ナタリー PowerPush - HaKU

世界進出を目指すまっさらな才能

海外にどんどん行きたい

──ライブで踊ってほしいというのと同じで、音源でも明確なビジョンを与えたいっていう。それも「対人」という発想ですよね。

辻村 はい。聴いてくれる人のことは、すごく意識してるので。そういうふうに初めて思ったのは、ツアーで東京に来たときだったんです。地元が大阪なので、東京はすごく遠いところというか、新幹線で夢の世界に行くような感覚だったんですよね。そんな場所に僕らの音楽を聴いてくれてる人がいるっていう……。6畳の部屋で作り始めた曲が何百キロも離れた人にまで届いて、その人たちがお金を払って会場に来てくれている。そういう場面に直面したとき「こんなにすごいことはない!」って思って。

──ものすごく他者を求めていたのかもしれないですね、辻村さん自身が。その感覚って今も同じですか?

9月15日の新宿LOFT公演の様子。(撮影:O-mi)

辻村 もちろん! だって、この前マレーシアでライブやったんですよ。やばいですよ!

藤木 東京よりも遠いからな(笑)。でも、すごく良かったんですよ。僕らのことを知らない人ばかりだと思うんですけど、受け入れてくれる態勢ができていて。

長谷川 むっちゃ楽しかったですね。言葉はわからないんですけど、熱気はすごく伝わってきて。

三好 うん。ありがたいです。

辻村 すげえ踊ってくれたし、口ずさんでくれてる人もいて。音だけでも、ちゃんと伝わるんだなって。

──自信にもつながりますよね。

辻村 そうですね。僕、洋楽を聴いて育ったんですよね。そういうこともあって、いずれはワールドワイドなバンドになりたいと思ってるし、マレーシアのライブのときも「海外の人はどんな反応をするのか?」ということを見たい気持ちもあって。海外にはどんどん行きたいですね、これからも。

長谷川 夢は大きく、やな。

辻村 以前「叶わないくらいの大きい夢を持っていたほうがいい」って言われたことがあるんですよね。もし叶わなかったとしても、進んでいく過程の中で、でっかいものを手にしてるかもしれないって。まさにそういう感じですよね、今は。

──おお、めっちゃポジティブじゃないですか。

長谷川 ハハハハハ(笑)。さっきの話と違うし。

藤木 (笑)ポジティブになったんよな?

辻村 そうです!

無意識で思い付いたバンド名

──もうひとつHaKUというバンド名の由来についても教えてもらえますか?

9月15日の新宿LOFT公演の様子。(撮影:O-mi)

辻村 えーと、とっさに出てきたんですよね。あれはなんのときやったっけ……。

三好 ライブのエントリーシートを書いてて……。

藤木 うん。僕がライブのエントリーシートに記入してたんですけど、そのときバンド名がなかったから「どうする?」って聞いたら、「H、a、K、U。aだけ小文字!」ってすぐ言われて。

辻村 あ、そうだ。そのときにパッと思いついたんですよ、全くの無意識で。でも、すごくピッタリのバンド名だったんですよね。aだけが小文字っていうのも、メンバーのうち、1人だけ女の子っていう感じがしませんか?

──そうかも(笑)。あと「拍」とか「吐く」とか、いろんな言葉を連想させられますよね。

辻村 そうなんですよ。僕の歌い方もウイスパーっぽいところもありますからね。息を吐くっていう……。

──うん、歌い方もすごく独特ですよね。音源を聴くと、最初は女の子が歌ってるのかと思われるんじゃないですか?

辻村 10人中10人がそう思うみたいです(笑)。メンバーに女の子がいるから、ベースの子が歌ってるんでしょ?って。こういう歌い方も、独特のものを求めた結果なんですよね。今は自分たちの特徴になってるし、HaKUにも必要な要素だと思っていて。もっといろんな歌い方ができるようになりたいと思ってますけどね。すごく低い声も使えるようになりたいし、いろんなスタイル、いろんな表情が表現できるようになれば、楽器のひとつとして機能できるんじゃないかなって。

HaKUは人間的なエネルギーが根源

──お話を伺っていると、今後さらに音楽の幅が広がっていきそうですね。

辻村 はい。音楽自体も変わっていくと思います。今は「オルタナティブなダンスロック」って言ってるんですが、自分たちが持っているものを出していくことで、スタイルも自然と変わっていくだろうし。もしかしたらサーフミュージックをやりたいと思うかもしれないし、ジャズをやりたくなるかもしれない。とにかくやりたいと思ってることをすぐにやれるようになりたいんですよね。そのためには1人ひとりのスキルをもっと高めていかないと。

──変化することに対する怖さはない?

辻村 全然ないですね、それは。もちろん「対人」ということはずっと同じだし、HaKUの根本的なところも変わらないと思うので。

──根本的な部分というと?

9月15日の新宿LOFT公演の様子。(撮影:O-mi)

辻村 人間的なエネルギー、パワーの問題だと思うんですよね。俺が歌って、真也がドラムを叩いて、春奈がベースを弾いて、寛茂がギターを弾いて。つまり、この4人が演奏すれば、HaKUなんですよ。僕自身、この答えにたどり着くまでにかなり時間がかかったんですけどね。いろいろ試行錯誤をして、悩んで。その中で培ってきた音は絶対に崩れないと思うんです。しかも次にやりたいことも見えてきて……。ワクワクしてますね、ホントに。

HaKU - アステリズム 【MV】 (full ver.)

1stフルアルバム「Simulated reality」 / 2012年10月10日発売 / 2500円 EMI Music Japan TOCT-29069
1stフルアルバム「Simulated reality」
収録曲
  1. 1秒間で君を連れ去りたい
  2. Mr.Scary
  3. novel
  4. アステリズム
  5. unknown justice
  6. carpe diem
  7. navigation
  8. twilight museum
  9. selfish
  10. astray

EMI Music Japan Shop

HaKU(はく)

HaKU

2007年に大阪で結成された辻村有記(Vo, G)、藤木寛茂(G)、三好春奈(Ba)、長谷川真也(Dr)からなるロックバンド。関西地区を中心にライブ活動を行い、辻村の独特のハイトーンボイスや、エレクトロサウンドを生音で構築するこだわりが注目を集める。2009年1月に初音源「WHITE LIGHT」を、同年11月にミニアルバム「BREATH IN THE BEAT」をリリースする。その後は着実にリリースを重ねるとともに、ライブも全国展開。2011年2月には東京と大阪で初のワンマンライブを開催する。2012年9月にマレーシアで初の海外ライブを行い、10月にアルバム「Simulated reality」でメジャーデビューを果たした。