Girls be bad「sixteen's pleasure」特集|松隈ケンタ独白&GBBメンバーインタビュー (2/4)

ファンがRECに参加?斬新なアルバム

──「sixteen's pleasure」はどんなアルバムになりましたか?

16曲入りの2ndアルバムで、音楽作りの楽しさを詰め込んだ作品です。クラファン企画でファンを呼んで、6月6日から30日まで糸島の新スタジオで合宿レコーディングしました。これまでにない“ファン参加型”のアルバムになったと思います。というのもコーラス、ベース、ドラムをファンが担当しているところもあるし、歌詞を文字単位で書ける権利もクラファンのお礼として用意して。歌詞を書ける権利は人気で、500円から2000円くらいのプランがいくつかあったんですけど、思いの外売れて、尺に入り切らないくらい歌詞が集まったんで、早口になっている曲もあります(笑)。でも、「楽しく作る」ってのが大事だと思うんですよ。

──ファン参加型のレコーディングって斬新ですね。

曲を事前に渡して練習してきてもらったから、いい感じになりました。ファンからしたらレコーディングの現場を見学できて、曲も完成前の段階から聴けるし、めっちゃお得だと思います(笑)。新スタジオを糸島の海沿いに移して、アメリカから取り寄せたアナログミキサーとか、APIのミキシングコンソールを使って、アナログな環境でレコーディングしました。時代に逆行しているけど、こういう音楽作りは今きっと少ないからこそ面白いと思うんです。1日のレコーディングが終わるたびに鍋パーティをしたり、昔ながらの音楽作りの楽しさをみんなで味わいました。

SCRAMBLESとBADKNeeの新体制

──BADKNeeは先日の西川口公演から新体制になりました。改めてどういった布陣になっているか教えてください。

POPPiNG EMOのプロデューサー・坂田鉄平さんの事務所と合併したのと、新グループ結成もあって、BADKNeeはGBB、ポピエモ、SUPER REPLiCA、KIRA:MINA、そしてLΛMBDAの計5グループを擁する形になりました。坂田さんは高校時代の先輩で、昔からのバンド仲間なんです。

松隈ケンタ、坂田鉄平(POPPiNG EMOプロデューサー)。

松隈ケンタ、坂田鉄平(POPPiNG EMOプロデューサー)。

──KIRA:MINAは西川口公演でお披露目されましたが、初ステージとは思えない堂々っぷりでした。

KIRA:MINAのメンバーは4、5月に16日間の公開オーディションがありまして、ファンのX(Twitter)投票で選ばれた子たちです。KIRA:MINAは東京拠点になると思いますが、それとは別で福岡でもオーディションをして、LΛMBDAが8月1日にデビューしました。僕のバンド・Buzz72+もBADKNee所属ですけど、中年バンドなのでのんびりやってます(笑)。

──いきなり大所帯ですね!

ライブやフェスを企画してどんどん増やして、いろんなグループとコラボしたい。ワンマンより対バンやイベントが好きなんです。BADKNeeを中心にほかの事務所のアーティストにも声をかけて、盛り上がる企画をどんどんやっていきたいです。昔のWACKみたいにギスギスした、バチバチ感もちょっと欲しいよね(笑)。KIRA:MINAが実力派新人だとしたら、GBBも負けていられないだろうし、いい影響を与え合うようになったらいいなって。

WACKとの別れ、新たな挑戦

──改めてWACK時代を振り返ると、どんなことが印象に残ってますか?

WACKはゲリラ性がテーマで、リリースやライブをギリギリで発表して、追っかける人だけが楽しめる戦略だった。道頓堀でBiSHがゲリラライブをやって話題になったり、楽しかったですよ。渡辺(淳之介 / 元WACK代表)くんとは15年くらい一緒にやって、BiSHやBiSでいい時代もあったけど、方向性の違いで離れました。最後にWACKで書いた曲はアニメ「天国大魔境」(2023年)のオープニングテーマになったBiSHの「innocent arrogance」かな。タイアップの関係でリリースが遅れたけど、途中からうやむやになっちゃった。

──BiSHは2021年12月に解散発表をして、2023年6月に解散しました。それを待たずに別々の道を歩むことになったんですね。

渡辺くんがどう言ってるかは知らないけど、音楽的な部分だと、当時WACKはエレクトロポップやEDMみたいな方向で行きたかったんじゃないかな。僕はロックを基盤にしつつ、ヒップホップやEDMもやっていたけど、渡辺くんの目指す本物のヒップホップやEDMには届かなかったのかも。中途半端なことは許されないし、僕も人に認められる音楽を作りたかった。ビジネス的にはWACKの売り上げに7、8割を依存していたから、離れたときはマジで会社が潰れるかと思いました(笑)。それまでの稼ぎはスタジオやソフトに全力投資してたから。なんとか体制を整えて、やりたいことに注力できるようになってきたのはここ2年くらいですかね。

──WACKを離れてすぐ動かなかったのは、体制立て直しのほかに理由があったんですか?

すぐに動き出すと嫌な気持ちになる人もいるかなって。少し期間を空けて、忘れられた頃にGBBを始めた。偶然、渡辺くんのWACK退任とGBB始動の発表タイミングがかぶって、Xで「タイムリーすぎる!」って話題になりましたけど、僕はそれを知らなかったから(笑)。

──面白い偶然があるものですね! WACKでの仕事で学んだというか、今に生きていることもあると思いますがどうでしょう?

渡辺くんが批判を全部引き受けてくれてたことかな。メンバーに降りかかる火の粉を避けていたし、僕にも来ないようにしてくれてた。でも離れたら、批判が全部自分に来るんだって実感した(笑)。あと、信頼関係を築くことの大切さ。曲だけじゃなく、レコーディングのディレクションやミックス、メンバーとの関係性が音楽のよさを引き出す。それが過去に足りなかった部分は反省してるよ。

Girls be badと松隈ケンタ。

Girls be badと松隈ケンタ。

松隈ケンタにとって音楽作りとは?

──グループが増えて、新たな拠点での制作環境も整いました。今後の目標は?

九州でイベントやフェスをやって、関東や全国でも「城島UNDER THE SCREAM」(大分・城島高原パークを舞台にした音楽フェス)のミニ版みたいな企画をしたい。BADKNeeのグループを中心に、僕が曲を提供したスターダストやアソビシステムのアーティストともコラボして、“異物感”のあるイベントを増やしたいんです。昔のWACKのような勢いやスピード感を持って、うちにしか作れない形でカッコいい音楽を追求したい。GBBは“令和のPUFFY”みたいな、ゆるくてキャッチーなガールズグループを目指しています。

──最後の質問です。長年にわたって音楽に携わってきた松隈さんにとって、音楽作りとは?

シンプルに、「エンタテインメントを作ること」ですね。

──音楽=エンタテインメント。確かに松隈さんは凝りだしたら写真でも動画でもなんでも学んで、試して、自分のものにしますよね。

音楽も映像も、全部自分でやりたいから。インディーズ時代はチラシやホームページも自分で作ってたし、CDを焼いて、ハガキを書いてライブ告知していました(笑)。その名残りで、全部自分が関わりたいんです。チームで動くからこそ、大規模なことができる。スタッフには無理難題を押し付けてるけど(笑)、昔ながらの音楽作りの楽しさをみんなで味わっている今はとても充実していると思います。GBBの「sixteen's pleasure」は、16曲に込めた音楽の喜びそのものです。ファンのみんなにもその楽しさが伝わったらいいなと思います。

2025年8月20日更新