より音に集中して演奏できるようになった

──3月にお話をお伺いしたときは、「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」が始まる直前ということでライブに対する意気込みをお聞きしましたが(参照:「GLAYエンタテインメントの逆襲」とは? TERU&JIROが2020年を振り返りながら語る)、終えてみて率直にどうでしたか?

準備は大変でしたけど面白かったですね。第1回のTAKUROの回は試運転的な意味合いで。TAKURO自身が「配信ライブのテンションがわからない」とギリギリまで言っていて、自分もどうしようかなって思ったんだけど、その状況をストレートに表現するしかないと思ったので、淡々とパフォーマンスした感じでした。たくさんカメラを目の前にしてのパフォーマンスだったので、普段のライブの解釈とは違いましたね。ミュージックビデオの撮影に近いというか。

──それは映像を拝見していても感じました。第1回はパフォーマンスに集中することを重視している感じで、2回目以降はお客さんが少なからず入っている状況なので、メンバーの皆さんも客席のほうを見るし、表情も豊かで笑顔が多い。

そうですね。1回目はひさしぶりにみんなで演奏するから、ちゃんと弾こうという意味合いも強かったです。あとは映像スタッフがたくさんいて、その人たちが淡々と冷静に仕事をしている感じだったので、こっちも冷静にプレイしていたというか。

──2公演目はHISASHIさんのプロデュース公演で、選曲はもちろん演出も仕掛けたっぷりの印象でした。

俺もHISASHI曲だけなので難易度が高い公演だと思っていたんですが、いざ演奏する曲を練習してみたら「あれ、意外と簡単だな」と(笑)。考えてみたら、HISASHIの曲は短いので集中力が途切れないんですよ。ギミックを盛り込んだ曲が多くて、それらを攻略してるとあっという間に終わる。ある意味TAKURO楽曲のほうが体に馴染ませるのに時間がかかったりして。でも、去年1年間はGLAYとして演奏する機会も少なかったので、今回はライブをやる以前にメンバーと一緒に音を出すというのが楽しかったですね。なので、1本1本大事にしたいと思ったし、より音に集中して演奏できるようになっていった気がします。お客さんに対して猛烈なアピールをする割合が減ったというか。ファンの人たちも純粋に音楽を楽しんでいるし、俺たちも純粋に音楽に向き合いたいので以前よりプレイに集中して、余裕があるときにしっかりお客さんと向き合うみたいな。そういう姿勢が明確になりました。

やっぱり俺はこれなんだな

──3公演目のJIROさんの公演は、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)を舞台に観客をキャパシティの50%以下に限定して開催されました。

JIRO(撮影:岡田裕介)

正直、俺は自分のプロデュース公演とかやりたくなかったんですよね(笑)。

──ええっ! なんでですか?

ファンの人だけじゃなくて、俺もメンバーもスタッフもみんなライブに飢えてるんですよ。そこに特定のメンバーのプロデュースライブとなるとエゴが発生しちゃうので、それだったら毎月集大成的なライブをやったほうがいいんじゃないかと思ったんですよね。でも、「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を開催すると決めた時点では先の状況が見えなかったので、確実にできる方法を模索した結果、こういう形になったんです。もちろんいいこともあって、HISASHIとかは自分でやりたいことが見えていて、それを表現できたのはこの機会ならではだと思うんです。俺にとってはこの時期にライブをやれることが奇跡だったので、それを噛み締めたいという思いでしたね。

──ご自身が手がけた楽曲だけのライブを通して、改めて発見したことなどはありましたか?

えーっと、このライブに関してはリハを3日間やったんですよ。1日目でわりと形になってて、2日目にはほかのメンバーが退屈していないかとか余計な気を使い始めて(笑)。本当にこれでいいのかな?というのは演奏しながら考えていましたね。

──いやいや! MCでTERUさんが「JIROの曲はいい曲が多いな」としみじみおっしゃってましたし、JIROさんはご自身に対する自己評価が低すぎるのでは……。

ライブをやる直前までは、自分の曲がシンプルすぎてリハをやってても飽きるなと思っていて。本番直前のファンクラブ用のコメント動画を撮るときに「今後はもっと振り幅を広げて曲を作っていきたい」と言ったんですよ。でも、いざお客さんを目の前にしてライブをやってみて、やっぱり俺はこれなんだな、と。ひねりはないけどストレートにみんなを楽しませられる曲は、GLAYの中では俺しか作らないということを演奏しながら感じたんです。だから俺は間違ってなかったんだなと。自分のプロデュース公演が無観客だったら、「ちょっと変わっていかなきゃダメかもしれないな……」と思っていたかもしれないですけど、目の前にファンの人たちがいて、楽しんでいる顔を見たら、これでいいんだと。

JIRO(撮影:岡田裕介)

──マスク越しですけど、動きや目の表情で感情が伝わりますからね。

そうですね。これまでライブをイメージしながら曲を作ってきましたが、改めて自分の曲はライブで映えるものが多いんだって感じました。

──TERUさんの公演は、Billboard Liveという会場に合わせて皆さん正装のようなファッションだったのが印象的でした。

俺自身はBillboard Liveやブルーノートなどにあまり馴染みはなかったんですが、敷居が高いということはわかっていたので、すごく緊張しましたよ(笑)。

──20万人の前でライブをやったJIROさんでも?

はい(笑)。TERUの公演は去年配信していた「LIVE at HOME」の延長だったんだけど、披露するにあたって完成された曲を一度解体して、別の解釈でアレンジしていくという作業をしたんです。そのときに亀田誠治さんのアレンジ力みたいなものが自分にも根付いてきているなと感じました。

──具体的にはどういう部分でしょうか?

亀田さんはベーシストでもあるので、ベースで展開やアレンジを作っていく人なんですよ。俺は今まで、バンドのボトムを支えるイメージでベースと向き合ってきたんですけど、亀田さんの影響によってベースでサウンドを華やかにするというのも面白いなと思うようになって。それがアレンジしているときにうまく出せると、亀田スタイルみたいなものを少しづつではありますが継承できてきているのかなと思いますね。