ENTHとSPARK!!SOUND!!SHOW!!が3月4日にスプリットアルバム「#ワイタイスカッ」をリリースした。
ライブでの競演により親交を深めてきた2組。スプリットアルバムには、彼らが架空のチーム・白虎隊として共作した表題曲や、それぞれの新曲が収録されている。音楽ナタリーではENTHとSPARK!!SOUND!!SHOW!!のメンバー全員にインタビュー。2組がお互いに抱いていた印象やスプリットアルバムに込めたメッセージを聞いた。
取材・文 / 天野史彬 撮影 / 後藤壮太郎
魂の住所が近い
──SPARK!!SOUND!!SHOW!!とENTHの関係は、どういったところから始まったんですか?
タナカユーキ(Vo, G / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) 昔対バンして、気付いたら仲ようなってました。
Naoki(G, Cho / ENTH) 「HENT」(2017年に発売されたENTHの1stアルバム)のときに初めて現体制のスサシに会ったんだよね。
takumi(Dr, Cho / ENTH) そうそう、俺らのツアーで、大阪でツーマンをやって。
daipon(Vo, B / ENTH) それまではそこまでガッツリと一緒に打ち上げもやっていなかったのに、そこで急にお互いスパークして。スサシにタクマが入ってから、より距離が近付いた感じがありますね。むしろタクマが入っていなかったら、仲良くなってなかったかもしれないっす(笑)。
──(笑)。タクマさんの影響力は絶大なんですね。
daipon タクマは外交的で、社交性抜群なんですよ。最初からタメ口で「俺、スサシ入ったんでよろしくー」みたいな。こっちは「え?」って(笑)。
──正直、2組ともそんなに簡単に他人と仲良くならなそうなバンドだなと思うんですけど、何がこの2組を結び付けているのだと思いますか?
タクマ(Syn, G / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) ENTHは同級生だったら絶対に仲良くなっているメンツって感じで。何をやっていても仲はいいだろうし、それはこれからも一緒だと思います。
タナカ ENTHはネアカなんですよ。
チヨ(B, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) うちら根暗(笑)。さっきdaiponが「タクマの社交性が」って言っていましたけど、ENTHは3人共めちゃくちゃ社交性高いですから。そのおかげで仲良くさせてもらっている感じはありますね。あと、ENTHはホンマにハイセンス野郎って感じなんで。音楽もファッションもキャラ立ちも、普通のバンドにはないものを持っているし、カッコいいバンドやなって思います。3人共めっちゃ音楽好きなのが伝わってくるのが何より重要ですね。
タナカ ENTHは音楽もライブもカッコいいから「こいつらとやっといたら俺らも出世できるな」っていうのもありました(笑)。
チヨ でも本当にENTHと対バンしてから調子よくなりましたからね。
daipon 僕らアゲチンっす。
Naoki お客さんは上手に混ざっているよね。スサシとやったことで、こっちのお客さんにもいい影響は出ている感じがします。
daipon そもそも「ENTHのお客さんはスサシ好きだろうな」と思ってブッキングしたしな。
タナカ ENTHと対バンしたときに、めちゃくちゃ物販も回って。楽しくて金になるって最高やなって思いましたね。
──ENTHから見て、スサシはどうですか。
takumi さっきチヨが「ENTHは音楽好きなのが伝わってくる」って言ってくれましたけど、ぶっちゃけ俺はそんなに音楽を掘ったりしないんですよ。逆にスサシはめちゃくちゃ掘っているし、カッコいいなって思います。
daipon スサシこそハイセンス野郎っていう感じですね。
Naoki 魂の住所が近い感じがするよね。
タナカ (イチローに向かって)魂の住所、どこにあるの?
イチロー(Dr, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) 7丁目くらい?
──(笑)。2組の音楽を求めている人は、何を求めてライブに来ているんだと思いますか?
