「ナイトライダー」について
──カップリングの「ナイトライダー」すごくよい曲だと思うんだけど。この曲まだライブでやってないよね?
うん、たまにはね、ライブでやんないでCD買って初めて聴く曲があってもいいかなと思って。ライブだと、たぶんあれピアノ弾きながらだし、セッティングとかあるからアンコールじゃないかな。
──あ、峯田くんがピアノ弾きながら歌うんだ?
うん、キーボード。
──いいね。この曲を今回のCDに入れようと思ったのはどうして?
ほかの曲でもよかったんだけどね。ただ「光」の「♪君がー笑うー夢をーみたよ」のところと、「ナイトライダー」の「♪キミからメールが来ないから」って、メロディいっしょなんですよ。
──ああ、言われてみればそうだ。
そう、出だしがいっしょ。だからこの曲にしたの。
──銀杏にしては珍しく、幸せなほんわかした曲だよね。
こういうのあんまりなかったからね。
──彼女がいない人が作ったとは思えないような。
いるんですよ、仮想の彼女(笑)。
──この曲はさっきの話で言うと、自分とは違う主人公の話ということ?
いや、そんなことないな、「ナイトライダー」のほうが正直な自分って気がする。これはあの、出会い系で知りあった子がいまして。で、その人からメール来なくて凹んだときに作った(笑)。
──え、そうなんだ? 峯田くん出会い系もやってるの?
出会い系っていうか、でもまあ、大きな意味で言ったら出会い系かな、うん。
──それは「峯田和伸」としてやってる?
ううん、隠してる。顔出さないで名前もハンドルネームで。そこは唯一俺が一般の人とまぎれて遊べる場所なの。そういうのってないじゃん。ねえ?
──そっか、隠してればわかんないもんね。でももしメールのやりとりしてて、今度会おうか、なんてことになったらどうすんの? 峯田くんのこと知ってるかもしれない。
でも知らない感じだよ、うん。
──だって下北とか歩いてたら、みんな峯田くんのこと知ってるし、声かけられるでしょ。
そんなことないよ。こないだ日曜に中野歩いてたけど、声かけてきたの男5人だけだったよ。でもそれも10代のキッズみたいのだったらいいんだけどさ、30代とかだったし。
──女の子のファンは?
女の子はあんまりないよ。こないだはなんか遠くのほうでごにょごにょ話してて、あ、俺のこと知ってんだな、来るのかなって思ってたら「本物はあんなに汚くないよ」って聞こえてきて。そんなこと言うなよね。ひどいよね。
──いい話だね、それは。
男はもう迷わず来るよ。「いつも見てます」「応援してます」って、汗ダラダラかきながら。
シングルとは何か
──峯田くんにとってシングルっていうのはどういうものなんだろう? 銀杏BOYZがシングルを出すっていうのが実はけっこう意外だったんだけど。
えー? どういうもんだろ。アルバムは10何曲とか入ってて、シングルは2曲か3曲っていうだけ。特になんにも考えてないかな。
──なるほど。
あ、でも「あいどんわなだい」のときはさすがに、アルバム2年出してなくて、作品出してなかったから、なんか銀杏BOYZの今を見せたいってのがあった。で、ちょっとアッパーな曲と、聴かせる曲と2曲で出したいってのはあった。
──「光」は?
「光」はちょっと違うわ。「光」は、ええと、ホント作品として、曲も長いから、1枚の作品、ダウンロードで1曲を買うみたいな、うん、そういう感じかな。短編映画と長編映画で言えばシングルは短編なのかも。
──ただ、シングルは単純に曲数が少ないCDっていうだけじゃなく、ラジオでかかったり、PVがいっぱい流れたりとか、そういう意味もあるでしょ?
あ、そういうことは考えてないよね。うん。だって「あいどんわなだい」のPVにしても絶対にテレビで流れないのわかってて作ってるし、「光」もこんだけ長い曲を流してもらえないのわかっててシングルとして出してっから。あんまり、そのチャートにどうやったら載るかっていうのは考えてない。
──シングルだからキャッチーな曲を選んでヒットを狙おうとか、そういうのもない?
ないんじゃないかなあ。でもわかりやすいのがやっぱいいと思う。その、曲によって違うじゃないですか。わかりやすい曲と、渋くてジワジワくる曲と。でもその渋くてジワジワする曲は、シングルとして出したくない。わかりやすい曲がいいな。
──じゃあラジオで流れてヒットしたりとか、カラオケで歌われたりとか、着うたダウンロードされたりとか、そういうのを狙ったシングルじゃないってことだよね。
うーん、でもやっぱりぜんぜんなくはないよ。あるよ。その、こんな長い曲がシングルとして売れたらおもしろいなとは思う。だからやっぱ最初からもうあんま売れなくてもいいとか思ったことはない。
──おもしろいねそれ。
こういう形で売れればいいな、って思う。うん。
──で、ぼくはこのシングル2枚で、銀杏BOYZがちょっとまた新しくなったというか、進んだ感じがすごくして。
んー、それがちゃんと見えるまではもうちょっとかな。やっぱアルバム出さないとね。いまの自分の中にある銀杏BOYZは、ねえ、やっぱお客さんには見えてないから。まだ自分の中にしかなくて。だからそれを出さないとさ、お客さんといっしょにちゃんと進んでない気がするからね。だから、もうちょっとがんばりたいよね。