FIVE NEW OLDがニューアルバムの制作で得たものは?新しい自分と出会う旅へ出発

FIVE NEW OLDのニューアルバム「Departure : My New Me」が9月21日にリリースされた。

アルバムタイトルには「出発」「リスナーが“新たな自分”になる物語のターニングポイントを彩る主題歌(サントラ)」「自分をアップデート」という思いが込められている。本作には既発曲である三菱ケミカルのテレビCMソング「Rhythm of Your Heart」、NFTアート発アニメ「Zombie Zoo Keepers」テーマソング「Nowhere」のほか、2023年1月放送スタートのテレビアニメ「HIGH CARD」のオープニング主題歌「Trickster」やアルバムタイトルに冠された楽曲「My New Me」など全13曲を収録。これまでの英詞中心の楽曲とは異なり日本語詞がメインの楽曲が多く収められ、アルバムタイトルに表れているように、新たなFIVE NEW OLDの魅力が詰まった作品になっている。

音楽ナタリーでは本作のリリースに伴いメンバー全員にインタビュー。FIVE NEW OLDというバンドの魅力やアルバムの制作エピソードについて聞いた。

取材・文 / 酒匂里奈撮影 / 後藤壮太郎

音楽に対してのスタンスはすごく自由

──メンバー全員で音楽ナタリーに登場いただくのは初ということで、まずはFIVE NEW OLDがどんなバンドなのかということを聞いていけたらと思います。皆さんは自由で軽やかというか「こうあるべき」という固定観念がない印象があって。

HIROSHI(Vo, G) 確かにおっしゃっていただいたように音楽に対してのスタンスはすごく自由です。活動当初はパンクバンドで、そこからジャズやR&Bの要素を取り入れた今のスタイルに変わっていったので。周りから見たら一貫性がないと思われてるかもしれないけど、自分たちとしてはいい音楽をリスナーと分かち合いたいと思っているだけです。

WATARU(G, Key) 僕はFIVE NEW OLDの結成前からHIROSHIと一緒に別のバンドを組んでいて、洋楽を好きになったのはHIROSHIから教えてもらったことがきっかけなんです。HIROSHIはキュレーションすることが好きだし、人に何かを薦めることがうまくて。そんなHIROSHIから影響を受けて、僕も自然とリスナーにいい音楽を聴いてもらってその人の世界が広がったらいいよねという思いを抱くようになりました。

──バンドコンセプトは「ONE MORE DRIP(日常にアロマオイルの様な彩りを)」ですが、どんな思いでこの言葉を掲げているのでしょうか?

HIROSHI 自分たちの音楽を聴いてくれる人の何気ない日常が、映画のワンシーンのようにドラマチックになってほしいという思いがあって。「こんな日常の彩り方もあるよ」ということを常に模索しています。

WATARU あと、コンセプトではないですがこのバンドの特徴で言うと、基本的にHIROSHIを中心人物として動いていますね。

FIVE NEW OLD

FIVE NEW OLD

──HIROSHIさんがバンドの中心人物というのは、メンバー全員の共通認識なんでしょうか?

HAYATO(Dr) そうですね。HIROSHIがゼロイチでやりたい音楽を生み出す立場じゃないとバンドの色が薄まってしまうと思っていて。プライベートでメンバーが集まっているときはHIROSHI中心じゃないこともあるんですけど、音楽に関してはHIROSHIが先頭に立ってます。

──HIROSHIさんが中心人物であることがFIVE NEW OLDらしさやバンドの土台を作っているという。

HAYATO HIROSHIが作った土台にメンバー個々のアイデアが乗っかっていってFIVE NEW OLDの音楽ができあがるんですけど、基本的にはHIROSHIが核ですね。

HIROSHI 僕としてはみんなの力で中心にしてもらってる感じですね。自分がすべての物事がわかっているかというとそうではないので。曲に乗せる思いや届けたいテーマは僕が考えて、それをみんなでブラッシュアップしていってます。

──具体的な制作のやり方としては、最初にHIROSHIさんがデモを作ってそれを皆さんに渡す形ですか?

