メンバー全員で共同生活を送りながら、現実世界での生身の姿(3次元)とメタバースでのキャラクターの姿(2次元)、その両方の姿で活動を続ける5人組ダンス&ボーカルグループ・学芸大青春。これまで3次元の姿では顔の一部を隠してきた彼らが、9月23日に大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で行ったデビュー3周年記念ライブでついにその素顔を解禁した。
彼らはその勢いを形にするように、8月から5カ月連続で新曲を配信リリースする企画をスタート。第1弾シングル「アールビーワイ」を皮切りに、現在までに「DoDo tz Dotz」「グッデイ・バッデイ」の計3曲が発表されている。
音楽ナタリーではメンバー5人にインタビューを行い、3周年を迎えて顔出しを解禁した理由や、5カ月連続リリースに込めた思いを聞いた。
取材・文 / 杉山仁撮影 / 曽我美芽
自分たちの音楽を届けるためにできることは全部やる
──学芸大青春の皆さんは9月23日に大阪・グランキューブ大阪で行われた3周年記念ライブから本格的に3次元の姿でも顔出しで活動するようになりました。まずは初めて素顔でのライブを終えた感想を教えてもらえますか?
南優輝 最近のライブでは顔全体ではなく目元を隠していただけでしたけど、目を出したライブはこんなにも今までとは違うんだな、ということを実感しました。
──目元を隠した状態のライブでは、視界が悪いだけでなく色もわかりにくかったみたいですね。
優輝 そうなんです。自分たちが踊っているときの照明が何色かもわからないんですよ。
内田将綺 今回のライブで「ほかのアーティストさんって、こんなふうにライブをしてたんだ!」と初めて実感しました(笑)。
星野陽介 3周年記念ライブは今までの締めくくりでもありつつ、同時に顔を出すことで新しいスタートの舞台にもなったので、いろんな気持ちが混ざっていましたね。
──顔出し解禁については皆さんで繰り返し話し合って決めたそうですね。一番の決め手はなんだったんですか?
優輝 僕らの目標はずっと「僕たちの音楽を、青春を日本中に届ける」ということなんですけど、活動を通してまずは「音楽や内面から好きになってもらいたい」という思いがあって、顔を隠して活動を始めました。でも3年やってみた中で、なかなか思うようにいかない感覚もあったんです。僕らの一番の目標は「音楽を届けること」なので、僕らの音楽を広めるためにできることはもう全部やって全力を出していこう、という話になりました。
──もともとの目標を大切にした結果の決断なのですね。
優輝 この決断をするまでには本当にいろいろ話し合いました。その中では「最終的に音楽が届けられればいいから、一旦YouTuberやTikTokerのような活動に振り切ってもいいんじゃないか?」という話にまでなりました。一時期は全員が「YouTuberとしてがんばってみよう」という方向に気持ちが傾きかけたときもあって。でも最終的に、僕ら自身が好きなことを貫いている人間じゃないと、ほかの人に好きになってもらって応援してもらうことはできないと思ったので、自分たちの本当にやりたいことを貫くと決めたんです。
──話し合いの中でターニングポイントになるような瞬間はあったんですか?
