hide 20th Memorial Project|石川智徹監督、SEXFRiEND(アイナ・ジ・エンド[BiSH]&UK[MOROHA])インタビュー 急逝後20年で紐解かれる“あの日の真相” / 未来へと受け継がれる“hideの音楽”

トリビュートアルバム「hide TRIBUTE IMPULSE」SEXFRiEND(アイナ・ジ・エンド[BiSH]&UK[MOROHA])インタビュー

6月6日に発売されたトリビュートアルバム「hide TRIBUTE IMPULSE」は、Dragon Ash、MIYAVI、FLOW、Cocco、西川貴教、HISASHI × YOW-ROW、ACID ANDROID、BREAKERZ、SEXFRiEND、GRANRODEOの10組が参加した作品。11曲目には映画「HURRY GO ROUND」の撮影がきっかけで発見されたhideの未発表ボーカル音源「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」が“20th Memorial Track”として追加収録されている。本特集ではスペシャルユニット・SEXFRiENDとして「Bacteria」をカバーしたアイナ・ジ・エンド(BiSH)とUK(MOROHA)にインタビューを実施。hideにまつわる思いや、アルバム参加の経緯、レコーディング時のエピソードを聞いた。

カバーに抵抗があった原曲至上主義者

──まずお二人がSEXFRiENDとしてトリビュートアルバムに参加した経緯を聞かせてください。

SEXFRiEND(アイナ・ジ・エンド[BiSH]&UK[MOROHA])

アイナ・ジ・エンド(BiSH) ユニット名はUKさんの発案なんですけど、「SEXFRiENDとして」ってかしこまって言われると恥ずかしいですね(笑)。

UK(MOROHA) (笑)。そもそもトリビュートアルバムのお話をいただく以前から思っていたことなんですが、僕は原曲至上主義と言うか、正直あまりトリビュートアルバムというものが好きではなかったんです。hideさんの楽曲に手を加えることに対して批判的な声もあるでしょうし、自分にとっても不健全なことでかなり抵抗がありました。

──ではなぜ参加することになったんでしょうか。

UK 僕はMOROHAというラップユニットでアコースティックギターを弾いているんですが、もともとhideさんに憧れてギターを始めたんです。今回トリビュートアルバムの参加アーティストとして何かを表現できる機会を与えられたという事実が、トリビュートアルバムに対するこれまでのネガティブな思いに勝ったんです。でも僕は歌を歌えないんで、どうせやるんだったら文句を言われるのも覚悟して、振り切ろうと思って。原曲がわかるようにはするけど、みんなが持っている原曲のイメージを壊したかったんですね。だから女性にボーカルをお願いしようと思って、真っ先に思い浮かんだのがアイナさんでした。もしアイナさんがダメだったらこの話自体、お断りしようと思っていたんです。そしたら快くオファーを受けてくれて。

──MOROHAとして参加する選択肢はなかったんですか?

UK 個人的にX JAPAN、hideファンだったという経緯で、僕にお話が来たんです。でもMOROHAでトリビュートアルバムに参加するとなると、メンバーのアフロ(MC)がhideさんの音楽を通って来なかった人間なので気持ち的に消化できない部分があって。

──UKさんはトリビュート参加発表時のコメントでアイナさんのことを“怪人”と表現していましたね。

UK hideさんのシングル(※1998年1月発表の「ROCKET DIVE」以降の作品)に「スペシャル怪人カード」という特典が付いていて、当時の僕はそれにものすごくワクワクしてたんですよ。そういうhideさんのユーモアも僕はすごく好きなので、アイナさんのことをあえて“怪人”と紹介させていただきました。

──アイナさんはUKさんからのオファーをどういう気持ちで引き受けたんですか?

アイナ 人並みの“好き”がどれくらいかはわからないですけど、私はhideさんのことをめちゃくちゃ好きかと言えば違うだろうし、通って来たかと言われるとそれも違うんです。UKさんのhideさんに対する思いを知ったときに、私は足元にも及ばないなと思いました。なのでトリビュートに関してはすべてをUKさんに委ねて、この人の表現したいことに対して、期待に120%応えられるようにしようと思いました。

実家に今もある引き出しの中の“宝箱”

──アイナさんはX JAPANやhideさんを通っていないとおっしゃってましたが、昨年hideさんの命日に「X JAPANのライブ映像を観ていた」とツイートしていましたよね。

アイナ・ジ・エンド(BiSH)