タナカ パーティですね。パーのティです。
daipon 刺激的なパーティ感ね。最速で楽しくなりたい、気持ちよくなりたいっていう。
タナカ あと速い2ビートで踊るみたいなことだけではない、“ダンス”という感覚。そういうものを求めて来ているんじゃないですかね。そもそも俺らだけで完結しているものではあるんですけど、そこに客も付いてきてくれたら、パーティになるから。1人で踊っていても楽しいのに、それが2人、3人……と数が増えていくことで、もっと楽しくなる。“楽しい”のかけ算で脳汁があふれる、みたいな(笑)。そのマックスヤバい状態、みたいな感じだと思います、俺らのライブは。
中学校の休み時間みたいな曲
──スプリットの表題曲「#ワイタイスカッ」は2組の共作……というか、作詞作曲の名義は白虎隊ですけど、曲はどのようして作っていったんですか?
daipon 曲自体は、最初にタクマとユーキと俺で「どんな曲にしようか?」って相談して。世代だし、175RとSHAKALABBITSの「STAND BY YOU!!」みたいな感じかなとか話してたんですけど(笑)。
タナカ ENTHとスサシのお互いの旨味を合体させると、最終的にSum 41の「Fatlip」の感じが近いんじゃねえ?ということになって。あの曲はSum 41がBeastie BoysとMetallicaをかけ合わせた感じの曲だって聞いたことがあったんで、それっぽい方向で考えていったんです。ENTHはリフがいいので、リフを考えてもらって、うちらでそこに肉付けしていって。
──歌詞は異様にドキュメント性が高いですよね。「絶賛!遅刻中ダトちゃん / このレコーディングも遅れて来て / まじナマやってんじゃねーぞ」って……。
タナカ そこはそうなっちゃったんですよね。本来は、その部分の歌詞はdaiponと一緒に考える予定やったんですけど。
daipon 俺が遅刻してしまって。10分くらいだっけ?
──本当はどのくらい遅刻したんですか?
daipon 2時間半くらいです。スタジオが名古屋だったら間に合ったんですけどね……。
──(笑)。そもそも、このスサシとENTHを語るうえで出てくる“白虎隊”というキーワードは、いったいなんなんですか?
タナカ 一緒にツアーを回ったときに、この2組でよく白虎隊っていうコントをやっていたんですよ。それで動画撮って、SNSに上げたりしていて。
daipon 「#ワイタイスカッ」は、本当にそのふざけた動画のノリとかから派生してできた曲っていう感じですね。深い何かがあるというよりは、本当にスサシとENTHのドキュメントが曲になっている感じ。あのコントのふざけたノリが、そのまま出るのがリアルかなって思ったんで。
チヨ 最初は確か俺がサングラスをかけていたんですよ。で、うちのPAが熊本の出店で買った金色のブリンブリンを付けていて、「これ組み合わせたらもう、地元のヤンキーやん」ってなって。そこからコントが始まったんですよね。
daipon そもそも白虎隊っていうネーミングは、俺の地元にいた暴走族の名前なんです。だからこの曲、ちょっと地元の先輩に知られたら怖いなって(笑)。
チヨ 本当にワルノリというか、中学校の休み時間みたいな曲なんですよね。仲のいい連中で集まって、くだらない話をずっと続けている……その感じがそのまま出てる。
daipon そうだね。だから歌詞も、「その言葉、誰がわかるの?」っていうような、人に見せるためのワードじゃないようなものがいっぱい出てくる(笑)。「壱にシンナー弐にシンナー」っていう歌詞もそうだし。俺の友達の友達が、とある愛知県の田舎で暴走族をやっているんですけど……1人なんですよ。
一同 (笑)。
daipon もともとはちゃんと人がいたらしいんですけど、時代の流れで人が抜けていってしまって、最終的に1人になってしまった暴走族で。でも、集会はやっているらしくて。後輩や友達を呼んで、団地の中庭で、「壱にシンナー弐にシンナー」って言っているらしいんですよね。
チヨ ホンマにドキュメントの曲やな(笑)。
──中学生のワルノリのようなものをずっと保ち続けていくことに、この2組は人生を賭けている、ということなんですかね。
daipon というか、ずっと密着したらずっとそれ、という感じなんですよね(笑)。
──いきなり「ワイタイスカッ」と言われて、意味がわかる人は、そういないと思うんですよね。曲を聴いて歌詞を見ればわかるんですけど。そういう自分たちの中だけで通じるスラング的な言葉を使っている点も、ワルノリ感があっていいなと思うんですよね。
タナカ 自分たちの中だけで通用する言葉が好きということではないんですけど、そういう言葉が持つグルーヴはあるのかなって。「ワイタイスカッ」っていうのは、曲を流しながら仮歌を録っているときにdaiponが拾ってくれた言葉なんですけど、そもそも俺も、KICK THE CAN CREWの「イツナロウバ」とか好きだったんで。あれは「It's not over」のネイティブ発音をカタカナにしているわけじゃないですか。ああいう感じでいいなと思って。
チヨ 「ワイタイスカッってなんやろう?」って調べてくれたらもう勝ちですからね。
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