原因は自分にある。「文藝解体新書」インタビュー|“日本文学×四季”で誘う、ゲンジブ世界の深淵 (3/3)

夏目漱石をゲンジブとして表現できるって

──3曲目「愛無常」は夏目漱石「こころ」を題材とした秋の歌。竹縄航太さん提供によるこの曲は1980年代のR&Bを感じさせる、洒脱な1曲という印象です。

吉澤 「こころ」は過去に一度読んだことがあったのですが、今回改めて読み返してみました。わりと重ための三角関係を描いている作品ですし、「こころ」で曲を作るとなったら、もっとドロドロした雰囲気になるのかなと想像していたら、さっきおっしゃったようにかなりおしゃれな曲が届いて「すごいな」と驚いた記憶があります。でも、歌詞を読んでみると三角関係の捨てられない思いのようなものもしっかり感じられる。曲のテイストで重たさを見せているというよりも、歌詞の深さだったりで「こころ」を表現してるのかなと僕は感じました。素敵な1曲ができたなと思うし、「こころ」を……夏目漱石の作品をゲンジブとして表現できるって、僕的にはとても誇らしいことなので。完成して、すごくうれしい気持ちがあります。

杢代 聴きどころはどこだろうね? やっぱり舌打ちかな。

小泉 「因果応報アンチノミー」では要人が舌打ち担当でしたが、今回は凌大です。

長野 はい。今回はなぜか僕でした。

武藤 あと、要人の咳払いもあるよね。

吉澤 舌打ちパートがあったので、「僕が担当か」と思って舌打ちの準備をして行ったんですが、ディレクターの方に「今回は要人くんは違う」と言われてしまいました。咳払い担当でした(笑)。

大倉 最後の光咲の笑い声もいいよね。

左から大倉空人、桜木雅哉、小泉光咲。

左から大倉空人、桜木雅哉、小泉光咲。

小泉 レコーディングで、2パターンに絞ったうちのどちらのテイクにするか決めきれなくて、そこにいた制作陣みんなで投票したんですけど、それも半分に割れちゃったんです。なので、僕の最終判断でどちらを使ってもらうか決めました。この楽曲の意味を考えて「無理して笑っている感じの笑い声のほうがいいな」と思って。

大倉 へえ~! そうだったんだ。

VERBALさんになりたかった

──そして4曲目「Silence」は遠藤周作「沈黙」を題材とした冬の曲ですが、楽曲提供が☆Taku Takahashi(m-flo)さん。☆Takuさんとゲンジブが交わるとは……!と驚きました。

大倉 行け、凌大。お前の愛情伝えてくれよ。

長野 僕、m-floさんが大大大大大好きなんです。だからめっちゃうれしかったですし、「まさか受けてくれるなんて」という気持ちで……。☆Takuさんは「沈黙」を題材に曲を書いてくださいましたが、「沈黙」の物語を恋愛に置き換えて表現するのがすごいと思ったし、“m-flo×ラブソング”って、最高以外の何物でもないじゃないですか。トラックもカッコよすぎて、インストでも聴きたいくらいだし……。

小泉 カッコいいよねえ。

長野 あと、ゲンジブってこういうジャンルの曲をそんなにやってこなかったから、☆Takuさんが作った曲を僕らのような男性ボーカルで歌うとこうなるんだ!という発見もありました。メンバー的にも新境地を感じている人が多くて、それもすごくうれしいなと思います。ただ、歌が難しかったです……。

杢代大倉 本当に!

──メロパートもラップパートも細部まで凝った歌唱で、すごく新鮮な聴き心地でした。

小泉 まず第一に、キーが高いんです。

大倉 レコーディングのときって、基本的に僕は自分の歌割りを上から順になぞる形で進めていくんです。「沈黙」だと1番ラップ、1番Cメロ、2番ラップ、2番Bメロ、3番Cメロの順で録りたいんですが、今回に関してはサビが高すぎるので「サビを最後に歌わせてほしい」とお願いしました。それくらい難易度が高かったです。

──空人さんと潤さんの歌割りにある「信じたい自分がいる」の語尾の揺らし方がすごく特徴的で耳に残りますね。

大倉 あれ、めっちゃ難しいんですよ!

武藤 しかも、空人と僕で揺らす回数が違って。僕は4回なんですけど……。

武藤潤と吉澤要人。

武藤潤と吉澤要人。

大倉 僕は5回なんですよ。潤くん、お互いがんばろうね!

小泉 ほかにもパートによって細かく変わる部分があって、僕が歌う1番Bメロの語尾と、雅哉が歌う2番Bメロの語尾の音程がちょっと違っていたりね。

桜木 そうそう。

──細部までこだわり抜かれているんですね。ラストのサビ前「それとも僕が作った音?」で思いきり声を張り上げる光咲さんのボーカルも印象的でした。

小泉 レコーディングでひとしきり歌ってセレクトに参加したんですが、どれも微妙に音程が当たってないように聞こえて。自分的に納得がいかなくて、「もう1回歌いたい」と思ってやり直したんです。それくらい難しかったし、テイクを重ねたパートなんです。

──そうだったんですね。すごく聴き応えのある曲で、ライブで披露されるのも楽しみです。

桜木 この曲はヤバいですね……僕も楽しみです。

長野 ああ~っ、ラップしたかったなあ!

