音楽ナタリー Power Push - 藤田麻衣子
CDデビュー10周年を機に振り返る 私のターニングポイント
最近は男性を許しちゃってる
──今回リリースされたベスト盤は、これまでの全シングル曲に新曲を加えたDISC 1と人気曲をまとめたDISC 2で構成されています。さらに初回限定盤にはカップリング曲をまとめたDISC 3も付いてくるという、まさに10年間を総ざらいする内容で。
どうしても1枚じゃ収まりきらないってことで(笑)。今回の47都道府県ツアーでリクエストを募ったことでもわかったんですけど、シングルやそのカップリング以外にも人気の高い曲がいっぱいあるんですよ。私としても本当はシングルにしたかったって思うくらい思い入れの強い曲も多いので、それらをまとめられたのはうれしいですね。
──ここに並んだ楽曲たちを通して、ご自身のソングライティングや作詞に関して変化を感じたりもします?
歌詞に関しては、あるかもしれないですね。詞を書いてから曲を作るスタイルはずっと変わってないんですけど、以前は男性を責める内容がすごく多かったんです。「私はこんなに苦しいのに!」「わかってよ!」みたいな(笑)。今もなるべくリアルな女心を書きたいからそういう部分を出そうとは思ってるんですけど、最近はちょっと男性を許しちゃってるところがあるんですよね。それが自分としてはちょっと残念。「大人になってる!」みたいな(笑)。
──それは年齢を重ねて、無償の愛とか母性とかそういうところが見え始めてきているということなのでは?
そうなんです、見えてきちゃってるんですよー。
──その言い方(笑)。納得してなさそうですね。
いや、恋愛としてはそういうほうがラクだとは思うんですよ。20代の頃って、例えば傷付くとわかっていても相手のことを知りたがってしまうところがあったけど、今は傷付くことがわかっていたら見てみないふりをする。それが幸せになる方法だともわかっているから。でもホントは逃げないで責めたいし、攻めたいんですよねえ(笑)。
──恋愛は刺激的であってほしいと藤田さんは考えているんでしょうね。波風立たない、落ち着いた恋愛では面白くないというか。
ああ、そうですね。今も昔もときめきは大事かも。恋愛以外においても、例えば誰かのライブや舞台を観たとしても、ときめくかどうかが自分にとってはすごく重要だったりするので。で、昔はきっとそのときめきのすべてを男性に求めていたところがあったのかもしれないですね。だから責めてしまうっていう。でも今は男性以外にもときめくことが見つかってきた。そういうことなのかもしれないです(笑)。
──はい(笑)。
あともう1つ、過去を振り返る曲が増えてきた印象もあります。昔は「目の前の一瞬を5分の歌にする」っていう書き方をしていたんですけど、最近は「あのときこんな恋をしてたけど今はこうだね」みたいなことを1曲の中で書くっていうか。そこは書き方の変化かなって思いますね。
──それも年齢を重ねてきたからこそなんでしょうね。
はい。実際に振り返ることができる過去が増えてきたっていうことなんだと思います。で、それを考える余裕も出てきたのかな。10年前はホントに目の前のことしか見えていない感じだったと思うので。
何歳になっても自分の歌を自然に歌っていたい
──そういう変化はありつつも、藤田さんの曲はときを経てもまったく色褪せないと思うんですよ。それはきっと常に普遍的なことを描いてきているからでしょうね。
私は題材として大きなことが歌えないんですよね。常に日常の中に詰まっている言葉しか書けないので。あんまり進化してないのかも(笑)。
──そこが魅力だと思いますけどね。歌詞の言葉選びにしても、流行りの言葉を使ったりしないからいつまでも古臭くならないですし。
ああ、確かにそういうところは気にするかもしれないですね。デビュー当初から“ケータイ”っていう言葉を使うかどうかすごく考えたりしていたんですよ。時代の流れが早いから、10年後にその言葉が残っているかわからないですもんね。自分自身、何歳になっても自分の歌を自然に歌っていたいなっていう気持ちは今も昔も強いので。
──では、ご自身の歌に関しての変化はどう感じます?
