go!go!vanillasレーベル移籍第1弾シングル「SHAKE」特集|新たな一歩を踏み出した経緯とは

go!go!vanillasのニューシングル「SHAKE」が1月10日に配信リリースされた。

昨年12月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsに移籍することを発表したgo!go!vanillas。インディーズ1stアルバムと同タイトルの「SHAKE」は彼らの移籍第1弾シングルで、go!go!vanillasにとって憧れの地であるイギリス・ロンドンの名門スタジオMetropolis Studiosでレコーディングされた、彼らの新たなモードが感じられる1曲になっている。

本作のリリースに際し、音楽ナタリーではメンバーにインタビュー。レーベル移籍の経緯や「SHAKE」の制作エピソードを聞いた。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / Marc Abe

バニラズへの愛でお客さんとつながれている

──最近のgo!go!vanillasといえば各地を飛び回っている印象がありますが、いかがお過ごしでしょうか。

牧達弥(Vo, G) 楽しい毎日を送ってます!

──時系列で振り返ると、まず全国ツアー「DREAMS TOUR 2023-2024」が始まる前にロンドンに行っていたそうですね。

 行ってました。10月の頭から、2週間くらい。

ジェットセイヤ(Dr) ロンドンにいるとき、みんな体調がよかったよね。

 うん。

セイヤ ぶっちゃけ、日本にいるときよりよかった(笑)。実は帰ってきてから、ちょっと体調を崩しちゃったんですよ。日本のほうが空気が重い気がして。

柳沢進太郎(G) ロンドンは乾燥してますからね。

セイヤ だから、またロンドンに帰りたいなって(笑)。

──それほど居心地がよかったんですね。第二の故郷というか。

柳沢 「ここが私のアナザースカイ」的な(笑)。

長谷川プリティ敬佑(B) あははは!

go!go!vanillas。左から牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬佑(B)、ジェットセイヤ(Dr)。

go!go!vanillas。左から牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬佑(B)、ジェットセイヤ(Dr)。

──ロンドンでのレコーディングの話は、のちほど改めて聞かせてください。帰国後の11月から全国ツアーが始まりました。2024年3月に幕張メッセ国際展示場で行われる2DAYS公演「MAKE MY DREAM」「MAKE YOUR DREAM」まで続くツアーですが、どんなことを感じながら回っていますか?

 デビュー10周年を祝福するツアーを、パンデミックが落ち着いた状態でできてよかったです。どの地方に行ってもお客さんが待ってくれているから「うれしいな」という気持ちを噛み締めながら全国を回っているし、日常が戻ってきたタイミングだからこそ、僕らもお客さんも、今まで溜めていたエネルギーをライブで全部出せているように思います。

プリティ 例えば飲み会とかで「え、あのマンガ好きなの? 俺も好きだよ!」って話が盛り上がって距離が縮まることがあるじゃないですか。好きなものが一緒だと結び付きが強くなると思うんですけど、「やっぱり俺たちはバニラズの曲が好きだよな」という気持ちでお客さんとつながれている感覚があるのがうれしいです。昔と比べて、お客さんに対する信頼が厚くなってきていることを演奏しながら感じています。

柳沢 「コンビニエンスラブ」(2023年10月にリリースされたアルバム「DREAMS」収録曲)もやっているんですけど、みんなかなり歌ってくれているし、楽しそうにしてくれているなと思います。

 あと、オリジナルアルバムのツアーじゃないのが大きいかもしれない。いつもは「このアルバムの世界観を伝えるためには」と自分の中でいろいろ考えながらやっているんですけど、今回は手放しで楽しむことができているんですよ。

柳沢 守り続けなければいけない世界観が特にないから自由にライブができているし、好きなようにやっても、ちゃんとバニラズの枠に収まるんだなと実感していて。オリジナルアルバムのツアーであれば、全国を回りながら曲を成長させていく感じになるけど、今回は10周年のツアーということで、初日から楽曲が体にかなり入った状態で、「じゃあそこから何をするか」という視点でライブできてます。「ここは、こういうふうにプレイしたら面白いんじゃないか」「こういう音にしてみたらどうだろう」という感じで、いろいろと実験していて。