大倉 ラップパートは僕と要人なんですけどね、凌大もラップやりたかったみたいで。

杢代 めっちゃカッコいいもんね、ラップも。

大倉 ラップに関しても、☆Takuさんにフロウの乗せ方とかをメッセージで教えていただいたんですよ。

吉澤 1つひとつのフレーズを分解して教えてくださって。例えば僕のパートにある「ワイヤレス」という言葉だったら「ワイユアレス」っていう発音にすると聞こえやすいよ、VERBALさんのラップのような聞こえ方になるよ、とか。それを聞いてもなお難しくて、なかなか同じようには歌えないですが……。

──とても丁寧にディレクションしてくださったんですね。

長野 僕、VERBALさん大好きなんですよ。自分の中でトップ3に入るくらい好きなラッパーの方なので……。☆Takuさんのそのアドバイスが、グループチャットに送られてきたんです。自分へのアドバイスではないけど、スクショしてお気に入り登録してメモに貼り付けてますもん。本当にVERBALさんになりたかった。この歌割りを決めた人を恨んでます。

杢代和人と長野凌大。

杢代和人と長野凌大。

杢代 かわいそう。よくないぞ!

長野 いや、でも完成した音源を聴いたら、やっぱり空人と要人だなって。2人がしっかりとVERBALさんを感じさせるラップをしてました。

桜木 すごいピンポイントですけど、要人の「断線」のフロウがめっちゃ好きで。自分の中で、ここのインパクトがとにかく強い。

長野 わかる! そこ、VERBALさん感じるんだよなあ……!

吉澤 「断線」だけ何回もテイクを重ねたんですよ。めっちゃこだわりました。

武藤 ここね、ハモリも気持ちいい。

吉澤 たった4文字のフロウを変えるだけでこんなに変わるんだ!と思った部分ですね。

7人の物語はまだ書けない

──最後に、今作のテーマにちなんで……原因は自分にある。の物語として書き留めておきたい、7人の中の大切な記憶を挙げるなら、それはどんな瞬間ですか?

大倉 その記憶をもとに物語を書くとなったときの、キラキラとした題材ってことですよね? なんだろう。

杢代 やっぱり、「序破急」のリハで潤くんだけ先に飛び降りたあの瞬間……。

長野 どこがキラキラしてんねん。

吉澤 1ページで終わるよ。

武藤 「衝撃のラスト!」みたいな感じでね!

原因は自分にある。

原因は自分にある。

大倉 個人的には、僕らって話し合いで困難を乗り越えてきたグループだと思うんです。

小泉 イエス、イエス。

大倉 だから、みんなで真剣に話し合った渋谷川での時間か、山下公園での“小籠包会議”かなあ。

桜木 キラキラした記憶ではないけど、7人の思い出に刻まれてるのはそういう場面だよね。ここまでの道のりは簡単じゃなかったし、挫折も経験しての今だから。

大倉 デビューしてすぐに“空白の2年”(コロナ禍)があるからね。リモートで「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」の振り入れを行ったり……。

長野 それぞれが家でセルフ撮影した「嘘から始まる自称系」の動画とかね(笑)。

小泉 そう思うとさ、当時と比べて今の僕らはだいぶキラキラしてるよね。

吉澤 みんなでごはんに行く機会があるんですが、そういう場所で今みたいな昔の思い出話をしているときが、一番キラキラしてるかもね(笑)。

大倉 でも、わかんないけど……まだ書けないのかもしれない。書けるのは僕らがドームに立った瞬間かもしれないです。

長野 ああ、そうだね。未来。

杢代 ドームに立った瞬間に、今までの思い出がさらにキラキラと輝き出します!

武藤 ……です!

桜木 うわー。その時が来たら、ガチで泣いちゃうな……。

小泉 ライブ成り立たないのはやめてー。

一同 あはははは!

原因は自分にある。

原因は自分にある。

公演情報

LIVE TOUR 2026 輪廻の箱庭

  • 2026年3月17日(火)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年3月18日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年3月28日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年3月29日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年4月4日(土)大阪府 オリックス劇場
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2026年4月5日(日)大阪府 オリックス劇場
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年4月10日(金)福岡県 福岡サンパレス
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2026年4月11日(土)福岡県 福岡サンパレス
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2026年4月25日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2026年4月26日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
    [1st]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2nd]OPEN 17:00 / START 18:00

プロフィール

原因は自分にある。(ゲンインハジブンニアル)

大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人による7人組ダンスボーカルグループ。グループ名には「原因」という言葉を肯定的に捉え、自身が引き起こす事や作り出す物を“原因”として音楽シーンに新たなインパクトを与えたいという意味が込められている。2019年10月に1stシングル「原因は自分にある。」でCDデビューし、2021年1月に1stアルバム「多世界解釈」をリリース。2023年1月に3rdアルバム「無限の終わり」をリリースし、11月には神奈川・ぴあアリーナMMにて、初のアリーナワンマンライブ「因果律の逆転」を成功させた。2024年3月にコンセプトEP「仮定法のあなたへ」をリリース。11月にユニバーサルミュージックとのパートナーシップ締結を発表し、2025年4月に4thアルバム「核心触発イノベーション」を、10月に4thシングル「パラノイドランデブー」をリリース。2026年3月に、文学をコンセプトとするEP「文藝解体新書」をリリースする。