原因は自分にある。「文藝解体新書」インタビュー|“日本文学×四季”で誘う、ゲンジブ世界の深淵 (2/3)

今の自分たちを表していると思えた

──1曲目に収録されているリード曲「ニヒリズムプリズム」からお話を聞かせてもらえたら。この曲はゲンジブの代表曲の数々を作曲されている、おなじみ久下真音さんの提供曲です。

杢代 すごく壮大ですよね。僕は最初に聴いたとき、まずイントロのアコギの音がすごく耳に残りました。久下さんに聞いたら、すごく試行錯誤をしてできあがった曲だそうで。2サビからDメロへの展開もすごくスケールが大きくて大好きで。音源、気に入って何度も聴いてます。

大倉 僕は「急に晴れたね」というひと言セリフがすごく耳に残りました。それが最初に聴いたときの印象だったかな。「因果応報アンチノミー」(2025年4月リリースのアルバム「核心触発イノベーション」収録)にも、最近の久下さんの曲にはセリフが入っていることが多いから、久下さん的に最近のこだわりの表現なのかな?と気になって。これは今度聞いてみようと思ってます。

大倉空人

大倉空人

大倉空人

大倉空人

──自分はやっぱり、「虚無虚無虚無虚無」のリピートが衝撃的に印象に残りました。

杢代 耳に残るポイントがいっぱいありますよね。

──「ニヒリズムプリズム」は梶井基次郎「蒼穹」と、春という季節を題材とした曲です。久下さんは、もとより梶井作品とゲンジブに通ずるものを見出していたと伺いました。

長野 久下さん、梶井基次郎の作品はゲンジブの世界観とマッチすると思ってくれていたそうで。僕は今回の曲をきっかけに「蒼穹」を知ったので、これを機に読んでみたんです。「蒼穹」は主人公が晩春の空を眺め、そこで感じたことが書かれている短編なんですが……「正直、僕はわからなかったです」と。そう正直に伝えたら、久下さんは「20年後とかに読み返すと、また感じることが変わってくるんだよ」とおっしゃっていて。

大倉 うん。

長野 でも、そう言われると確かにそうだなって。梶井基次郎の「檸檬」を10代の頃に読んだんですが、今読み返すと当時とは全然違う感覚で作品を受け止められる。その感覚ってすごくゲンジブらしいなということを、久下さんと話す中で感じました。ゲンジブの楽曲は多角的に構築されていると思っていて、聴く人や聴くタイミングによって捉え方が変わってくる。久下さんが梶井作品にゲンジブを重ねるのはそういうことかって、すごく合点がいった気がして。そう思うと「蒼穹」をテーマにするのも、今のゲンジブらしいというか。物語に漂う空気感は暗いけれど、ゲンジブはその暗さを“虚無感”と捉えて、Dメロからラストサビにかけて前向きに変えていく。僕らも「原因」という、マイナス面で使われることの多い言葉を肯定的に捉えて行動の核としているグループだから、伝えたいことに一貫性があるなと感じます。すごく今の自分たちを表している曲だなと思えたんです。

長野凌大

長野凌大

長野凌大

長野凌大

──素敵な解釈ですね。久下さんの表現のもと、ゲンジブにとっての大切なメッセージが刻まれた歌詞になっているかと思いますが、中でも心に留まったフレーズを挙げるなら?

長野 僕は、冒頭に出てくる「Sadしたくない」「さあどうしたい」です。これは、本当に久下さんが伝えたいことなんだろうなって。ゲンジブの音楽も、みんなのことを支えることはできるけど、何かを変えるための行動のきっかけ、“原因”はその人自身の中にある。「さあどうしたい」という問いかけが、この曲で発したいメッセージなんだろうなって。だからこのフレーズが好きです。

小泉 僕はDメロが好きです。理由は、一番「蒼穹」らしさを感じる描写だから。「あの雲は何処から来たの 何処へ消えてゆくの」って、何気ない景色の表現だけど、さっき凌大が言っていたように、このフレーズも何年か経って聴くと違った解釈が生まれたりするのかな、なんて思ったりしました。

滑舌との勝負

──とてもスピード感のあるボーカルワークも印象的ですが、レコーディングはいかがでしたか?

桜木 とにかくテンポが速かったです……!

小泉 耳で聴くより、実際に歌うほうが全然速かったよね。

小泉光咲

小泉光咲

小泉光咲

小泉光咲

杢代 本当に、滑舌との勝負でした。「虚無虚無虚無虚無」のパートはもちろん、メロとかも全然速くて。

桜木 僕が印象的だったのは1番Cメロの自分のパート「Me? me? 意味深 I my I myな野心」で。最初は普通に歌っていたのですが、久下さんが「ちょっと遊んでみて」と言ってくださって。いろいろ歌いながら試していく中でハマった表現だったんです。

長野 「Me? me?」でしゃくり上げるの、うますぎない?

桜木 楽しかった、歌ってて。

武藤 僕はサビの頭に「アイムソーリー バイバイ」というフレーズが来ることに「久下さん、すごいな」という気持ちになりました。「因果応報アンチノミー」のサビ頭は「おかえりエンジョイ」で、対比になっているとも受け取れるんですよ。

桜木 確かに!