HIROSHI 最初はそうでしたね。「MUSIC WARDROBE」(2021年4月にリリースされたアルバム)のときからそうなんですけど、最近は自分の家にメンバーが来てくれて、その横で自分が作業を進めていて。僕があーだこーだ言ったことをWATARUがうまくアウトプットしてくれることもあるし、SHUNくんとHAYATOがその音を聴いて意見をくれることもあって。自分が作業しているときにメンバーがそばにいてくれるだけでも、生まれてくるものが違うんですよね。

HIROSHI(Vo, G)

HIROSHI(Vo, G)

SHUN(B) 前にサビのメロディを考えるタイミングで、HIROSHIくんが何回歌ってもなかなかいいメロディが出てこなくて、困った彼がWATARUくんに「歌って!」とマイクを渡したことがあったんです。かと思ったらすぐにマイクを奪い返して歌ったら「いいのできた!」と言っていたので、そばにいるだけでいいっていうのはたぶんそういうことなんじゃないかなと。

HIROSHI 自分だけでメロディを考えているとわからなくなってくるんですよね。だから一旦WATARUに歌ってもらって。急に言われるからWATARUは「え?」みたいな顔してましたけど(笑)。

WATARU 中にはホンマに俺が歌ったメロディが採用された成功例もあったけどな(笑)。

──ちなみに今回のアルバム「Departure : My New Me」に成功例は含まれてます?

WATARU 「Nowhere」がそうですね。まるっと採用というよりは僕が歌ったメロディが元になったというくらいですけどね。

──なるほど。こうしてお話を伺ってても思いますしライブやSNSからも感じますけど、皆さん本当に仲がいいですよね。

HIROSHI そうですね。僕の財産です。

──楽曲制作中に揉めたりぶつかったりすることはないんですか?

HIROSHI もちろん意見が合わない瞬間もあるんですけど、目的地を確認し合う感じなので、「相手を論破してやる!」みたいなことは起きないですね。

SHUN メンバー全員が「お互い納得したい」「相手が何を思っているかを知りたい」という気持ちが前提にあるので、議論にはなるけど喧嘩にはならないんですよね。

WATARU 曲はDAWで作っているので、データのやりとりの繰り返しでDAWが爆発しそうになることはありますけどね(笑)。

HAYATO 基本はHIROSHIがやりたいことを尊重しつつ、道を外れてるようなときにはSHUNくんやWATARUや俺が「そっち行ったら車に轢かれちゃうよ!」みたいな感じで止めることはあります。

HAYATO(Dr)

HAYATO(Dr)

自分たちがどんな人間なのか知ってほしい

──冒頭で話していた音楽性の変化について、個人的にはバンドとして健全なことだと思いますが、「あのバンド、昔と変わっちゃったね」というような声が聞こえてくることもあるのではないかと思います。そういった音楽性の変化や周りからの声についてはどう思いますか?

HIROSHI 音楽性について言われるのはどうも思わないですね。音楽的なスタイルが変わろうと自分たちの根本は変わってないので。ほかのことで「そう思われてるのか」と気になることはあるんですけどね。あとは単純に僕がめちゃくちゃ飽き性なのでいろんなことをやりたくなっちゃうんですよね。そんな僕からしてみれば、12年もこのバンドが続いていることが奇跡です。

──ちなみにほかの部分で言われて気になることというのは?

HIROSHI ボーカルの動きが気持ち悪いとか……。

WATARU 気にしてるんだ(笑)。

HAYATO かわいいな(笑)。

──皆さんエゴサーチはしますか?

HIROSHI しますします。

WATARU 監視してます。

HAYATO 暇さえあればしてます。

HIROSHI これはぜひ書いていただきたいんですけど、叩けるもんなら叩けって思ってます! ……いやまあ実際目にしたらへこむんですけどね(笑)。でも世の中でアンチ的な意見を言う人って1%と言われているので、そういう人が現れることは当然だと思ってます。

WATARU 叩いてほしいというか、叩く人がもっと出てくるくらいFIVE NEW OLDが広まってほしいよね。

WATARU(G, Key)

WATARU(G, Key)

HIROSHI そう! 積極的に叩いてほしいという意味ではないです(笑)。FIVE NEW OLDを知っている人が増えた証拠が欲しいという。

──今はSNSが普及していますが、パーソナルな部分や思想をファンに見せることに対してはどう考えていますか?

HIROSHI  自分たちは極々普通の人間ですが、それがバンドのイメージと乖離があると思っていた時期はありますね。「Departure : My New Me」は結成10周年をコロナ禍で迎えて、みんな30歳を超えて、ひと区切りついてから出すアルバムということで、今なら僕たちがどういう人間で何を考えているのかを見せてもいいんじゃないかと思って作ったんです。これまでは主に英語で歌詞を書いていたんですけど、今回のアルバムで日本語詞が多くなったのも、自分たちの思いをよりわかりやすく届けたいという思いからですね。