面で歌う日笠さんは影響を与えあってるんだよね」って話をすると、日笠さんが「あーっ! そうそう」と。あと「一見わからなくてもいいし、いろんな感じ方があってもいいんだけど、ちゃんとストーリー性が欲しい」って言っていたので「こういうストーリーにしたいんじゃないの?」って絵コンテを描いたら「その通り!」ってなって。だからあれこれ考えて作ってはいない。イメージを聞いた。わかった。絵コンテを描いた。それだけの話なんです(笑)。

コラボレーションアルバム「Glamorous Songs」 / 2013年7月17日発売 / PONY CANYON
初回限定盤[CD+DVD] / 2800円 / PCCG-01345
通常盤[CD] / 2300円 / PCCG-01346
CD収録曲
  1. Glamorous days
    (作詞:稲葉エミ / 作曲・編曲:Tom-H@ck)
  2. BALLOON
    (作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:渡辺和紀)
  3. Rhythm Linkage
    (作詞・作曲:永野椎菜 / 編曲:永野椎菜、熊本克也)
  4. Through the Looking-Glass
    (作詞:leonn / 作曲:小室哲哉 / 編曲:渡辺徹)
  5. Reclusive
    (作詞・作曲・編曲:Powerless)
  6. Neo Image
    (作詞:こだまさおり / 作曲:前澤寛之 編曲:yamazo)
  7. めざまし時計
    (作詞・作曲:YADAKO(Myu) 編曲:Masse(Myu))
初回限定盤DVD収録内容
  1. Glamorous days(Music Video)
  2. Glamorous days(Music Video)
    絵コンテ動画比較版
日笠陽子(ひかさようこ)

神奈川県出身の女性声優、ボーカリスト。テレビアニメ「けいおん!」の秋山澪役など、数多くの人気作で主役級のキャラクターの声を多数担当。また、メインボーカルを務めた「けいおん!」のエンディング曲「Don't say "lazy"」がゴールドディスクを獲得し、自ら考案したギャグ「てへぺろ(・ω<)」が流行語となるなど、アニメ業界外でも注目を集める。2013年5月「日笠陽子ソロプロジェクト」を立ち上げ、デビューシングル「美しき残酷な世界」をリリース。6月には2ndシングル「終わらない詩」を、7月には小室哲哉らが参加するコラボレーションアルバム「Glamorous Songs」を発表した。