GLAY「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」特集|TERUソロインタビュー (2/2)

60代、70代の自分を見据えて

──今回のシングルには、JIROさんが作曲、TAKUROさんが作詞した「THE GHOST」も表題曲として収録されます。この曲はJIROさんが得意としてきたシンプルなロックサウンドとは異なるアプローチですね。

デモがキック、ベース、ギターにJIROの仮歌だけが入ったシンプルな内容で。歌のキーも高くてこれまでのGLAYにないタイプの曲だったので驚きましたね。あんまり声を張るパートがないから「これでいいの?」ってJIROに聴いたら、「大丈夫。そういう曲だから」と返されたんですよ。それでボソボソしたトーンで歌ってみたら、TAKUROが「この曲めちゃくちゃいいからレコーディングしよう」と言い出して。それでJIROに初めて僕の函館のスタジオに来てもらって、歌録りに立ち会ってもらいました。そのときにJIROが「いい環境でレコーディングしてるんだね」って言うから、やっと気付いたか……と。

──マイペースなJIROさんらしいエピソードですね(笑)。

海外でレコーディングをしていた頃は、リフレッシュもしやすいし、集中もできたんですけど、近年は都内のスタジオでのレコーディングが中心だったからストレスが溜まっちゃって。もともと音楽を作るなら函館で作りたいという気持ちがあったから、6年前に自分のスタジオを作ったんだけど、JIROがそのよさにやっと気付いてくれた。函館だと都内のスタジオと違って、1日の作業が終わったあとにそのままメンバーやスタッフとお酒を飲みながら音楽を聴いてゆったりできるんですよね。そんな潤いのある豊かな時間の中での制作が、今後のGLAYの音楽に反映されていく気がしますね。

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──将来を見据えて作った環境がこれからの活動に影響すると。

はい。僕らは60代になっても音楽を作るでしょうし、「THE GHOST」に関しては60代になっても演奏できる曲だと思うんです。

──かなり削ぎ落とされたアレンジで、演奏を重ねるごとに味わいが増しそうな曲ですね。歌ううえで挑戦だったと感じたポイントはありますか?

2000年代の初めはいろんな引き出しを開けて、自分の新しい歌声を探していたんだけど、20年くらい経つとスタイルが固まってね。どんな曲でも僕が歌えばGLAYになる自信も生まれたんです。その一方でスタイルを崩せない状況にもなっていた。でも、「THE GHOST」は今までの歌い方が通用しない曲で、Aメロ、Bメロもほぼほぼファルセットで歌い続ける。そんな実験的な曲をメンバーみんなで楽しみながら作る中で、これが今のGLAYなんだと自信を持つことができたんです。今までのシングルだったら印象に残るメロディの派手な曲が選ばれていたけど、サウンドのベクトルが違う曲が採用されたのも新鮮でした。

──ある意味で、「THE GHOST」もこれまでのGLAYに根付いていた固定観念という“限界”を突破した曲だったと。「THE GHOST」もそうですが、この数年のGLAYは「Into the Wild」「Holy Knight」とあえて抑制を効かせた、成熟した雰囲気の楽曲が増えてきましたよね。

曲作りのうえで、“大人のGLAY”というのは意識していますね。あと、僕の場合は60歳の自分をイメージしていて。そのときにどうありたいかを考えると、エリック・クラプトンやAerosmithみたいに、60代はもちろん70代になってもステージに立っていたい。それを踏まえて曲を作っているところはあります。

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ウイスキーのラベルの絵を描いてます

──話は変わるんですが、TERUさんは昨年の誕生日からすごい勢いで絵を描かれていますよね。

もう少しで100点くらいになります。

──以前から絵が得意であることは存じ上げていましたが、ここにきて本腰を入れて描かれるようになったきっかけはなんだったんでしょうか?

