祝・halcaデビュー5周年!5つのキーワードで紐解く軌跡と未来 (2/3)

キーワード3:ライブ

──先日、全国ツアー「halca first tour 2023 “nolca solca culca”」の東京公演を拝見しましたが、観ているだけで自然と笑顔になれる素敵なステージでした(参照:halca初のワンマンツアー終幕、the peggies北澤ゆうほとデュエット)。今でこそ堂々としたパフォーマンスを見せていますが、デビュー当初はステージに立って歌うことにどのように向き合っていましたか?

ライブってどこかジェットコースターと似ているなと感じていて。例えば、ジェットコースターって並んでいるときは「怖い! 嫌だ!」と言ってても、乗り終えると興奮気味に「また乗りたい!」と思うんです。こないだのツアーも始まる1、2週間くらい前に逃げ出したくなったんですよ(笑)。

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──(笑)。

ちっちゃい頃は「人前に出させろ!」ってくらいに怖いもの知らずで、学芸会でも「みんな、私を見て!」みたいな目立ちたがり屋だったんですけど、いざ人前に出ることを仕事にしてみたら自分に足りないものがたくさん見つかって。先輩や同時期にデビューした方、後輩とかいろんな人を目にするから、自分を比べることで身の程を思い知って、どんどんステージに立つことが怖くなってしまうんです。それでもレコーディングは変わらず好きで、ガラス張りのレコーディングブースに自分しかいないという安心感も大きくて。もしかしたら、ライブも同じような環境だったら安心感があるのかもしれないですけど、そうはいかないですからね(笑)。でも、先日のツアーで初めてバンド編成でライブをやらせてもらったことが自分の中で大きくて、ちょっと克服できた気がしています。本当はもっと早くにバンド編成でのライブができるはずだったんですけど、コロナの影響もあってなかなか実現できなくて。昨年マンスリーライブをやったことで自分に対して自信を持てるようになり、それを経てのツアーだったので、結果的にはこの流れでよかったのかなと今は思います。

──僕もこのタイミングで正解だったのかなと思いました。というのも、ここ最近のhalcaさんのステージを観ると、観客を巻き込んでいくパワーがどんどん増しているように感じられて、そこにバンドが加わることでいい形の相乗効果が生まれているんじゃないかなと。

うれしい。バンドの皆さんはこれまでいろんなライブを経験されていますし、お客さんを巻き込む力もより強くなるだろうなと思っていたので、自分もそこに付いていこうと考えていました。もちろんうまくできたところもあれば、同じくらい反省点もたくさんあったので、そういうことも含めてすべてを素直に受け止められたのは、昨年まで1人でライブをやり切ったからなのかなと思いますね。

──あと、個人的にはライブ中に見せるhalcaさんの表情が素敵だなと思いました。楽しい曲ではこれでもかと笑顔を浮かべ、切ない曲では歌詞の主人公の心情が伝わる表情を見せる。観ている側もその感情がダイレクトに感じ取ることができて、気付くと惹き付けられているんです。

ありがとうございます! 鏡の前で表情の練習をしたことはないんですけど……あ、でも「このぐらい笑ったら、口を閉じても歯が出ちゃうんだ」とか、そういうことはチェックしたことがあります(笑)。きっとそれも、アニメの影響が大きいのかな。アニメのキャラクターって、表情の変化がめっちゃわかりやすいじゃないですか。自分も無意識のうちに影響されていたのかなと、今お話ししていて思いました。子供の頃からずっとアニメに触れてきたから、楽しいときは思いっきり笑って、悲しいときは思い切り悲しむという、喜怒哀楽の振り切れ方が自然と身に付いたのかもしれませんね。

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キーワード4:センチメンタルクライシス

──halcaさんにとって大きなターニングポイントは、テレビアニメ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」のエンディングテーマ「センチメンタルクライシス」との出会いだったのかなと思います。

これまで歌ってきたどの曲も大切なものには変わりないんですけど、ターニングポイント的なところで言うと「センチメンタルクライシス」は欠かせないかな。この曲を通してhalcaのことをたくさんの方に知ってもらえたと思いますし、仮にhalcaという名前は知らなくても自分の声は確実に多くの人に届いたと思っています。だから、ファンの人が増えたというよりは曲を聴いてくれた人が増えたという感覚が強くて。ライブや大きなイベントでこの曲を歌うと、盛り上がり方がポンと頭ひとつ飛び抜けているんです。どの曲も同じくらい熱を込めて制作していますし、「この曲だけが届け」なんて思いながらは歌っていないので、なぜ「センチメンタルクライシス」がここまで親しんでもらえているのか正直不思議な気分ではあるんですけど、この曲を歌えたことによってタイアップ作品に対する感謝の気持ちがより強くなりましたし、楽曲を歌う際にその作品に恩返ししたいと改めて意識するようにもなりました。

──この曲が広く支持されたことで、周りから“第2の「センチメンタルクライシス」”を求められることもあったと思います。でも、この曲以降のhalcaさんはそこに頼らず、いろんなテイストの楽曲に挑戦し続けている。その精神も素敵だなと思うんです。

