音楽ナタリー PowerPush - 映画「日々ロック」

スクリーンからはみ出すロック愛 二階堂ふみ×入江悠監督対談

黄色い声援を受けるのが気持ちよかった

──二階堂さんが歌って踊るライブシーンもありました。

二階堂 ちょっとのシーンですが、あれ1日かけて撮ったんですよ。10回くらい踊りましたよね、フルコーラスで。お客さんをノせなきゃいけないですし。でもすごい楽しかったです。

入江 あのときの表情はすごくいいですよね。こういう表情してくれとか何もオーダーしてないんですけど、なんなんですかね。

二階堂 黄色い声援を受けるのがあんなにも気持ちいいものだと思わなかったですね。だからアイドルの人とかアーティストの人とかが、要は大きいホールで観客から声援を受けるとこういう気持ちになるんだなってわかる、高揚感みたいなものはありましたね。

入江 あとお客さんだけを撮るときも、(二階堂が)ちゃんと踊ってくれるんでお客さんの反応もすごいよかったんですよね。「みんなが一体感持ってこのシーンを作るんだ」ってそういう空気を作れる19歳ってあんまりいないと思うんですよね。リハーサルもせずいきなりやってたもんね。リハーサルやってるところ観るとお客さんちょっと冷めるじゃないですか。いきなり出てきたほうがお客さん「わー!」ってなるんですけど、その通りにやってましたからね。俺だったら綿密にリハーサルするもん(笑)。

二階堂 いっぱい撮るから間違えてもよかったっていうのもあって。だからあんまり気負いもせず。すごい本当に楽しかったです。

二階堂ふみ

──ザ・ロックンロールブラザーズの草壁まもるを演じた前野朋哉さんが、あのシーンで盛り上がりすぎて酸欠になったっておっしゃってました。

二階堂 どんだけ興奮してたのかわかんなかったんですけど、完成したの観たらひどかったですね(笑)。

入江 ははははは!(笑) 役を忘れて本当にノリノリになってましたからね。あとそのシーンに出演しなかった落合モトキくんとかThe SALOVERSの(藤川)雄太くんとかも来てね、普通に客として楽しんで帰ってましたね。本当にいい俳優ばっかりで、楽しかったですね。

二階堂 みんな素敵な人たちでしたね。

──二階堂さん、今作で難しかったことなどはなかったですか?

二階堂 「雨あがりの夜空に」を歌うのはちょっときつかったですね。男の人の曲だし。あんまり練習時間がなかったので。

入江 芝居で難しいとかないでしょ? 特に「日々ロック」は王道の青春モノなんで、余裕だろうなと。

二階堂 そうですね。入江さんの現場は本当に楽しかったです。行くのが楽しみ。でもね、今回は撮影前に入念に詰めてたんですよね。わたし今回、アイドル以外の衣装、全部自分でスタイリングしたんです。だからそれを作ってる時点で、だいたい宇田川咲が完成した感じはしたんです。

入江 そこで咲はどういう子なのかっていうのを探っていった感じですよね。あとはもう芝居の話しなくても全然いけましたね。

スタッフも音楽好き

──今回「ロック」が映画のテーマになっていますが、入江監督はロックをどういうふうに捉えて、どう作品に出していったんでしょうか?

左から二階堂ふみ、入江悠。

入江 人ですね。スタッフにしてもキャストにしても。そういう人が集まったらいいんじゃないかと思って。

──そういう人というと?

入江 面白い人というか。

──音楽に関わってる人という意味ではなく、「ロックな人」?

入江 音楽に関わってる人でもつまんない人はいますからね。

二階堂 生き様ですよね。

入江 今作のカメラマンとか美術さんとか、すっごい音楽好きでね。撮影の準備中なのに、ポール・マッカートニーのライブとか行っちゃうんですよ(笑)。

二階堂 すごいロックでしたよね。

入江 ロックとは?っていう定義って人それぞれあるからわかんないんですけど。自分にとってのロックとは?を考えたんですけど、わかんないんですよ。ただ、二階堂ふみもそうですし、スタッフもそうですけど、知ってる人の中で面白い人に参加してもらうっていうのが、この映画に一番いいんだろうなって思ってやりました。

最近なんの音楽聴いてるの?