今、函館のスタジオを拠点に音楽を作っているので、制作期間中に街をよく歩き回るんですね。そうするとコロナの影響で観光客が一気に減って、寂しい状況になっているのを目の当たりにするんです。それがつらくて、なんとか助けることできないかと、アートと食と音楽をつなげたイベントの開催を思いついて。例えば知り合いの作家さん、音楽家、友達のレストランのオーナーに声をかけて、金森赤レンガ倉庫を舞台に「函館ビエンナーレ」と銘打った企画をできないかなと。そのイベントで自分の絵を展示できたらと思ったのが一番大きなきっかけですね。イベントの話は着実に進んでいて、今は自治体ともつながりができ、賛同してくれる人も増えてる感じです。

──イベントの構想が先だったんですか? それとも絵を描き始めたのが先だったんですか?

絵が先です。長谷川匠くんという建築家と知り合って、彼が描いている絵に影響されて自分でも始めたら止まらなくなっちゃったんですよ。

──描かれている絵を拝見する限り、TERUさんの絵は現代アートと呼ばれるものでしょうか?

そうですね。現代アートって手で描いてもいいし、スプレーを使ってもいいし……手法が自由なんですね。それが楽しくてどんどん描いていく中で、展示したいと思うようになって。ただ、展示するなら実力をつけなきゃいけないから、とにかく描きまくろうと。描いていくうちに仕事のオファーも来て、今はウイスキーのラベルの絵を描いてます。

──すごい! TAKUROさんが先日プラネタリウムでソロイベントを開催されたとき、「ゆくゆくはWikipediaのTERUのプロフィールには、GLAYのボーカリストじゃなくて画家って書かれるかも」とおっしゃってましたけど、近いうちに現実になりそうですね。

でも、なんでこんなにも絵に集中できるかと言うと、TAKUROがロスに行ってる間、僕は仕事がないんですよ(笑)。1月はほぼスノーボードしかやってないし。TAKUROが帰国するまでは自由時間なので、それを制作期間に充てている感じですね。

──絵を描くときのBGMは決まってるんですか?

決まってはいないけど、音楽は常にかけていて。今は次のツアーのセットリストをもとにしたプレイリストを聴きながら描いてますね。でも、1月はいろんな音楽をインプットするために、UKとかアメリカのトップテンを聴いてました。あとJIROがインドのトップテンが面白いと言ってたので聴いたり。

──新しい音楽に触れるきっかけにもなってるわけですね。

はい。アートを自分の音楽にも取り入れたくて、いつか絵を題材にした曲を書いてみたいんです。絵を描くプロセスを何かに例えてみたり、「白いキャンバス」というワードを盛り込んだりするかも。いや、「白いキャンバス」は昭和感があるからやめておこうかな(笑)。

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いつまでもあなたを照らすTERUでいます

──TERUさんがGLAYで歌い始めて35年経つわけですが、今のTERUさんにとって“いい歌”とはどういうものですか?

自分で聴いて気持ちいいというのは大前提ですね。最近よく20年前とか、25年前の曲を聴く機会があって、当時は当時ですごくいい歌い方をしてるな、いい声をしてるなと思うんですよ。タバコを吸ってた時期の声は少ししゃがれていて味があった。何より歌に一生懸命向き合ってるのが伝わってくる。そういう情熱が注がれている歌がいい歌なんじゃないかな。音楽って、演奏している人、歌っている人の人となりが絶対に反映されると思うんですよ。だから普段どういう言葉を発して、どんな行動をしているのかというのが大事。普段はスタッフをめちゃくちゃ叱っている人が愛の歌を歌っても説得力がないじゃない? 僕としては、歌と人となりが重なるのが一番いい歌ですね。

──ご自身で自覚している歌の特徴や武器は?

