原因は自分にある。|「以呂波」で交錯する過去と現在 結成記念日に指し示す、7人にしか歩めないげんじぶの道

原因は自分にある。が、7月7日に新曲「以呂波 feat. fox capture plan」を配信リリースした。

リリース日の7月7日に結成2周年を迎えたげんじぶ。メモリアルなタイミングで発表された「以呂波」は、げんじぶ初のフィーチャリングアーティストとしてfox capture planを迎えた意欲作だ。

リリースに際し、音楽ナタリーではメンバー全員にインタビュー。「以呂波」に抱く思いや表現のポイントについて、さらには2周年を迎えたグループの歩みについて話を聞いた。“げんじぶ愛”にあふれるメンバーの会話は、言葉を重ねるごとに白熱。にぎやかな7人のやりとりを楽しんでほしい。

取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 須田卓馬

やっと和が来た!

──結成記念日の7月7日にリリースされた「以呂波 feat. fox capture plan」は、げんじぶにとって初のフィーチャリング楽曲です。

大倉空人 今回の曲がフィーチャリング楽曲だとスタッフさんから聞いたときは、ただただうれしかったです。こんなに素敵なアーティストさんが僕らとフィーチャリングしてくださるんだ!って。だからこそ、この曲に対してもっともっと向き合いたいという気持ちにもなりました。

武藤潤 制作にあたって改めてfox capture planさんの曲を聴かせてもらったんですけど、よく知っていた曲が実はfox capture planさんだった、みたいな発見もあったよね。

fox capture plan

──そうだったんですね。「以呂波」は作曲がfox capture planの岸本亮(Key)さん、作詞がげんじぶの楽曲ではおなじみの久下真音さん、編曲がfox capture planという布陣で作られた曲ですが、楽曲については最初にどういう印象を抱きましたか?

桜木雅哉 げんじぶらしさがありつつも新しい感じで、「また面白い曲が来たな」と思いました。

小泉光咲 僕は和の雰囲気をめちゃめちゃ感じました。歌詞に目を通さない段階で聴くと、「昔話を歌っているのかな?」と思っちゃうくらいで(笑)。いつもは現代社会について語るような歌詞だから、そこが不思議で……。

杢代和人 その感覚わかる。僕は最初に聴いたとき、「やっと和が来た!」と思いました。これまでの僕たちの曲は“今”を表現した歌詞やメロディが特徴で、昔っぽい和のコンセプトってやってこなかったから。だから新鮮でしたね。ただ、今どきの言葉を使ったいつもの歌詞も難しいけど、今回の歌詞はそれ以上に難しくて。どういうイントネーションなのかわからないフレーズもあって……。

──“現代文”を読んでいたのが、“古文”になったような感じ?

杢代 そうそう、そんな感覚でした。

武藤 僕はまず、タイトルが気になりました。「以呂波」(いろは)って、いろは歌の最初の3文字じゃないですか。で、曲のリリース日は僕たちの活動がスタートした“最初の日”なので、そういうつながりがあるのかなって。

──凌大さんはどうですか?

長野凌大 何よりもまず、「ムズい……」って思いました(笑)。

一同 わかるわかる(笑)。

長野凌大

長野 純粋に、歌うのが難しいなって。でも、同時にいい曲だなと思いました。気持ちよく流れていくメロディだけど、予想外なフレーズが来たり、ラップパートが入ったり。すごく面白い曲だなって。

吉澤要人 間奏のピアノがすごいよね。

長野 めちゃくちゃヤバい。

吉澤 あれは本当にすごいです。僕、曲をもらってから間奏だけ何回もリピートしました(笑)。すごくアガるんです。

大倉 僕はラップを担当しているから、「ラップが難しいな」と思った。「この曲のラップ、できるかな?」って、初めて思ってしまったくらい。ラップパートの前半は、フロウにはめられるビートがないんですよ。だからノリを作っていくのがすごく難しくて。聴けば聴くほど、掘れば掘るほど複雑だなと感じました。

内面的な部分は今も昔も変わらない

──歌詞を見ていくと「色は匂えども散って」「諸行無常 分かってんだ」など、いろは歌を想起させるフレーズがありつつ、今流行っている言葉も随所に使われていて、ハイブリッド具合がすごいですね。

武藤 「あたおかっぽい」とか。すごいミックス感ですよね。

杢代 僕、自分たちの曲で「あたおか」って歌うなんて思わなかったです。

一同 あはははは!

