学芸大青春インタビュー|自分たち“らしさ”で心をつかむ「君と僕の唄」

2次元と3次元の両方の姿で活動している5人組ダンス&ボーカルグループ・学芸大青春が2ndミニアルバム「君と僕の唄」を完成させた。

今作にはピアノが得意な仲川蓮が作詞作曲を手がけた「予報通り、雨。」「Scene」や、ラップを得意とする南優輝が作詞した「Chilling Day」など、アーティストとしての進化を見せた8曲を収録。音楽ナタリーではメンバーを2人ずつに分けて、収録曲をそれぞれ2曲ずつ解説してもらった。またインタビューの最後ではアーティストデビュー3周年に向けた意気込みや、これまでを振り返って感じるグループの成長や変化を全員に聞いている。

取材・文 / 杉山仁撮影 / 鈴木友莉

M1.「Easy Peasy」
解説:内田将綺×仲川蓮

仲川蓮 英語詞のパートが多いので、実際にニューヨークに住んでいるキアラさんという方にメンバー全員でZoomを使って英会話レッスンを受けて、発音を練習しました。個人的には「Easy」の“sy”の発音が思っていたものとまったく違って、すごく苦労しました(笑)。

内田将綺 僕も今までの“なんちゃって英語”がバレました……。「Beautiful」という単語ですら、発音を直すのに10分ぐらいかかってしまって。英語をメインにした楽曲や、英語詞が際立つ楽曲は発音まで突き詰めていかないといけないな、と改めて感じましたね。

──歌詞は「2次元と3次元を行き来する」という皆さんらしい内容ですね。

将綺 そうですね。これまでは聴いた人が前向きになれるような曲が多かったですけど、この曲はより本質を捉えた「甘えていいよ」という内容で、もっと身近に寄り添うような楽曲になったと思います。

 (星野)陽介との掛け合いの部分では、陽介の歌い方を引き継ぐことを意識しました。歌う前に2人ですり合わせをして、サビに盛り上がりを付けて歌ったりもしています。

仲川蓮と内田将綺。

仲川蓮と内田将綺。

──この曲は今年の3月から5月にかけて開催された4th LIVE TOUR「PUMP ME UP!!」最終公演のエンドロールでいち早く流れていました。

 歌詞の意味を受け取って泣いてくれた方もいたみたいで、すごくうれしかったです。

M2.「My Side」
解説:星野陽介×南優輝

南優輝 「My Side」は今の時期にぴったりの曲になったと思います。春から新生活が始まって、皆さんいろいろと大変なこともあると思うので、そういうときに少しでも励ませる曲になったらいいなと思っていて。僕らが以前出した曲だと「スニーカー」にも近い、優しく背中を押すような曲になりました。僕はラップ部分を担当しているので、そのパートで曲に疾走感を乗せられるように意識しました。

──ラップの部分はフロウもかなり工夫したんじゃないですか?

優輝 デモではいつも作曲してくださった方の仮歌が乗っているんですけど、「優輝くんがイメージしたように変えてもらっていいよ」と言ってくださることも多いので、最近は「こういうラップが合いそうだな」という自分のアイデアを反映していただくことが増えているんです。この曲では「ラップを聴いた瞬間にスケボーに乗った少年が浮かんできた」と言ってもらえてすごくうれしかったです。

──「My Side」のラップを作るうえで、刺激を受けたアーティストはいましたか?

優輝 この曲を最初に聴いたとき、個人的にはchelmicoさんっぽさを感じたので、そこから何曲か楽曲を聴いてイメージを膨らませた部分はあるかもしれないです。

星野陽介 「My Side」はさわやかでありつつ、聴く人によっては励ましてくれる曲にも、勇気付けてくれる曲にも、落ち込んでいるときは寄り添う曲にもなるような、「たださわやかなだけの曲じゃないんだよ」というイメージを持っています。勇仁のBメロも、少しずつテンションが上がるような歌い方で、聴き手の背中を押すような雰囲気になっています。

星野陽介と南優輝。

星野陽介と南優輝。

──この曲は春のライブでもパフォーマンスされていましたが、曲終わりのダンスパートも含めてとても印象的でした。

陽介 あのダンスは5人で超苦戦しました。振り入れのときは絶望を感じました……。

優輝 (笑)。「観てくれている人もみんなで一体になれる曲にしたい」という話をして、クラップを多めに入れたり、TikTokに全国各地で撮影したダンス動画を投稿したりしました。TikTokだけでなく会場で実際に踊ってくれている方もいて、いつも以上にみんなと一緒にライブをしている感覚になれた曲です。

M3.「雲の切れ間」
解説:相沢勇仁×南優輝

優輝 僕はSIRUPさんが好きなんですけど、この曲はSIRUPさんも所属するSTYRISM INC.のイケガミキヨシさんが作ってくださったことがまずうれしくて、かなり気合いを入れて臨みました。ソロのパートが順番に続くので、自分らしさを出すにはどうすればいいんだろうと考えて。僕のラップではデモよりもテンポを遅らせてレイドバックしたラップにしたり、途中に吐息のようなブレスを入れたりしました。