「センチメンタルクライシス」がミリオンヒットしていたら、また違った未来だったかもしれませんけど(笑)。そういう点においては、自分たちが届けたかったところにまですべてに曲が行き届いたとは思っていないので、この曲以降も試行錯誤しながら制作に臨んでいます。ディレクターさんも、作詞家さん、作曲家さん、アレンジャーさんもみんな私のためを思って曲を作って、今の自分がギリギリ乗り越えられるハードルを毎回用意してくださるおかげで、ちょっとずつステップアップできているのかな。そうやって成長を見守ってもらえていることは、レコーディングのたびに感じます。

──ミリオンヒットが連発していた時代と比べて、今は音楽の聴き方も大きく変化しています。そこを踏まえると、アニメファンにとって「センチメンタルクライシス」はミリオンに近い浸透の仕方をしたんじゃないでしょうか。

そうだったらうれしいなあ。確かにエンディング映像も素敵でしたし、そこにあのイントロの歌い出しが重なった瞬間にグワーッと込み上げてくるものがありますし。皆さん、あの絵込みで曲が印象に残っているんでしょうね。でも、自分の曲とか自分のことってそこまで客観視するのが難しくて。たまに友達が「私の友達がこの曲を知っていて、よく車で聴いてるよ」と報告してくれて、そこでようやく「もしかしたら私の曲って、いろんな人に聴かれているのかな?」と思えるくらい。それこそ「センチメンタルクライシス」をリリースしたあとは「『センチメンタルクライシス』の人だ!」って言われることもありましたし、そういう曲が増えれば増えるほど、ライブに足を運んでみようと思ってもらえるようになるのかなと感じているので、ターニングポイントになるような曲とどんどん出会っていきたいです。

キーワード5:夢

──デビューした当時、どんな夢を持っていましたか?

漠然と「売れたい!」みたいな。それこそ、誰もが私の曲を知っていて、ふと口ずさんだり、カラオケランキングで上位に入っていたり。電車で隣の人がhalcaの話題をしていて、それを私は帽子を深くかぶって聞いているみたいな、そういう世界に憧れていました。でも、マスクをしなくてもいい時期でも、マスクなしで歩いていたら誰にも気付いてもらえなくて(笑)。あとは、歴史に残るぐらいのセールスを叩き出してみたいとか……halcaが今までコツコツやってきたことは間違いじゃなかったと、多くの人に認めてもらいたいという夢がありました。

──そこから5年経った今、新たに夢が増えたり、以前の夢に変化が生じたりということは?

音楽以外のお仕事も気になり始めています。例えば、ディレクターさんにビジュアルのことをいろいろアドバイスしてもらったことで、ファッションもだいぶ変わりました。ライブのグッズを自分で考えるようになってからは、Tシャツのデザインや色を決めるのもすごく楽しいんです。あとは、近くにいる先輩方を見て演技のお仕事にも憧れるようになりましたし、ラジオのお仕事ももっとやりたいと思い始めています。もちろん音楽を軸にすることはこの先も変わりませんけど、自分のことを見つけてもらえるきっかけをたくさん増やしたいなと思うようになりました。そういうアプローチの幅が広がったら、もっと届くんじゃないかなって。そこから、最終的に音楽へつなげていきたいんです。

──初期と比べると、夢の質が現実味を増していますね。

確かに。最初は漠然としていたけど、活動を重ねることで見えてきたこともたくさんありますしね。実は私、デビュー前にスタッフさんから「どんなことをやってみたい?」と聞かれて、何も答えられなかったんです。「何かやりたいって、何?」みたいな。でも、自分の中でやってみたいと思うことが増えるのは楽しいですし、こうやって口に出すことによって前向きになれるし、フレッシュな気持ちを維持できる気がします。

──口に出すことで、自分の考えを整理できますものね。

はい。ライブも大きな会場でやりたいですし、選択肢を増やせるようになりたいです。例えば、ホールやアリーナでやったとしても、時にはライブハウスでもやるみたいな。先日は念願叶ってバンド編成でやりましたけど、時にはダンサーさんを交えたり、時には1人だけでステージに立ったりするのもいいなって。もちろん、そこにちゃんと意味や理由を持たせて、活動の選択肢を増やしていけたらベストですよね。

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──すごく素敵な考え方だと思います。5月30日のデビュー記念日、halcaさんはどんな心境で当日を迎えていると思いますか?

うれしさはもちろんありますけど、ちょっと怖さもあって。というのも、自分の気持ち的にはまだ3年目ぐらいの感覚だから。デビューから最初の2年は全力で駆け抜けられたけど、この3年はコロナの影響もあり、思うように動けなかったところもあって。私がデビューした頃に5年目を迎えた先輩たちと比べると、自分はまだ憧れの先輩たちみたいにはなれていないと思うんです。だから、まずはあのときの先輩に追いつけるようになりたい。まだまだ、ひたすらがんばるのみです。そういう意味では自分に満足していませんし、満足できていないからこそ、これからも努力し続けられそうだなと思うので、5周年を迎えた先も楽しみです。