杢代 スタッフさんに「いいんですか?」って聞いちゃいましたもん(笑)。でもなんだか、可能性が広がった気がしました。昔の言葉と今どきの言葉をこれだけ混ぜても、キレイにげんじぶらしい音楽になるんだなって。

長野 これは僕の解釈なんですけど、現代と昔で環境は大きく違うけど、例えば「明日あれやるの面倒くさいなあ」みたいなことって、昔の人もきっと思ってたんだろうな、とか。「以呂波」って、そういう人間の内面的な部分は今も昔も変わらないということを問いかけている曲なんじゃないかなと思うんです。だから、昔と今を行き来するように言葉が混ざっていても、しっくりくるんじゃないかなと感じています。

大倉空人

大倉 あと、「現状でオッケーです 滑稽でトゲトゲ」というフレーズは、僕らのデビュー曲(「原因は自分にある。」)の「練習はOKです いやむしろ滑稽です」という部分と対になっているんですよ。「以呂波」を結成記念日に出すことの意味は、この部分の歌詞で理解できた気がしました。

杢代 それ以外にも、人それぞれに想像や解釈が広がりそうだよね。聴いているときの自分の感情によっても、歌詞の捉え方は変わると思う。「何が正解」みたいなことはないから、ファンの皆さんの感想も聞いてみたいなあと思います。

──言葉使いが巧みでさまざまな解釈が存在するいろは歌は、げんじぶの曲との親和性が高いですよね。これまでに皆さんが表現してきた世界観とすごくマッチするんだなと思いました。

武藤 タイムスリップして、昔の人と一緒に歌ってみたいです。

一同 あはははは。

ちょっと運命感じます

──「憎いね パンチラインの花が咲く それは段違い 枯れ木に花」と韻を踏む部分など、かなり印象に残る歌詞が満載ですけど、皆さんそれぞれに気に入っているフレーズはありますか?

吉澤 曲の入りの「肝心要のハイリスク」というところなんですけど……僕、要人っていう名前なんですけど、僕の名前も「肝心要」から来ているんです。ちょっと運命感じます。

長野 偶然? すごいね。

吉澤 そう、偶然使われていて。初めて聴いたときに「ここ、歌いたいな」と思ったんですよ。そうしたら本当に歌えることになって、うれしかったです。

小泉 僕はサビの最後の「本能の保存料 情報の超流動」って早口で歌うパートが、歌い方含めて新しいなと思います。

長野 僕もそこ! 歌、ありえないくらい難しいよね(笑)。

大倉 あとは「存在証明なんて要らない」という歌詞ですね。超カッコよくないですか? 「周囲の声は気にせず、俺はこの道一本で行く!」というような力強さがあって、僕はこの歌詞にすごく心を打たれました。

fox capture planとの雑談

──今回の曲は難しいというお話もありましたが、レコーディングはいかがでしたか?

小泉 全体的に、リズムをつかむのが難しかったです。速くなったり遅くなったり、テンポが頻繁に変わるので……。

長野 そう!

小泉 サビなんかはリズムに対して音をちょっと遅く取るので、特に苦労しました。演奏を意識するんじゃなくて、仮歌の歌い方をしっかり覚えて歌入れをしたんです。

桜木 僕が歌うのはラップパートと落ちサビなんですけど、それぞれにテンポが全然違って。ラップパートの中だけでもすごく動きがあったから苦戦しましたけど、スタッフさんに指摘してもらいながら歌い切りました。で、落ちサビは伴奏がピアノだけなので、歌の入りが難しいんです。今回の曲は、全体的にかなりがんばったと思います。

大倉 僕は光咲や潤のパートにつなぐ部分を歌うことが多かったので、次の人のことを思って歌いました。それはライブを特に意識してのことなんですけど、自分は声が大きいので、次に歌う人との熱量に差が出ないように……って。サビ前のパートだったらうまく盛り上げられるようにとかも考えていました。自分なりにではあるんですけどね。

武藤潤

武藤 僕はハモリも担当しているんですけど、そこは空人と同じように、メンバーのことをイメージして歌いました。ハモリの歌入れって、これまではメンバーそれぞれの雰囲気に合わせるのが難しかったんです。だけど今回は「光咲だったら淡い感じで……」とか、イメージをしっかりと形にできたと思っていて。よかったなと安心しています。

──それってすごく大切な意識ですよね。ちなみにレコーディング時、fox capture planさんからのアドバイスなどはあったんですか?

杢代 僕だけレコーディングが別日だったんですけど、そのときに岸本さんと運よくお会いできたんです。けど、お話をしたのは歌入れが終わってからだったので、技術的な話というよりも雑談をした感じでした。皆さん、げんじぶの楽曲を聴いてくださっていたみたいで。「7人の声がそれぞれに際立っていていいし、新しい音楽をやっている姿勢が刺さった」と言ってくれたのがうれしかったです。

──そうだったんですね。

杢代 で、そのときにレコーディングの様子を拝見させてもらったんですけど、いつものような打ち込みの曲とは違うすごい迫力が伝わってきて……生演奏で披露してみたいなって思いました。とても優しい方でした。