武藤 この2単語で決めてくるのは……素敵だなと思いました。

武藤潤

武藤潤

武藤潤

武藤潤

嘘じゃないです。この顔をして終わります

──では、この楽曲の振付はどんな感じに?

長野 雅哉が苦労した振付です。

桜木 めちゃくちゃ難しいんですよ。最初は簡単そうに見えたんです。「今日いけるな」と思ってたんですけど……実際体を動かしてみると、1つひとつの手の向きだったり、とにかく動きが細かくて。頭が混乱するほどです。ぱっと見では、そんなに難しそうに見えないと思うんですけど……。

桜木雅哉

桜木雅哉

桜木雅哉

桜木雅哉

小泉 繊細な振付なんです。特に手がね。いろいろポーズが変わっていくので。

大倉 振付は「因果応報アンチノミー」と同様、KANUさんが制作してくれています。

吉澤 すごくクセになる振付だと思います。

大倉 最高にカッコいいよ。

杢代 終わり方がポイントなんです。

大倉 メンバーの表情に注目です。

吉澤 あまりアイドルがやらない顔をしていて……。

──気になりますね。

大倉 でも、変顔とかじゃないですよ。

──もしかして“虚無顔”ですか?

杢代 はい、正解です!

吉澤 答え出るの早すぎない?(笑)

──虚無顔で終わるんですか?

杢代 そうなんです、虚無顔で終わります。ちょっと潤くん、虚無顔披露して。

武藤 (即座に虚無顔を披露)

杢代 (満足げに)これです!

小泉 嘘じゃないです。みんなでこの顔をして終わります(笑)。

吉澤 口をポカンと開けて……曲の最後に誰もカメラ目線がいないということが起こる気がしています。

──完成したパフォーマンスについて、どう感じましたか?

吉澤 あ、でも。振付がすごく難しいので、虚無顔が簡単にできると言いますか。曲がスピーディで、いつの間にか終わる感覚なので、呆気にとられていたら自然と虚無顔になる(笑)。なので、顔を作ること自体は難しくないんです。

吉澤要人

吉澤要人

吉澤要人

吉澤要人

小泉 振り入れ中のみんなの虚無顔、めっちゃうまかったです(笑)。

杢代 潤くんは虚無顔をしなくていいところでも虚無顔をしてました。

武藤 (キリッとした顔つきで)マネしないでくださいね!

小泉 それくらい難しい振付だということですね。

──その分見応えがあるということですから、観る側の期待は膨らむばかりですね。

大倉 本当にそうだと思います。最高ですよ! KANUさんが“大正解”の素敵な振りを付けてくださいました。

メロスくらいの心の強さが必要

──“夏”にあたる2曲目が、太宰治「走れメロス」を題材とした「疾走」です。

大倉 「走れメロス」、教科書に載ってたね。学校で読んだなあ。

杢代 きっとたくさんの方が読んだことのある作品ですよね。この「疾走」に関しては、雅哉さんがいいアクセントになってるのかなと僕は思います。

桜木 ええ……?

長野 どういう反応?(笑)

杢代 イントロで彼が「疾レ!」と言ってるんですが、レコーディングでは全員がこのセリフを録ったんです。そこから、ディレクションの方が雅哉のテイクを選んだ。あと、1番のサビ前の「Ready Set…」も、雅哉が言ってる。だから、雅哉さんの“走り具合”がかなり鍵となっている曲なんじゃないかなって。

小泉 確かにね。

杢代 あと振付に関しては、「ニヒリズムプリズム」も難しいんですけど、この曲は本当にテンポが速くて……! 振り入れでは、みんな過去イチでドタバタしてたと思います(笑)。

杢代和人

杢代和人

杢代和人

杢代和人

小泉 ドタバタしてたねえ。

杢代 それも踏まえて、「疾走」はかなりダイナミックな曲になりました。タイトルの通り臨場感あふれる仕上がりになったし、作家さんは「Paradox Re:Write」や「遊戯的反逆ノススメ」を作ってくれたチームなんですが、その2曲とは違ったテンション感でパフォーマンスできるんじゃないかなと、楽しみでもあります。

──「疾走」は、エネルギーが必要な曲なんですね。

杢代 ハンパないと思います。

大倉 メロスくらいの心の強さが必要だよね。振り入れには、メロス並みの精神力で臨みました。僕は自分の振り覚えのスピードにけっこう自信があったんですけど、ちょっと折れかけるくらいだったから(笑)。

小泉 カウントをゆっくりにしても速いんですよ。

吉澤 そもそもの曲が速いからね(笑)。

大倉 初めてだよね? 僕らが原曲よりテンポ落として練習したの。

杢代 確かにそうだわ。

吉澤 でも本当に、「走れメロス」は小さい頃に通った方が多いと思うので。ストーリーを知っている方が多い分、聴いていただいても、歌詞を読んでいただいても、存分に楽しめる作品になっているんじゃないかなと思います。

──メロスになる皆さんを見られる日を楽しみにしています。

杢代 まさに!

小泉 メロスになります。なろう!