セイヤ  俺は今回のツアーから、サウンドとビート感を変えました。もちろんレコーディングでは1曲1曲音作りをするけど、ライブでの音作りに関しては、ちょっと小慣れてきたというか当たり前になっていた部分もあったんですよ。だけど、ツアー前にロンドンに行って、新しいサウンドアプローチを目の当たりにしたのをきっかけに、当たり前になっていた部分をもう一度見つめ直そうと思って。「DREAMS」の曲にはフィドルやトランペットの音が入っているし、ライブではあっちゃん(井上惇志)に生でピアノを弾いてもらっています。そういうバニラズの最近の音像に対して、どうアプローチするかという話なんですけど、わかりやすいところで言うと、土台となる音を意識してスネアのピッチを低くしたり、ビートをちょっと後ろノリにしたり、曲によってはテンポを落としたりしていますね。俺だけじゃなくて、プリティのベースもけっこう変わったし、進太郎も日々めっちゃ研究しているし。

柳沢 毎回発見があるからすごく楽しいし、充実しているなと思います。次のフェーズに向けての修行期間じゃないですけど、いろいろと吸収しながらツアーを回れてますね。

go!go!vanillas
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優しい音楽業界にしたい

──一方、12月中旬から下旬にかけては、台湾でのライブイベント「RUSH BALL in 台湾 on the ROAD」や国内のフェスに出演していました。

 台湾でのライブは5年ぶりだったんですけど、いやー、最高でしたよ。僕らはずっと日本で暮らしているので、やっぱり日本が落ち着くんですけど、一方でほかの国にいるときのほうが気楽な感覚もあって。僕のことを知らない人が多いから、1人の人間として純粋に見てもらえている気がするし、フレッシュな気持ちでいられるんですよね。

──2022年9月に東京と大阪で行われたアリーナライブ「My Favorite Things」では、ステージを部屋のように装飾していましたよね。当時のインタビューでは、「コロナ禍で家で過ごすのが好きになって、ライブにも安心感を持ち込みたくなった」とおっしゃっていました。だけど今は、外の世界に出ていって、フレッシュな空気に触れるのもいいなと感じていると。

 そうですね。僕はその時々の自分の感覚に正直に生きているのですが、今は僕自身だけではなく、音楽業界も世の中も、そういう外に向けたモードなんだろうなと思ってます。閉鎖的だった日本の音楽シーンも、かなり変わってきているなと思うんですよ。SNSやサブスクのおかげで、国の垣根を越えて音楽を聴けるようになったのが大きいと思うんですけど、それはアーティストにとっては可能性を感じる変化だから。ここで尻込みするよりは、つかみに行くほうが性に合っている気がします。

──フェス出演に関してはどんなことを感じていますか? 2023年のgo!go!vanillasは年末のみならず、春や夏にもたくさんのフェスに出演していました。

セイヤ たくさん出させてもらいましたね。日本ってフェスが多いなと思いました。

プリティ 気が付けば自分たちより上の世代のバンドよりも、下の世代のほうが多いフェスもあって。移り変わりを実感しています。僕、若い頃に「俺たちに後輩ができたら、思いやりを持って接したいな」と思っていたんですよ。優しい音楽業界にしたいなって。

柳沢 優しい音楽業界?(笑)

 なんか胡散臭いけど(笑)、言ってることはわかる。10-FEETのTAKUMAさんが俺らに声かけてくれたみたいにね。

プリティ そうそう。僕もそうありたいなと思うし、こないだ「MERRY ROCK PARADE」に出たときに、僕らと同い年のフレデリックが後輩であるNEEの楽屋に自ら挨拶に行っているのを見て「なんかいいな」と思いました。若いバンドもたくさん出てきている中で、自分たちもフェスに出させてもらえているので、バックヤードでも、もちろんライブでもカッコいいバンドでいたいなと気を引き締めてます。

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──ワンマンツアーとはライブの届け方も違ってくると思いますが、そのあたりに関してはいかがですか?

 フェスには僕らのファンじゃないお客さんもいるので、音楽で会話をするためには独りよがりでいてはいけないし、だからといってサービス過剰になってしまうのも違うし、大事な部分を表現するための努力をしなきゃいけないなと思ってます。だけど義務的な感じじゃなくて、人と接する喜びを感じながらやれていますね。お客さんが持っているタオルとかを見ると「ああ、ほかのバンドのファンの人だ」ってすぐわかるんですよ。だけど僕たちのことを意識して見てくれるようになった瞬間というか、「あ、いいバンドだなと思ってくれたのかな」というのも表情の変化を見ているとわかるから、すごくうれしい。そういう部分を昔よりもフラットに楽しむことができているかもしれない。

柳沢 最初は興味なさそうだった人たちを盛り上げられた瞬間は、やっぱり充実感があります。「フェスで初めてバニラズのライブを観て、今日初めてツアーに来ました」というお手紙をいただくこともあるし、フェスに出る意味は実感できてますね。