瑛人の2ndアルバム「1 OR 8」が3月16日にリリースされた。
昨年1月に1stアルバム「すっからかん」をリリース後、約1年2カ月の月日を経て発表された本作には、映画「トムとジェリー」日本語吹替版主題歌の「ピース オブ ケーク」や「ぶらり途中下車の旅」テーマソング「風旅」といったシングル曲に新曲を加えた全11曲を収録。前作同様、瑛人の人柄の魅力があふれた作品でありつつ、“イチかバチか”というタイトルの通り、これまでにない挑戦も多く見られるアルバムとなっている。
私生活では結婚という大きな変化もあった瑛人だが、本作の制作においては、前作からどのような変化があったのか。アルバム収録曲について詳しく話を聞いた。
取材 / 臼杵成晃文 / 三浦良純撮影 / YURIE PEPE
プレッシャーから解放されて
──まずはご結婚おめでとうございます(参照:瑛人、幼馴染の女性との結婚を発表)。
ありがとうございます!
──結婚して何か変わりましたか?
うーん、なんか就職したみたいな気分ですね。俺はこれまでずっと自由に生きてきましたけど、結婚してからは社会人みたいに「やらなくちゃいけない」ことがあるなって。あと家で昼寝とかして起きると、嫁さんが料理している音が聞こえてきて、肉じゃがとかカレーの匂いとかしてくることがあるんですよ。そうすると、なんか懐かしい気持ちが湧いてきたり、母ちゃんのこと思い出したりして涙出そうになります。
──いいですね。
でもまあ、また1人に戻るかもしれないし(笑)。
──いやいや(笑)。
うそうそ(笑)。冗談です。
──昨年1月1日に1stアルバム「すっからかん」をリリースしたあと、シングルの配信、ライブやメディア出演など休むことなく活動を続けていましたが、2ndアルバム「1 OR 8」を作ろうという話はどのあたりから?
日本各地で掃除をするという企画「瑛人の日本列島風旅~クリーン計画~」を終えて「風旅」を作った頃ですね(参照:瑛人の新曲が「ぶらり途中下車の旅」テーマソングに)。当時スタッフの間では「曲がたくさん完成してからアルバムにするのが一番いいんじゃないの?」って意見と「いや、今アルバムを出した方がいい」って意見の両方があったんですけど、俺は「やりましょう」と言って、作ることにして。制作に入ったのは10月くらい。御徒町(凧)さん、ギタリストの長﨑真吾さんの3人で千葉のスタジオに1週間泊まり込むのを2回くらいやって完成させました。
──昨年2月のツアーで「掃除」を初披露していたので(参照:瑛人の初ワンマンツアーがピースフルに終幕!すべてを詰め込んだ大切な曲たちをしっかりファンに届ける)、今回のアルバムに関しては長期的に作り込んでいったのかと思いましたが、そういうわけではなく、さあ作ろうとスイッチを入れて制作を開始したんですね。
そうなんです。トライしてみようって話になって。
──アルバム全体の設計図をまず作るのではなく、徒然に曲を作っていく形だったんですか?
そうです。出したかったけど、今回のアルバムにはあえて入れなかった曲もあるくらい、スムーズに曲ができました。全部で20曲くらいですね。
──合宿に入る段階では、そんなにポンポン曲が出てこないかもしれない可能性もあったわけですよね。
全然ありました。合宿初日はとりあえずキャッチボールして、夜はみんなで焼肉食べるだけだったから、一緒にアルバムを制作してたディレクターさんは「大丈夫か……」って不安だったらしいです。でも24時間一緒だから、アイデアが浮かんだらすぐにアレンジしてもらえるし、夜中でもスタジオを使えるし。御徒町さんは詩の人、真吾さんは音楽の人で、ずっと制作に携わっている2人だから、近くにいると自分も曲作りのマインドになるんですよ。悩みがあってもすぐ助けてもらえるから捗る、捗る。
──プレッシャーはなかった?
3人で合宿する前に山梨でも合宿したんですけど、そのときはいろんな人がいて、プレッシャーというか、作らなきゃいけないという思いが強くて。そこで2曲くらい作ったんですけど、結局アルバムには入らなかったんです。でも今回、最初の1週間は3人だけで作業させてくれたので、プレッシャーから解放されて、3人で笑いながら一緒に作れて。めちゃめちゃ楽しかったですね。行けるもんならまた行きたい。そんな合宿でした。
勝負感のある曲が欲しい
──収録曲について詳しく話をお聞きしたいと思いますが、1曲目の「HEADS UP!!」は、サウンドアプローチにしても歌詞にしても、これまでにはないテイストで驚きました。どういう気分で作ったんですか?
この曲はアルバムが完成する寸前までなかったんですよ。アルバム制作中、ディレクターさんから「アルバムっていうのは世界観が大事」「『1 OR 8』というからには勝負感のある曲が欲しい」と言われたことにずっと向き合えなくて悩みました。そのあとで「今までの瑛人にはない部分を見せたらいんじゃないかな」って提案をもらって、それで挑戦して、ギリギリでできたのが「HEADS UP!!」です。ヘッズアップっていうのはポーカーの用語で、1対1の勝負のこと。この言葉は御徒町さんから教えてもらって、「勝負感のある曲」というテーマにピッタリだなと。面白いのが、ポーカーに「デッドマンズ・ハンド」っていう手札の組み合わせがあって。これはポーカーをプレイしている最中に死んでしまった伝説的なポーカープレイヤーがそのときに持っていた組み合わせなんですけど、そのカードってなんだと思います? これがエースと8のツーペアなんですよ。それを知って「もう来てるじゃん、俺もうデッドマンズ・ハンド持ってるよ!」って盛り上がって。ずっと首を傾げていたディレクターさんも「アルバムの世界観が開けた気がします」と言ってくれました。
──瑛人さんの楽曲としては意外な、グランジロックのような雰囲気もあるサウンドアプローチですね。
これはMichael Kanekoさんが「瑛人に似合うんじゃない?」ってプロデュースしてくれて。最初にアレンジが送られてきたときは俺もビックリしましたね。Michael Kanekoさんはこの曲と「ピース オブ ケーク」「大正解」「はひふへほ」をプロデュースしてくれました。
──いきなりガツンとカマされる感じがあって、いい1曲目だと思います。続く2曲目の「ピース オブ ケイク」は映画「トムとジェリー」の日本語吹替版主題歌として書き下ろされた楽曲です。
「すっからかん」を作ったあと、主題歌を担当することが決まって、去年の1月3日くらいに作り始めました。トムとジェリーみたいによくケンカするけど仲良しみたいなテーマの曲ですね。
──瑛人さんは「あげようか? このクッキーにはチョコがついてるから」みたいな何気ないフレーズを書くのが本当に上手だなと。
おお。これはグアム旅行したときに、一緒に行った人がクッキーとかお菓子をめっちゃ買ってて。俺はめんどくさいから買ってなかったんですけど、お腹空いたときに「くださいよ」って言って。それで「嫌だよ」って断られるのを10分くらいやってたんです。そのやり取りをそのまま入れただけですね。
──こういうちょっと引っかかるフレーズが随所にあるのが瑛人さんの詞の面白さだと思いますね。
よっしゃ!
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24年間生きてきて、愛がどうとかよくわかってなかった