音楽ナタリー Power Push - Galileo Galilei
新作「クライマー」が描き出す3人の今
変化の可能性を秘めた曲を作れた喜び
──カップリング1曲目の「ボニーとクライド」も、「クライマー」同様ストレートなロックチューンになっています。このタイトルは、映画「俺たちに明日はない」のモデルになったボニー&クライドのことですか?
雄貴 そうなんですけど、その2人をテーマに作ったわけではなくて、ただ単に自分が作った歌詞のキャラクターに似ていたんです。それで……ほかのタイトルが思い付かなかった(笑)。この曲はもともと仁司がサビぐらいまでの尺のデモを作ってきていて。最初はもうちょっとドリーミーなインディーロックっぽい曲でした。
──完成版から想像すると、POP ETCの前身のThe Morning Bendersみたいなジャングリーでリバーブも効いているような……。
雄貴 そういう感じで。それがなんでストレートな曲になったかというと、1つは「クライマー」の雰囲気と合せるためで、もう1つ、最近「信じてる」や「壊れそうになる」のように仁司が書いた曲も増えているんですけど、俺の勝手な印象ではどれもがインディーっぽかったんです。それをちょっと壊してやろうと思って(笑)。それで仁司がいないときに初期のケイティ・ペリーみたいな、シンプルなアコギを生かした感じにして。そんなアレンジに変えて仁司に聴かせました。
──仁司さんはビックリしたんじゃないですか?
佐孝 (笑)。でも自分の場合、まだ曲を作ってる数が少なくて、どうしても似通ってしまう部分があるんです。だからメンバーが違う雰囲気の曲にアレンジしてくれるのは楽しいし、「こういうふうに変化するポテンシャルも持っている曲を作れたんだ」ってわかったんで、むしろうれしかったですね。そのデモをある人に聴かせたら「サビは女の人が歌ってそう」「洋楽っぽくて、車のCMで流れてそう」って言われて「そういえば雄貴、ケイティ・ペリーって言ってたな」って思い出したりして(笑)。
雄貴 でも、仁司のデモのBメロの展開がすごくいいなと思ったんで、そこは死守したんです。やっぱりミュージシャンとして尊敬しているから「仁司が気に入ってるだろうなというところはちゃんと生かす」って感覚はあって。そのBメロに和樹と自分で後半の展開を付けました。最近はセッションをしながら曲作りをしているんですけど「なんで前はあんなに飽きてたんだろう?」って思うぐらい、曲作りに飽きなくなってきてるんですよね。
Fleetwood Mac的職人気質を携えて
──距離が離れたことで、友達同士というよりミュージシャンとして集まっている感覚になってきている?
雄貴 そうですね。実際、仁司もほかのバンドのリミックスをやってるし、和樹もあるミュージシャンの曲作りに参加したことがあったし。最近はメンバーそれぞれがミュージシャンとして働いてるし、そこに誇りを持ちたいって思っていて。俺もほかのバンドのプロデュースをしてみたいですね。自分たちがクリスに教えてもらったことを誰かに伝えられたらな、って。仁司にしても、リミックスをやってみたことで思う部分があっただろうし、和樹が今後ほかのバンドでドラムを叩くのもいいと思うし。もうちょっと職人的なバンドになってもいいんじゃないかなって。最近はメンバーそれぞれがミュージシャン気質のバンドってあまりいないと思うんですよ。メインのソングライターだけがミュージシャンとしてプロデュース仕事をするって感じの人たちが多いですよね。でもそうではなくて、それぞれが“仕事”している感じがかっこいいなって。
──例えばFleetwood Macのような1970年代のバンドたちが持っていた、職人的な雰囲気のことですか?
雄貴 まさにそれです。それぞれがソングライターであり、仕事人的プレイヤーでもあるのがいいなと思うんですよ。僕個人としても菅野よう子さんの作品(Yuki Ozaki(from Galileo Galilei)名義のシングル「Trigger」)に参加したり……。
──livetuneさんの作品に参加したり。
雄貴 そうすることで「ほかの人の曲に尾崎雄貴が参加するとこうなるんだ」「佐孝仁司が、尾崎和樹が参加するとこうなるんだ」って知ってもらえるのって幸せなことだと思うので。
バンドの意義を守るための2つのこと
──続く「She」はインストゥルメンタルですが、これまでにもシングルのカップリングにインスト曲を収録してますよね。
雄貴 カップリングを選ぶときに「この曲カップリングにはもったいない」って話になることがよくあるんです。カップリングに収録してもあまり目立たないというか……。だから今回もカロリーの高いものを持ってくるんじゃなくて「和樹、ピアノで何か弾いてよ」ってポローンと弾いてもらった曲を持ってきたんです。
──「ポローン」というわりには作り込まれたトラックですが……。
雄貴 (笑)。何か映像を観ながら作ってたよね。
和樹 うん。映画の「A.I.」だったか「her / 世界でひとつの彼女」ですね。だからタイトルが「She」なんです。映像を観ているときに「こんな曲が流れていたらいいな」って考えながら作った曲ですね。
──和樹さんなりのサウンドトラックを作った感じですか。
雄貴 今までもインストは映像に合わせて作ることが多かったんですよ。今回のレコーディング中も和樹が「A.I.」のメインテーマをずっと弾いたりもしていて、それがすごくうるさかった(笑)。で、和樹が全部演奏して僕らはそれを聴かせてもらった感じです。
──じゃあ今回のシングルには雄貴さんの「クライマー」があって、仁司さんの「ボニーとクライド」があって、和樹さんの「She」があって。3人それぞれのカラーが出ているということですね。
雄貴 そうですね。でも、それぞれの曲が分離しているかというとそうでもないし、今後もこういう形にしていきたいです。やっぱり、Fleetwood Macの形態ってすごく好きで。このあいだボックスセットを買ったらその中にセッション中のスタジオの様子をそのまま録音した音源があって。それを聴いたとき「やっぱり職人集団がセッションして作るからああいう音になるんだな」と思ったんです。Galileo Galileiとしても、そこは大事にしたい。「1曲飛び抜けた曲ができたらいい」というのではなくて、「なんでバンドをやってるのか」ということを大切にしていくためにもそれぞれが曲を持ち寄ることと、セッションすることは続けていきたいんです。
- ニューシングル「クライマー」2015年12月9日発売 / SME Records
- 期間限定通常盤 [CD] 1400円 / SECL-1822
- 通常盤 [CD] 1300円 / SECL-1821
収録曲
- クライマー
- ボニーとクライド
- She
- クライマー(TV Ver.)(期間生産限定盤のみ収録)
Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)
尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B)、尾崎和樹(Dr)を中心に2007年に北海道・稚内にて結成。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録し、2013年10月にはPOP ETCのクリストファー・チュウをプロデューサーに迎えて制作された最新アルバム「ALARMS」を発表。邦楽ファンのみならず洋楽ファンからも支持を集める。2014年2月には東京・渋谷公会堂での初ホールワンマンを行い成功を収めた。同年10月にはクリストファー・チュウプロデュースのミニアルバム「See More Glass」を発表。2015年には3月に「恋の寿命」、6月に「嵐のあとで」という2枚のシングルを立て続けに発売し、10~11月にはPOP ETCも参加したツアー「"broken tower tour" 2015」を実施した。そして12月、表題曲がアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」のエンディングテーマに採用されているシングル「クライマー」をリリースする。また2016年春にはキャリア最大級の全国ツアーの開催も決定している。