音楽ナタリー Power Push - 銀杏BOYZトリビュートアルバム「きれいなひとりぼっちたち」特集 銀杏BOYZ×リリー・フランキー
ひとりぼっちの2人の対話
社員証のファンタジー
峯田 そういえば僕ドラマの仕事で最近NHKに行ってるんですけど、食堂とか行くと、女の人たち社員証付けてて、それがすごくいいんですよ。社員証付けてる女の人ってなんであんなにいいんですかね? もう社員証で抜けますってくらいに。
リリー あはは(笑)。それはたぶんね、俺とかカズくんみたいな、会社勤めをしたことない人間のファンタジーだよね。会社に従属してる人間に対する妄想というか。
峯田 それです、それ! 社員証ってそういうことだ。もう違う星の人みたいに見える。だからすごい憧れる。
リリー だって俺なんかだいたい昼まで寝てて夜中から飲みに行くと、だいたいそこにいるのは人間のクズじゃないですか。カタギの仕事してる人と知り合わない。だからたまに昼間の丸の内とか行くと「何これ? すごい!」みたいな。
峯田 ホントそうですよね。
リリー 「これはみんな昼に起きるわ!」と思ったもん。
峯田 太古からそうなってますからね(笑)。
演技は自分を捨てられる
──ところでお二人共、ここ数年は特に俳優としての活躍が目立ちますよね。
リリー でも書く仕事も相変わらずやってますよ。演技の仕事のほうが人の目につきやすいから、そればっかりやってるように見えるのかもしれないけど。
──俳優は本業じゃないという意識はありますか?
リリー まあ社会見学に行ってる感じは今でもありますよね。
峯田 でも撮影があるとちゃんと朝起きるし、昼になったら弁当出るじゃないですか。そこで社会性を保てるっていうか。やっぱり家にこもって曲ばっか作ってるとおかしな感じになってくるんですよ。それを引き戻してくれる。
リリー ちゃんと人に挨拶するとかだよね。
峯田 リリーさんもそうかもしれないけど、僕も銀杏BOYZではスタッフも含めて俺が引っ張っていくみたいなところがあって、全部自分次第なんです。でも与えられた台本を読んだり演技をしたりしてると、自分を捨てられるところがあって、それが気持ちいいんですよね。凝り固まってる自分を捨てられるっていうか。
リリー 役だからね。これは自分じゃないって思ってるからできることはいっぱいあるよね。
──でも峯田さんもリリーさんも、本人のイメージに近い役柄を演じることが多い印象がありますが。
リリー それはやっぱりね、俺とかカズくんみたいなのに銀行の支店長の役は来ないから(笑)。
峯田 ないですね(笑)。
リリー そんなのはプロデューサーがスティーヴィー・ワンダーでもわかりますよ。俺、乞食と学者の役が多いんだよね。あと人殺しと覚醒剤やってる役。社会生活をちゃんと営めてない人だって思われてる。
峯田 僕はニートばっかりです。
「役者です」とは言えない
リリー 今は「銀と金」っていうドラマやってるんだけど、この役が原作の福本伸行先生の指名なのよ(参照:ドラマ「銀と金」平井銀二役はリリー・フランキー、福本伸行の指名で決定)。「役者のリリー・フランキーでなく、人間としてのリリー・フランキーに悪人足りうる素養を感じた」って言われて。でも俺会ったことないんだよ、福本先生に。
峯田 見透かされてる(笑)。
リリー 面識のない人から透けて見える悪ってのは相当悪ですよね。
峯田 俺もそういう役やってみたい。人殺しの役とか。
リリー きっとそろそろ来るよ。で、1回殺すとずっと人殺しの役ばっかりになる(笑)。
峯田 あとチューしたことないんですよ。
リリー わかる。俺らみたいにハンパな立場だと、映画とかドラマでキスシーンをするってことにすごく抵抗があるんだよね。俳優だって割りきれてるわけでもないし、それをやってる自分を見るもう1人の自分が「え、女優とキスすんの?」みたいなことを言い出すから。だから俺けっこう断ってたの。でもこの間「SCOOP!」で福山(雅治)くんとキスをして、1回しちゃったらあきらめがついた。あとはもう出る映画出る映画キスしまくって、最近もう麻痺してきた。
峯田 やっぱ恥ずかしいんですよね。何やるにしても「俺みたいなもんが」みたいな気持ちがどっかである。
リリー そもそも周りの俳優さんが俺らのこと俳優だと思ってないからね。その認識はずっと変わらないんじゃないですかね。
峯田 うん、自分で「役者です」っていうのはちょっと言えないですね。滅相もない。「役作りとかどうされますか」とか言われるけど、そんなのないし。ちょっと太るぐらいしかできない。「奇跡の人」(2016年4月から6月にかけてNHK BSプレミアムで放送されたドラマ)のときは「このままだとロックの人に見えちゃうんで、働いてなくてブクブク太ってる感じ出せませんかね?」って言われて、言われたことはやりたいんで、それぐらいやろうかなと思って夜中カップラーメン食べてましたけど(参照:峯田和伸、主演ドラマ「奇跡の人」制作発表会で「麻生さんに恩返ししたい」)。
リリー 太るのは痩せるよりキツいでしょ?
峯田 キツかったですねえ。
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- V.A.「きれいなひとりぼっちたち」
- 「きれいなひとりぼっちたち」
- 2016年12月7日発売 / 3240円 / UNIVERSAL J / UPCH-2105
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- ハイレゾ配信 / レコチョクへ
- 2017年5月17日にアナログリリースも決定
収録曲
- 漂流教室 / YUKI
- ぽあだむ クボタタケシ REMIX Version I / クボタタケシ
- 夢で逢えたら / 麻生久美子
- あいどんわなだい(Instrumental) / YOUR SONG IS GOOD
- 援助交際 / クリープハイプ
- NO FUTURE NO CRY / サンボマスター
- なんとなく僕たちは大人になるんだ / 安藤裕子
- 夜王子と月の姫 / 曽我部恵一
- 駆け抜けて性春 / ミツメ
- BABY BABY / sébuhiroko
- YOU & I VS. THE WORLD / THE COLLECTORS
- ナイトライダー / GOING UNDER GROUND
- 東京 / YO-KING
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
2003年1月、GOING STEADYを解散後に峯田和伸(Vo, G)が、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時に発売する。続くツアーやフェス出演では骨折、延期など多くの事件を巻き起こした。その後も作品のリリースを重ねていたが、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。2016年6月に、サポートメンバーを従え8年半ぶりのツアー「世界平和祈願ツアー 2016」を開催。このツアーの追加公演として8月に初の東京・中野サンプラザホールにてワンマンライブ「東京の銀杏好きの集まり」を実施した。また俳優業では、NHK BSプレミアムで放送されたドラマ「奇跡の人」で主演を務めたほか、2017年4月より始まるNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」にも出演する。
リリー・フランキー
1963年生まれ、福岡県出身。武蔵野美術大学を卒業後、イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など多彩な分野で活動。2001年に発表した絵本「おでんくん」はアニメ化されるなど幅広い層の人気を集めた。実体験を基に執筆した長編小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」は、テレビドラマ、映画、舞台化されている。俳優としては映画「ぐるりのこと。」「モテキ」「凶悪」「そして父になる」、舞台「クレイジーハニー」などに出演し高い評価を受けている。2017年1月からはドラマ「銀と金」では、原作者である福本伸行からの指名で、裏社会を仕切る大物フィクサー“銀王”こと平井銀二を演じる。