相沢勇仁 この曲は「Osaka Boyz Rush !!!」(2021年末に大阪で開催されたライブイベント)の直後にレコーディングがあったので、ライブの感覚が残っていたんです。レコーディングブースでも目を閉じるとファンのみんなの顔が自然と浮かんできて、お客さんの目の前で歌っているような感覚になりました。1番のBメロは、特にファンのみんなのことを想像して歌いましたね。あと、イケガミさんのディレクションでは僕らに任せていただける部分も多く、Bメロの語尾の部分を自分なりにアレンジしてみたりして、一緒に楽曲を作らせていただいた感じがしてうれしかったです。

南優輝と相沢勇仁。

南優輝と相沢勇仁。

優輝 ひさしぶりにストレートな恋愛の曲でしたね。ただ、ほかのメンバーのパートではストレートに愛を歌っていると思うんですけど、僕のパートでは不安な気持ちや弱気な自分を歌っているので、そういうところも味わってもらえたらうれしいです。

M4.「予報通り、雨。- singing by Ren -」
解説:仲川蓮×星野陽介

──この曲は蓮さんが作詞作曲、そしてメインボーカルも担当している楽曲ですね。

 曲を作るにあたってプロデューサーからオーダーがあって、「ボカロみたいな曲を作ってほしい」と言われたんです。実際に自分で歌ってみて思ったんですけど、歌うのがめちゃくちゃ難しい曲になりました(笑)。この曲ではメロディも鼻歌で作ったりはせずに、ピアノで作ることで、人が歌いにくいものになるように計算しています。言葉数を多くしたので、息継ぎもなかなかできなくて(笑)。

陽介 最初に聴いたとき、「蓮って、このジャンルもいけるんだ!」と驚きました。僕も一時期歌い手さんの曲が好きでよく聴いたりしたんですけど、まさにそのイメージに合うボカロっぽい曲で、中毒性があってすごくいいと思いました。

仲川蓮と星野陽介。

仲川蓮と星野陽介。

──歌詞はどんなふうに考えたんですか?

 僕は広島から上京してきたんですけど、東京って何か夢を持って集まってくる人が多い場所ですよね。でも実際に暮らし始めると、意外とすぐ日常に慣れてしまう。非日常だったことにもすぐに慣れてしまうことってあるな、と。そういう少しモヤモヤとした気持ちを「予報通り、雨。」という言葉に込めました。僕が作詞作曲していることもあって、レコーディング中も「こういうハモリが欲しいな」と思い付いたらその場でコーラスを録ったり、歌っている途中に「もっとこういう音が欲しい」とアイデアが浮かんだら、その場で追加したりもしました。

M5.「僕らのNew Day - singing by Yuto -」
解説:相沢勇仁×南優輝

勇仁 この曲もイケガミさんに提供していただいたんですけど、ディスコファンクっぽい曲を歌うのは初めてだったので、大人な渋い楽曲に挑戦できることがうれしかったです。曲調に合わせて語尾をあえて短めに切ったり、これまでとはまた違う、新しい歌い方に挑戦した曲です。歌詞も“新しい扉を開いていく”という内容なので、「やれるだけやってみよう」と思って歌いました。同時にBメロだけはあえて切りすぎないようにしようとか、細かい部分にもこだわっています。コーラスでは蓮と陽介も参加してくれました。

優輝 トラックを聴いた時点では、勇仁がもっと一歩引いて歌うような雰囲気を想像していたんですけど、「ああ、こんなに勢いを乗せるような歌い方でも合うんだな!」と僕も勉強になりました。間奏に入っている勇仁のフェイクやブレスも合っていてよかったです。

相沢勇仁と南優輝。

相沢勇仁と南優輝。

M6.「ヨルガオ - singing by Masaki -」
解説:内田将綺×仲川蓮

将綺 この曲はレコーディング前にもらったときに、プロデューサーから「テーマは禁断の愛」と言われて、「自分の柄じゃねえ……!」と思ったのが最初の印象でした。

 ははははは。

──将綺さんはもっとまっすぐな性格のイメージですよね。禁断の愛に悩んだりする姿はあまり想像できないと言いますか。

将綺 はい、“Don't think, Feel”な人間なので……! 歌詞に出てくる「花の咲かないMoon flower」はヨルガオという花のことなんですけど、花言葉が「夜の思い出」「妖艶」なので、「ちょっと俺っぽくないし、大丈夫かな?」と思っていたんです。まずはいつものストレートな歌い方で歌ってみたら、イケガミさんに「ちょっと強いなあ」と言われてしまって。自分の中では今までの歌い方と比べても一番囁きに近いような、クールな雰囲気で歌っている、新しいことに挑戦した曲です。

内田将綺と仲川蓮。

内田将綺と仲川蓮。

 いつもの将綺とは違う歌が聴ける曲で、淡々と歌う雰囲気が曲の物語を伝えるナレーションみたいですね。聴き心地がいい大人っぽい曲で、淡々と歌っていることでトラックも耳に入ってくる雰囲気が印象的でした。曲を通してハイハットが刻むリズムが変わっていく曲で、トラックと歌とが混ざり合っていい仕上がりになっていると思いました。