アイナ BiSHのライブ制作のスタッフさんにX JAPANがすごく好きで海外まで観に行っていた人がいて、よくhideさんやX JAPANにまつわる話を聞いていたんです。で、DVDをお借りして何度も観ていて、むっちゃカッコいいなと。あと、私のお父さんがX JAPANを好きだったみたいなんですけど、UKさんに比べたら全然だと思います(笑)。

UK 僕がhideさんを追いかけていた全盛期は“hideが生活の一部”と言うか、すごく気持ち悪いヤツだったはずです(笑)。hideさんを好きになった当時、僕は小学生だったんですけど、長野の実家の引き出しにhideさんのグッズで埋め尽くされた宝箱があって。あまりにもhideさんが好きすぎて、写真集に付いていた付録の袋もいまだに開けられてない(笑)。

──それくらい大切にしていたということですね。

UK 当時はそういう感じでしたね。今は僕の音楽を聴いてくださる方がたくさんいて、場所は違えど同じステージに立っていますけど、当時はただ純粋にhideさんに憧れていたんです。

──UKさんは影響を受けたギタリストとしてhideさん、そしてHAWAIIAN6の安野勇太さんの名前を挙げていますよね。

UK ギターを始めたきっかけをくださったのはhideさんで、今のアコギのプレイスタイル、つまりベースライン、メロディ、パーカッションを同時に演奏するっていう世界を教えてくれたのは勇太さんのギターだったんです。HAWAIIAN6はスリーピースバンドで、ギターリフには際立つメロディやコード感があって。いつの間にか勇太さんのギターに夢中になって練習してたので、それが今のMOROHAでのプレイスタイルにつながっています。アコギは20歳から弾き始めたんですけど、それまではエレキギターをずっと弾いてました。

──hideさんの楽曲はコピーしていたんですか?

UK X JAPANの楽曲メインでしたけど、hideさんのソロ曲もコピーしてました。中学、高校の頃はバンドも組んでいて。モッキンバード(hide愛用ギター)に憧れつつ、ちょっと高くて買えないからエピフォンのレスポールをとりあえず買って。でもhideさんも最初のエレキギターがレスポールだって知っていたから、「俺も同じ道をたどろう!」みたいな。コアな話ですけど。

アイナ ふふふ(笑)。愛が伝わってきます。

アイナを迎えた時点で確信「絶対にいいものができる」

──トリビュート参加発表のタイミングでUKさんは「hideに隠れた名曲なんかないぜ。ど真中をチョイス」というコメントと一緒に、アイナさんとカラオケにいる写真をTwitterにアップしていましたね。

UK ちゃんと歌えなくてもいいからまず歌ってもらいたかったので、一緒にカラオケに行きました。

アイナ 「MISERY」と「Bacteria」がカバー曲の候補に挙がっていたんですけど、UKさんからは「Bacteria」をカバーしたいと聞いていて。

UK(MOROHA)

UK もしも技術的に歌えないということになったら選曲が変わっていたかもしれないけど、本命は「Bacteria」でした。アイナさんに歌ってもらいたいと思った時点で、激しい曲をさらにめちゃくちゃにしちゃいたいなと。やるからには想像できないようなことをしたいなと思いましたし、アイナ・ジ・エンドというボーカリストを迎えた時点で「絶対にいいものができる」という確信があって、結果的に想像を超えるものになりました。

アイナ 私は「Bacteria」を歌っている自分が想像できなかったんですけど、だからこそこの曲がいいなって。想像できないほうが、どうなるかわからない面白さがあると思ったので。

──確かに「MISERY」はキャッチーな曲なのでイメージしやすそうな印象はあります。

アイナ そう。すごく素敵な曲で、聴けば聴くほど好きになる曲なんですよね。だけどいい曲すぎて、「私、この歌詞みたいな人生経験あるかな?」って歌う側の気持ちになれるかを考えちゃって。「Bacteria」は原曲を聴いた時点でそういう想像すらできなかったし、UKさんがアコギで曲をどう表現するのかもわからなかったし。

UK カラオケに行ったとき、僕が歌う「Bacteria」を最初に聴いてもらったよね。

アイナ UKさんが歌うhideさんの歌を動画で撮って聴き込みました。歌でもダンスでもほかのアーティストの要素を取り入れるときって、モノマネしている人を参考にするとおおまかな特徴をつかんでいるから取り入れやすいと思うんです。UKさんの歌からは本当にhideさんが好きなんだなっていうことが伝わって、ブレスのタイミングもビブラートっぽい部分もちょっとネチョッと歌う瞬間もシャウトっぽいところも原曲に忠実で。原曲もたくさん聴きましたけど、hideさん好きなUKさんが歌うhideさんの歌をもとに、私はhideさんの歌を歌いました。