将綺 個人的には「知名度を上げることを優先して、一旦音楽活動から離れよう」と話し合った次の日の蓮の発言が大きかったです。優輝はほかの仕事でその場にいられなかったんですけど、蓮が「一晩考えて、言いたいことがある」と僕ら3人に切り出して、「僕は音楽をやるために広島から出てきた。これから5年10年、音楽をやっていて売れなくても辛抱できるけど、もし信念を曲げてYouTuberになったら5年10年辛抱することはできない」と話してくれたんです。僕もボーカリストになりたくて愛知から東京に出てきたので、そこで目が覚めた気がしました。
陽介 僕らも考えすぎていたんですよね。今回の結論に導いてくれたのは蓮の発言でしたけど、それまでにみんなの言葉があって導き出された答えなので、改めてグループでよかったと思いました。
優輝 僕もこの結論はうれしかったです。でも話し合いの途中で「YouTuberに挑戦しよう」という話に傾きかけたときも、メンバーは誰も心から「それで行こう!」とはなっていなかった。だからこそ自分たちが本当にやりたい道に戻れたのかなと思いますね。
──全員、心の中でやりたいことは決まっていたんですね。
優輝 答えは見えていたけど、そこでやっと決意が固まったのかもしれないです。みんなでとことん話し合って覚悟を決めたので、顔出しライブ当日も楽しいと同時に「これから厳しい世界で戦っていくんだな」という気持ちにもなりました。顔を出していないときって、どこかでほかのアーティストさんとは別枠の存在だという意識があったんですけど、これからはたくさんあるボーイズグループの中に入って活動することにもなるので。
相沢勇仁 顔を出してパフォーマンスができたのはこれまで支えてきてくれたファンの皆さんやスタッフさんのおかげなので、感謝を改めて感じると同時に、パフォーマンスの部分も含めていろんな面でより高みを目指す必要があると思っています。
顔出ししたらふとした表情も気を抜けない
──顔出しでライブをしたことで、皆さんとの距離感がより縮まったように感じたファンの方も多かったようですね。
優輝 僕たちもこれまで以上にパフォーマンスに込めた思いや感情が伝わったという感覚はありました。目が見えている分、歌もダンスも視線で訴えかけられますし、それを見た相手の表情が変わるのも見えるので、今までよりも自分たちの音楽を伝えられたように思いました。
仲川蓮 3周年記念ライブなのに、初めてのライブのような感覚もあってすごく楽しかったです。
──目元が見えるようになると、パフォーマンスをするうえでも意識が変わりますか?
優輝 それはめちゃくちゃ変わります。
蓮 顔がブスになる瞬間がないように意識するようになりました(笑)。ふとしたときの表情も気を抜けないなって。
陽介 当日はパフォーマンスしながらふと「もう3年も経ったんだ」と感傷的になる瞬間がありました。学芸大青春としての活動は、準備期間も含めたらもう4年くらいになりますけど、4年の間にみんなで練習したことを思い出したりしながら、懐かしい曲も披露したので、思い出深いライブになったと思っています。
──今後の2次元の姿との向き合い方についてはどんなふうに考えていますか?
優輝 これまでと同じように2次元の姿でも活動していくとは思うんですけど、1つ違うのは、これまではほとんどの方が2次元の姿から僕らを知ってくれていたのに対して、これからは3次元の姿から知って、「2次元の姿もあるんだ」と思ってくれる方もより出てきてくれるであろうことですね。その人たちにとって、僕らの両方の姿がちゃんとリンクしていたらいいなと思います。初心を忘れてしまったら2次元の姿と乖離してしまうのかなとは思うので、ここまでの活動や今の気持ちは忘れずに活動していきたいですね。
──顔出し前の3次元の活動では言わばリミッターがかかっていた状態だと思うので、どちらの活動も全開の力でできるようになると活動の幅が広がりそうですね。
優輝 もちろん僕らに足りない部分を突きつけられるようなこともあると思うんです。これまでの僕らは、「3次元ではまだ本格的には活動していない」ということが言い訳のようになっていた部分もあると思うので。でも、そういうことも含めて経験して、成長していきたいと思っています。
陽介 2次元の姿は、ある意味では内面特化型の僕らの姿でもあると思うんです。僕らにとってはどっちも自分自身で、どっちにも興味を持ってほしいし、それが僕らのMVなどにも表われているので、「こういう表現の仕方もあるんだよ」「これが僕たちのスタイルだよ」ということがうまく伝わってくれたらいいなと思っています。
将綺 やっぱり2次元の姿が僕らをここまで連れてきてくれたと言っても過言ではないので、これからも両方の姿を大切にして活動していきたいです。顔出しをしないで活動を始めたからこそ、僕ら自身もお互いの人柄をよりわかっておく必要があって、「優輝はこういうところがよくて……」というふうにメンバーの人柄や魅力をすごく考えてきました。それもあって、お互いのことをよく知れたような気がします。
勇仁 ライブでも両方の姿がリンクしたパフォーマンスができるし。3次元でも表情を出してライブができるようになったことで、もっと幅が広がっていくのかなと思っています。まだ妄想ですけど、表情まで使ったうえでの2次元と3次元の融合というのは、もっと楽しくできるんじゃないかな。
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自分たちならではの色“ピアノダンス”