今回マスタリングのときにすべての曲を聴いたんですけど、10年前の最初の数曲は本当に声が違うなって思いました。まだ力もすごく入っているし、なんか警戒心でいっぱいっていうか(笑)。
──何に対しての警戒なんですか?(笑)
なんだろう、当時はまだ年齢的にもとがっていたと思うし、逆にいろんなことに対しての不安や心配もたくさんあったんだと思うんですよね。自分の声だから気付く変化かもしれないですけど、最近の歌はただただ安心して歌っているのがわかるんですよ。
──それは先ほどおっしゃっていた環境の変化も関係しているのかもしれないですね。
そうだと思います。写真とか見ても、10年前はもう人相が違う感じがしますもん(笑)。ホントに恥ずかしいです。今はだいぶいろんなところが柔らかく、丸くなってきた気がしますね。
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- ベストアルバム「10th Anniversary Best」 / 2016年11月23日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD3枚組+DVD] / 6264円 / VIZL-1057
- 通常盤 [CD2枚組] / 3564円 / VICL-64657~8
DISC 1
- 恋に落ちて
- この白い雪と
- 横顔 ~わたしの知らない桜~
- あなたは幸せになる
- 瞬間
- 泣いても 泣いても
- ねぇ
- 高鳴る
- 手紙 ~愛するあなたへ~
- 涙が止まらないのは
- この恋のストーリー
- おぼろ月
- Only One
- 君よ進め
- 君に恋したあの日から
DISC 2
- 水風船
- 運命の人
- 二人の彼
- 今でもあなたが
- 君が手を伸ばす先に
- 二度目の恋
- 蛍
- SUPERMOON
- 私らしく
- 宝物
- つぼみ
- オレンジ
- one way
- 恋煩い
- 伝えたい言葉
- you
DISC 3(※初回限定盤のみ)
- 雨音
- 金魚すくい
- 忘れないで
- 各駅停車
- Girls Shopping
- 安らげる場所
- 戸惑い
- 花火
- きっと
- 好きになるとどうして
- ギブ・ミー・サンドバッグ
- 忘れた恋の始め方
- 可愛くなりたいと思った日
- このまま電車に乗って
- あなたに恋して
初回限定盤DVD収録内容
Music Video
- 二度目の恋
- 瞬間
- 泣いても 泣いても
- ねぇ
- 高鳴る
- 手紙 ~愛するあなたへ~
- 涙が止まらないのは
- この恋のストーリー
- おぼろ月
- one way
- you
Best Live Movie
- 高鳴る(LIVE TOUR 2013 ~高鳴る~ @NHKホール)
- one way(LIVE TOUR 2014-2015 ~one way~ @中野サンプラザ ホール)
- おぼろ月(弦楽四重奏 Live Tour 2015 @EXシアター六本木)
- つぼみ(弾き語りLIVE @日本武道館)
- 恋に落ちて(弾き語りLIVE @日本武道館)
ライブ情報
藤田麻衣子10周年巡演海外専場
- 2016年12月1日(木)中国 広州 TU凸空間
- 2016年12月3日(土)中国 上海 The Mixing Room
- 2016年12月4日(日)中国 北京 雍和宮糖果三層
藤田麻衣子 BEST ALBUM TOUR ~10th Anniversary~
- 2017年1月12日(木)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年1月17日(火)大阪府 なんばHatch
- 2017年1月18日(水)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年1月26日(木)東京都 Zepp Tokyo
藤田麻衣子オーケストラコンサート
- 2017年4月1日(土)東京都 すみだトリフォニーホール
藤田麻衣子(フジタマイコ)
愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブでファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2015年12月にメジャー2作目となるアルバム「恋愛小説」を発売している。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。