──原曲のイメージを尊重する部分と大胆に壊す部分、どちらにもカバーの魅力があると思います。UKさんのギターリフのタイム感が原曲に忠実で、間奏のベースソロパートをアコギ1本で表現するアレンジもカッコよかったです。

UK ずっと聴いてきた曲だし、体に染み付いているものが演奏に出た感じですね。

hide 20th Memorial Project Film「HURRY GO ROUND」
2018年5月26日(土)公開
hide 20th Memorial Project Film「HURRY GO ROUND」

あの衝撃の日から20年。
hide初心者の俳優・矢本悠馬がナビゲーターとして、亡くなる直前3カ月間の軌跡に迫るドキュメンタリー。
最期の楽曲「HURRY GO ROUND」に秘められたメッセージとは……。

  • 監督:石川智徹
  • ナビゲーター:矢本悠馬
  • 出演者:YOSHIKI(X JAPAN) / I.N.A. / 山崎洋一郎(ROCKIN'ON JAPAN編集長) / エリック・ウェストフォール(ロサンゼルス・レコーディングエンジニア) / 松本裕士(株式会社ヘッドワックスオーガナイゼーション代表取締役)ほか
  • 主題歌:「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」 [UNIVERSAL J]
  • 配給:KADOKAWA
  • 企画・製作:UNIVERSAL CONNECT
V.A.「hide TRIBUTE IMPULSE」
2018年6月6日発売 / UNIVERSAL J
V.A.「hide TRIBUTE IMPULSE」

[CD] 3240円
UPCH-2162

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収録曲
  1. ROCKET DIVE / Dragon Ash
  2. ピンク スパイダー / MIYAVI
  3. D.O.D.(DRINK OR DIE) / FLOW
  4. GOOD BYE / Cocco
  5. ever free / 西川貴教
  6. DOUBT / HISASHI × YOW-ROW
  7. ELECTRIC CUCUMBER / ACID ANDROID
  8. EYES LOVE YOU / BREAKERZ
  9. Bacteria / SEXFRiEND(アイナ・ジ・エンド[BiSH]&UK[MOROHA])
  10. TELL ME / GRANRODEO
  11. HURRY GO ROUND(hide vocal Take2) / hide
BiSH(ビッシュ)
BiSH
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介(WACK)と松隈ケンタ(SCRAMBLES)がタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当している。2015年5月に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月に東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催し、以降のライブは各所でソールドアウトを記録する。2016年5月にはメジャー1stシングル「DEADMAN」をリリースしavexよりメジャーデビュー。6月から10月にかけて全国ツアー「BiSH Less than SEX TOUR」を開催し、ツアーファイナル「帝王切開」では東京・日比谷野外大音楽堂で単独公演を成功させた。同年10月にメジャー1stアルバム「KiLLER BiSH」、2017年6月にミニアルバム「GiANT KiLLERS」を発表。7月22日には千葉・イベントホールにてワンマンライブを行った。同年11月にフルアルバム「THE GUERRiLLA BiSH」、2018年3月にシングル「PAiNT it BLACK」を発表。5月22日に神奈川・横浜アリーナにて自身最大級のキャパシティとなるワンマンライブ「BiSH "TO THE END"」を成功に収め、6月27日には両A面シングル「Life is beautiful / HiDE the BLUE」のリリースを控えている。
MOROHA(モロハ)
MOROHA
ラッパーのアフロとアコースティックギターのUKにより2008年に結成。2010年に「SUMMER SONIC」出場権を賭けたコンテスト「出れんの!?サマソニ!?」にエントリーし、審査の過程で急遽追加された「曽我部恵一賞」を受賞したことをきっかけに急速に注目が集まる。同年10月にROSE RECORDSから1stアルバム「MOROHA」をリリース。さまざまなアーティストとの対バンで、2人組という小編成ながらインパクトのある熱いパフォーマンスを繰り広げ、2016年には東京・LIQUIDROOMでのワンマンライブをソールドアウトさせた。同年10月に自身のレーベル・YAVAY YAYVA RECORDSからアルバム「MOROHA III」を発表。2018年1月に映画「アイスと雨音」の主題歌「遠郷タワー」を配信リリースし、3月にはメルカリ限定シングル「ストロンガー」を発売した。結成10周年を迎え、6月に再録ベストアルバム「MOROHA BEST~十年再録~」をリリース。7月よりベスト盤を携えた単独ツアーを開催し、全国16都市を回る。