入江 全然関係ないけど、最近なんの音楽聴いてるの?

二階堂 最近ヒップホップばっかり聴いてる。

入江 へえーそうなんだ! 二階堂ふみは、何を聴いてるのか全然読めない1人なんですよね。今、ヒップホップなんだ。

二階堂 トラヴィス・バーカーばっか聴いてます。めっちゃカッコいいんですよ! クラシックももともと好きですけどね。入江さんは何聴いてるんですか?

入江 俺は映画「ジャージー・ボーイズ」のサントラ聴いてますね。

左から入江悠、二階堂ふみ。

二階堂 映画観ました? わたしも映画観る前にサントラ買っちゃおうかなって思ってるんですよ。

入江 いやー、素晴らしかった。

──最後にナタリー読者にメッセージをお願いします。

二階堂 音楽好きなら、なおさら劇場で観てほしい。爆音で、いいスピーカーで観て聴いて。目で見る音楽もあると思うので、ぜひ体感していただきたいですね。

入江 目で見る音楽ってまさにそうかもしれないですね。マンガが「ドーン」て飛び出してくる感じだったんで、3Dじゃないけど、ああいう感じを表現できないかなって思って作ったんで、それを劇場で味わってもらいたいですね。

映画「日々ロック」11月22日(土)より全国ロードショー
映画「日々ロック」

「彼女と出会ってから僕の世界は変わった!!」

金なし風呂なし彼女なし。ヘタレロッカー・日々沼拓郎が友人とともに結成したバンド“ザ・ロックンロールブラザーズ”。ある晩、ライブをしていた拓郎達の前に1人の女が台風のごとく現れた! 女の名前は、宇田川咲(二階堂ふみ)。斬新なスタイルでカリスマ的な人気を誇るデジタル系トップアイドルだ。売れないがロックを愛する心は誰にも負けない“自由”な拓郎と、トップアイドルとして活躍しながらも本当は自分のやりたい音楽が出来ずに苦しんでいる咲。二人はお互いに自分にないものを持っていた。そしてある日、咲は拓郎にこう頼む。「お願い、曲書いて。私にはもう時間がないの。」

果たして史上最強のロックバカと超凶暴なトップアイドルの運命は……!?

監督:入江悠

原作:榎屋克優「日々ロック」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載中。コミックス1~5巻、「日々ロック BOOTLEG」発売中)

脚本:入江悠 / 吹原幸太(劇団ポップンマッシュルームチキン野郎・主宰)

音楽プロデューサー:いしわたり淳治

キャスト:野村周平 / 二階堂ふみ / 前野朋哉 / 落合モトキ / 岡本啓佑 / 古館佑太朗 / 喜多陽子 / 毬谷友子 / 蛭子能収 / 竹中直人 / and more

劇中曲提供:黒猫チェルシー / The SALOVERS / 滝善充(9mm Parabellum Bullet) / DECO*27 / 爆弾ジョニー / 細身のシャイボーイ / ミサルカ / 忘れらんねえよ

制作・配給:松竹

映画「日々ロック」主題歌 爆弾ジョニー ニューシングル「終わりなき午後の冒険者」 / 2014年10月22日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / KSCL-2486~7
通常盤 [CD] 1258円 / KSCL-2488
入江悠(イリエユウ)

1979年生まれ、埼玉県出身の映画監督。ヒップホップグループの青春をリアルに描いた「SRサイタマノラッパー」シリーズや、神聖かまってちゃんの楽曲をモチーフにした「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」など音楽映画を多数手がけ、映画ファンだけでなく音楽ファンからも支持を集める。最新作「日々ロック」が2014年11月に全国公開される。

二階堂ふみ(ニカイドウフミ)

1994年9月21日生まれ、沖縄県出身の女優。2009年に「ガマの油」で映画デビューを果たして以来、「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」「悪の教典」など話題作に次々と出演。2011年には「ヒミズ」で第68回ベネチア国際映画祭の「マルチェロマストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)」を受賞した。映画やドラマのほか、ASIAN KUNG-FU GENERATION「新世紀のラブソング」や忘れらんねえよ「忘れらんねえよ」などのビデオクリップにも登場している。


2014年11月10日更新