「GLAYのライブに行くと元気になる」「TERUさんの姿を観ているだけで元気になります」ってよくファンの方に言われるんですよ。たぶん普段からエネルギッシュにあちこち飛び回ってるから、日々の生活がファンに伝わって聴いてると元気になるんじゃないかな。TAKUROにも5、6年前から「お客さんはTERUの歌を聴きに来てるんじゃない。『生きてる!』ってエネルギーを感じにライブに来てるんだ」って言われてます。

──TAKUROさんはライブのMCでもそのようなことをおっしゃってましたね(笑)。ちなみに人に元気を与え続けなきゃとか、常に活動的でいなきゃとか、そういう思いが重責になったりしませんか?

しないですね。それが自分の持ち味であり、いいところだと思ってるので。「いつまでもあなたを照らすTERUでいますよ」という心意気です。それに疲れたら「疲れた。休みたい!」って周りにもファンにもちゃんと言ってますから(笑)。

──最後に、3月に始まる「HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-」についてお聞きしたいのですが。

今回はTAKUROの意気込みがすごいんですよ。来た人が「え?」と思うようなマニアックなライブをやりたいと。「The Ghost of GLAY」というテーマとTAKUROの考えを聞いたうえで、メンバーそれぞれ4曲持ち寄ったセットリストになってます。GLAYが大好きな友達と来るなら楽しめるけど、初めて来る人にはちょっとオススメできないツアーかな(笑)。

──逆アピールしてどうするんですか(笑)。

1曲目からマニアックな感じで、代表曲は1曲くらいかな? それもあえて1曲だけ入れておくみたいな。やっとライブで声出しが解禁されたのにね(笑)。

──つまり「THE GHOST」のサウンドアプローチと同じように実験的な場になるわけですね。

はい。ファンの皆さんは覚悟して会場に来てください。

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ライブ情報

GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023

  • 2023年3月2日(木)北海道 帯広市民文化ホール
  • 2023年3月4日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2023年3月5日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2023年3月12日(日)秋田県 あきた芸術劇場ミルハス
  • 2023年3月14日(火)山形県 やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
  • 2023年3月19日(日)三重県 三重県文化会館
  • 2023年3月21日(火・祝)岐阜県 長良川国際会議場
  • 2023年3月24日(金)新潟県 新潟県民会館
  • 2023年3月25日(土)新潟県 新潟県民会館
  • 2023年3月30日(木)東京都 NHKホール
  • 2023年3月31日(金)東京都 NHKホール
  • 2023年4月4日(火)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
  • 2023年4月7日(金)愛媛県 松山市民会館
  • 2023年4月9日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
  • 2023年4月12日(水)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2023年4月13日(木)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2023年4月18日(火)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年4月19日(水)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年4月23日(日)佐賀県 鳥栖市民文化会館
  • 2023年4月25日(火)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
  • 2023年4月29日(土)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2023年4月30日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2023年5月17日(水)福島県 けんしん郡山文化センター
  • 2023年5月20日(土)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2023年5月21日(日)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2023年5月26日(金)長野県 ホクト文化ホール
  • 2023年5月28日(日)富山県 オーバード・ホール
  • 2023年6月1日(木)北海道 函館市民会館
  • 2023年6月3日(土)北海道 函館市民会館
  • 2023年6月4日(日)北海道 函館市民会館
  • 2023年6月10日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年6月11日(日)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

GLAY(グレイ)

北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年に活動を開始し、1989年にHISASHI(G)、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に12枚目のシングル「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブを開催し、当時有料の単独ライブとしては日本最多観客動員を記録する。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年には宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行った。デビュー25周年を迎えた2019年より「GLAY DEMOCRACY」をテーマに精力的な活動を展開。10月にアルバム「NO DEMOCRACY」を、2020年3月にベストアルバム「REVIEW II -BEST OF GLAY-」をリリースした。2021年3月から6月にかけて配信ライブ企画「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を実施。8月にシングル「BAD APPLE」を、10月に2年ぶりのオリジナルアルバム「FREEDOM ONLY」をリリースした。2023年2月に61枚目のシングル「HC 2023 episode 1 - THE GHOST / 限界突破-」を発表し、3月よりロングツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023」を開催する。