FLOWが1月13日に新作CD「新世界」をリリースする。アニメ「シャドウバース」のオープニングテーマとして約3年ぶりのアニメタイアップとなった表題曲は、疾走感と高揚感に満ちたFLOW節全開の王道アニソンだ。音楽ナタリーではメンバー5人にインタビューを行い、今作の制作についてはもちろん、昨年6月に所属レーベルをソニー・ミュージック内のKi/oon MusicからSACRA MUSICに移籍した意図について、さらには現在のアニソンシーンに対する思いについても語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ
“神”から「仲間だ」と言ってもらった
──まず、昨年6月にSACRA MUSICへレーベルを移籍されたことについて伺います。これはバンドの見せ方として「我々は“アニソンバンド”として活動していきますよ」という宣言みたいなことなのでしょうか?
TAKE(G) FLOWは今年で活動19年目に入ったんですけど、17年前(2004年)に「NARUTO -ナルト-」のオープニングテーマ「GO!!!」でアニメとの関わりが始まって、その出会いがバンドを世界へ連れて行ってくれたり、より多くの人に知ってもらえるようになったんです。バンドの軸が徐々にアニメ界隈に寄ってきている中で、アニメとの関係性も深いSACRA MUSICであれば海外のアニメイベントなどとのパイプが作りやすいというのもあるので、今後活動していくうえで最良であろう選択をした感じですね。
──なるほど。対外的な見せ方というよりは、動きやすさを重視しての移籍であると。
TAKE そうですね。
──そのお話を聞いて腑に落ちました。今さら「FLOWはロックバンドなのかアニソンバンドなのか」を気にしている人もいなくなっていると思いますし、わざわざ対外的に宣言する必要はないんじゃないかと感じていたので。
TAKE 「ロックバンドなのかアニソンバンドなのか」については、すごく言われてきた歴史があるんですよ。
GOT'S(B) どこへ行っても「よその人だ」って言われてね(笑)。
TAKE アニメのフェスに行ったら「ロック畑の人が来た」と言われ、ロックフェスに行くと「テレビの人が来た」と言われ(笑)。
──そういう疎外感みたいなものも、さすがにもうなくなったのでは?
IWASAKI(Dr) 疎外感というほどのものはないかな。
TAKE 去年の9月にJAM Project先輩の20周年を祝う配信フェス(9月19日に神奈川・ぴあアリーナMMで行われた無観客ライブ「JAM Project 20th Anniversary Special JAM FES.〈JAPAN ANISONG MEETING FESTIVAL〉」)があって、GRANRODEO先輩、angela先輩、ALI PROJECT先輩といったそうそうたるメンツの中に我々も呼んでいただいたんです。そのときに、影山ヒロノブさんや遠藤正明さんといった“アニソンの神”たちが、僕らに「仲間だ」と言ってくれたんですよ。そういう意味では、アニソンを歌い続けている側の人たちに認めてもらえた感じはしましたね。
──JAM Projectさんに仲間と認めてもらえるなんて、ある種のゴールじゃないですか。それ以上はないというか。
TAKE 本当にそうですね(笑)。レジェンドだしフロンティア、アニソンを世界に広めた第一人者の皆さんなので。
FLOWのようなバンドはほかにいなかった
──今は“アニソンシンガー”や“アニソンバンド”と呼ばれるアーティストはたくさんいて、そこを目指してがんばっている若いミュージシャンも多いと思います。でも、FLOWの皆さんはそうなりたいと思ってやってきたわけではないですよね。
GOT'S うん、結果そうなったっていうね。
──かつて、アニソンアーティストは“目指すもの”ではなかったと思うんですが、それを世間一般に「目指していいものなんだ」と思わせた一因として、FLOWの存在は大きいと思います。
KEIGO(Vo) そうなんですかね?
IWASAKI そんな大それたものではないと思いますけど(笑)。
GOT'S でも、珍しかったというのはあるかな。
KEIGO うちらがやり出したときは確かに珍しかったね。
GOT'S 「アニメ縛り」という冠を付けたライブをやったり、アニソンに限定したベスト盤を出したり。そういうことをやっている人はほかにいなかったから。もしかしたら、そういうものを見て「目指そう」と思ってくれた人もいるのかもしれないし、そうであるならうれしいですけどね。
TAKE 僕は、この話に関しては時代の変遷があると思っていて。1990年代以前のアニソンは専門の作家がアニメ作品に対して当て書きをして、影山さんたちのような専門のシンガーが歌うものだった。それが90年代に入ってから、普通にJ-POPアーティストとして自作曲で活動している人、たとえばTM NETWORKさんとかがアニメに楽曲を提供することが始まって、2000年前後からはそこにロックバンドを起用するムーブメントが起こったわけです。
──L'Arc-en-Cielに代表されるような。
TAKE はい。それで、「子供時代に初めて触れたロックサウンドがアニメソングだった」みたいな世代が出てきた。それこそKANA-BOONさんとかは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんに憧れて「自分も『NARUTO』のオープニング曲をやりたい」みたいな思いでデビューされたらしいですし。そうやって時代の流れの中でレイヤードされてきた歴史があると思います。
──めちゃくちゃ冷静に分析されているんですね。
TAKE けっこうよく聞かれるんで(笑)。
アニソンシーンを引っ張ってきたとは思っていない
──アニソンシーンにおいて、自分たちが兄貴的な存在になってきたと感じることはないですか?
GOT'S どうだろ。俺ら、そんなに兄貴肌じゃないもんね(笑)。
TAKE よく20代くらいのバンドが「学園祭で『GO!!!』をコピーしました」みたいに言ってくれたりはするけどね。
KEIGO 意外に自分たちはそこまで自覚がなかったりして。アニメ縛りのライブをやったときが一番腹をくくったタイミングだったんですけど、それまではあくまで内々の戦いというか。自分たちがロックバンドなのかアニソンバンドなのかみたいに言われることに違和感もあったし、「アニソンシーンを引っ張ってきた」みたいな思いはないですね。結果としてそういうふうに言っていただけるのはうれしいですけど。
──今回SACRA MUSICへ移籍したこともありますし、「今後はアニソンシーンを背負っていってやろう」みたいな思いは?
GOT'S 一切ないです(笑)。
KEIGO シーンを背負うというよりは、自分たちの武器の1つとして磨いていきたい。
TAKE 以前、アニメ「NARUTO」の監督から「アニメのクリエイターは作品を作って届けることしかできないけど、皆さんは生で歌をお客さんに直接届けられる。それをやり続けて、伝えていってほしい」と言われたことがあって。それはある種、背負わせてもらったものとして、自分たちにできることではあるかな。
──なるほど。シーンのために後輩たちへ何かを伝えるというよりも、自分たちのやるべきことをやっていくだけだと。
TAKE (キメ顔で)「背中を見せてやる」という感じですね。
一同 (笑)。
IWASAKI そもそも自分たちが現役で第一線にいたい気持ちがありますしね。
──となると、若い人たちに対しては“後輩”というよりも“仲間”という意識のほうが強い?
TAKE むしろライバルですよ。1クールごとのアニメ主題歌の数には限りがあるじゃないですか。その少ないパイを互いに奪い合うわけですから。
KOHSHI(Vo) 逆に僕らのほうが不利だったりしますからね。「FLOWは長いことやってるんだから、もういいでしょ」みたいな(笑)。
次のページ »
FLOWが一番FLOWをやりたかった