ナタリー PowerPush - HaKU
世界進出を目指すまっさらな才能
作り終えたときに「次に進めるな」
──メジャーデビューアルバム「Simulated reality」は、これまでのトライ&エラーを経て、HaKUのオリジナリティが完全に確立されたアルバムと言えそうですね。
藤木 そうですね。インディーズ時代からやってきたことが全て詰まっているし、「これがHaKUです」って言えるアルバムになったと思います。
三好 今までの集大成でもあるし、この先もいろんなことができるっていう幅が見えた作品でもあって。
辻村 1stフルアルバムって、人生で1枚だけじゃないですか。フルアルバムをメジャーから出せるということもありがたいし、何よりも作り終えたときに「次に進めるな」と心から思えたっていうのが大きいですね。
──リズムのアレンジも、これまで以上に多彩ですよね。
長谷川 そこはかなり気を使いました。ベーシックは4つ打ちが多いんですけど、リズムが似通わないようにしたかったので。ありきたりな4つ打ちにならないようにしつつ、なおかつ、カッコいいと思えるリズムを模索したというか。そのチョイスは難しいんですけどね。
ネガティブな性格だから作れたアルバム
──「シミュレートされた現実性」という意味を持つアルバムタイトルも印象的でした。
辻村 根本には自分たちを見つめ直したい、という気持ちがあったんですよね。それを音で表現した結果、この10曲が出来上がったというか……。暗黙の了解じゃないですけど、「一般的に正しいとされていること」が世の中にはいっぱいあると思うんですよ。本当に正しいかどうかを考えることも少ないし、自分たちが見落としている部分もたくさんあるんじゃないかって。その考えをタイトルに込めた感じです。このアルバムがそういうことに気付くためのきっかけになってくれたらうれしいですね。ホント、アルバムの制作中はそんなことばっかり考えてたんですよ。
──それはどうしてだと思います?
辻村 うーん……。このアルバムを作り始めたのは去年の夏なんですけど、決してハッピーな世の中ではなかったんですよね。僕自身、どうしてもネガティブな方向に行ってしまいがちな人間だし。すぐに気持ちが落ちるんですよ、フォークボールみたいに。
藤木 すぐわかりますからね。あ、落ちたって(笑)。
長谷川 ぜんぜん受け止められないです。
辻村 (笑)。でも、そういう性格だからこそ、このアルバムができたと思うんですよね。落ち込んだとしても、それを音楽に昇華していきたいという気持ちがあるというか……。聴いてくれる人に訴えかけるような音楽が作れたことで、僕自身も乗り越えられたし。
音を立体的に想像してほしい
──サウンドプロダクションに関しても「これで本当に正しいのか?」と根本から考えたりしますか?
辻村 うん、それはめちゃくちゃ考えます。まず、言葉とメロディがサウンドとリンクしていないとイヤなんですよね。メンバーにかなり難しい要求をすることもあるので、そこは申し訳ないと思うんですけど。
藤木 「クリスマスっぽく」とか「星が降ってるように」とか。割と抽象的な言葉で伝えてくることもあって。
三好 楽器を弾きながら考えるよりも、「どういうフレーズを弾いたら、思い描いている場面になるだろう?」ってイメージすることのほうが多いかもしれないですね。
──アレンジを組み立てている過程で、意見がぶつかることはないんですか?
辻村 ぶつかるとしたら、僕と真也ですね。
長谷川 うん。
辻村 「こういうリズムが欲しいのに、なんで叩いてくれないんだ!」みたいなことを言っちゃうことがあるので。歌ってるときは太鼓を聴いてることが多いし、「ここでキックが来るはず」と思ってるところでスネアが鳴ったりすると、テンション下がるんですよ。
長谷川 そんなん知らんがな。最初から言っといてくれ(笑)。
──この曲はこうあるべき、というイメージがはっきりしてるんでしょうね。
辻村 そうですね。できればリスナーが音源を聴いたときも、具体的に想像してほしいんですよ。それを手助けするための工夫は必要かな、と。
- 1stフルアルバム「Simulated reality」 / 2012年10月10日発売 / 2500円 EMI Music Japan TOCT-29069
- 1stフルアルバム「Simulated reality」
収録曲
- 1秒間で君を連れ去りたい
- Mr.Scary
- novel
- アステリズム
- unknown justice
- carpe diem
- navigation
- twilight museum
- selfish
- astray
HaKU(はく)
2007年に大阪で結成された辻村有記(Vo, G)、藤木寛茂(G)、三好春奈(Ba)、長谷川真也(Dr)からなるロックバンド。関西地区を中心にライブ活動を行い、辻村の独特のハイトーンボイスや、エレクトロサウンドを生音で構築するこだわりが注目を集める。2009年1月に初音源「WHITE LIGHT」を、同年11月にミニアルバム「BREATH IN THE BEAT」をリリースする。その後は着実にリリースを重ねるとともに、ライブも全国展開。2011年2月には東京と大阪で初のワンマンライブを開催する。2012年9月にマレーシアで初の海外ライブを行い、10月にアルバム「Simulated reality」でメジャーデビューを果たした。