著作権等管理事業を行う株式会社NexToneが主催する「NexTone Award 2022」の受賞作品が発表され、瑛人の「香水」がGold Medalに輝いた。「NexTone Award」はNexToneが著作権管理を行っている作品のうち、前年において著作権使用料分配額上位3作品の著作者および音楽出版社を顕彰するアワード。瑛人のGold Medal受賞を記念して、4月14日にはニコニコ生放送にて特別番組「NexTone Award 2022」が東京・ハレスタから生配信された。この特集では瑛人と、「香水」アカペラカバー動画が話題となった四千頭身がゲスト出演した特別番組の模様をレポートする。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 藤木裕之
「NexTone Award」とは
株式会社NexToneで著作権を管理している作品のうち、前年において著作権使用料分配額上位3作品の著作者および音楽出版社を顕彰するアワード。また音楽業界内外で話題を創出したプロジェクトやアーティストを顕彰する特別賞を選出する。Gold Medal、Silver Medal、Bronze Medalの各賞には記念メダルを、特別賞には記念の楯を贈呈するほか、Gold Medal受賞者(著作者)の手形鋳造プレートを制作して株式会社NexToneのロビーに展示し、その栄誉を讃える。
「NexTone Award 2022」受賞作品・プロジェクト
<受賞作品・アーティスト>
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Gold Medal
作品名:「香水」
著作者:8s
音楽出版社:有限会社SETSUNA INTERNATIONAL
アーティスト:瑛人
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Silver Medal
作品名:「うっせぇわ」
著作者:syudou
音楽出版社:ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社
アーティスト:Ado
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Bronze Medal
作品名:「猫」
著作者:あいみょん
音楽出版社:株式会社SDR
アーティスト:DISH//
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特別賞
アーティスト:ホロライブプロダクション
特別番組「NexTone Award 2022」レポート
“二度目まして”くらい
司会進行を務める星野卓也がまずゲストの四千頭身を呼び込むと、石橋遼大がさっそくボケを交えた自己紹介を披露するなど現場は早くもアットホームなムードに包まれる。瑛人にゆかりのあるゲストとして呼ばれたことについて後藤拓実が「ゆかり……? まあ“二度目まして”くらいなんですけど。ゆかりのある人たちが根こそぎ忙しかったのでは?」と笑わせ、都築拓紀は四千頭身として公開した「香水」のカバー動画がバズった件に触れ「無限にお世話になりましたから」と平身低頭で感謝の言葉を述べていた。
「NexTone Award 2022」についての解説のあと、満を持して本日の“主役”たる瑛人が呼び込まれると、いつも通りのにこやかな表情をたたえて低姿勢に登場した瑛人に、後藤から「ちゃんと話すのは初めてだから、(動画のことを)本当は怒っている可能性がまだ消えていない」との疑念が投げかけられる。これに対して瑛人は「まったく怒ってないです!」と朗らかに返すも、「(怒っているふりの)タメが短い」とのツッコミが入るなど、2組の対面は和やかな雰囲気で幕を開けたのだった。
ヒットから受賞までにタイムラグがある理由
受賞を受けてのコメントを求められた瑛人は、開口一番「けっこう時差があったので、びっくりした気持ちでいっぱいですね」と述べ、「香水」の大ヒットから本アワード受賞までのタイムラグに言及した。実際、楽曲リリース自体は2019年4月で、チャートを席巻し始めたのは2020年の春頃だ。単純計算で約2年が経過しての受賞となったわけだが、その理由について後藤は「(「香水」のヒットを)知るのが遅かったんじゃない?」と独自の推論を展開。都築も「2020年に(賞を)あげ忘れたから『やべえ!』って?」と論を重ねた。
これについて、改めて星野から解説がなされる。実際に著作物が利用された際、NexTone社においてその使用料が決定され、著作者あるいは委託者へ分配されるまでに早くても9カ月以上かかるのだという。つまり2020年にヒットした楽曲の場合はその著作権使用料の分配時期がおおむね2021年以降となるため、結果的に2022年(2021年1~12月分配分が対象)にようやく受賞の運びとなったわけだ。瑛人本人としても、実感として2021年くらいから「見たこともない額」が振り込まれるようになったのだという。
さらに星野から「著作権についてどのくらい理解しているか」という質問が飛ぶと、瑛人は「実は著作権のことはまったく知らなかったんです」と話し、「香水」を発表した当初は著作権管理業務をどこにも委託していなかったのだと告白。「『香水』がみんなに広まるようになって初めて『登録しなきゃ』って。最初は事務所にもレーベルにも入っていなかったので、(所属してから)大人の方たちに『急げ急げ!』と言われて(NexToneに)お願いしたんです」と明かした。それを聞いた四千頭身は仰天。都築と石橋が「最初はフリー素材だったんだ?」と目を丸くする一方、後藤は「登録が遅れたのにGold Medalってことですよね」と改めて畏敬の念をあらわにした。
続いて番組は、メダル贈呈式および手形の鋳造式へ突入。新型コロナウイルス対策としてプレゼンターからの手渡しは行われず、瑛人が自らメダルを手に取って首にかけるといういささかシュールな光景が繰り広げられたのち、手形用の土台フレームがスタジオに運び込まれた。瑛人はそこに右手を置いて体重を乗せていくが、土台はあまり沈み込んでいかない。四千頭身からも懸念の声が上がる中、おもむろに瑛人が右手を土台から離すと、そこにはわずかに手の形が判別できる程度の凹みが出現。これを見た後藤らは、一斉に「うっすー!」のユニゾンを響かせた。「手形っていうか、手跡じゃん!」とは都築の弁だ。
やむを得ず瑛人は禁じ手にも思える“二度押し”に踏みきって窮地を脱し、鋳造式はどうにか終了。そして歴代の受賞者による手形が飾られているNexTone社のロビーの様子がモニタに映し出されると、そこには草野マサムネ(スピッツ)や野田洋次郎(RADWIMPS)、スキマスイッチらの手形がずらり。それらを目にした四千頭身からは、口々に「濃い!」「みんな力強いなー」といった感嘆の言葉が飛び交った。
四千頭身の「香水」カバーは「面白いわけがない」
式典に続いては、インタビューのコーナーへ。星野および四千頭身からさまざまな質問が瑛人に投げかけられた。「頭がおかしくなりそうだった」と語る「香水」ヒット後に一変した生活についてや、「自分の楽しみだけで音楽をやってきたが、きちんと人に届けられる歌を歌いたいと思うようになった」といった心境の変化までが瑛人の口から訥々と語られていく。その一方で後藤からは「『香水』はモイネロが登場曲に使っているくらいすごい曲」といった、福岡ソフトバンクホークスでセットアッパーやクローザーを務めるキューバ人左腕を引き合いに出す一風変わった称賛の言葉も聞かれた。
四千頭身による「香水」のカバー動画についても話がおよぶと、後藤は「あれを『面白い』と言われるのは心外。僕はJUJUさんとかと同じ気持ちで真摯にカバーしただけなんで、面白いわけがないんですよ」と熱弁。さらにスタジオではこの動画を鑑賞しながらざっくばらんに感想を語り合うコメンタリー企画も実施され、後藤の独特なボーカリゼーションを改めて味わった瑛人からは「なんか、(歌うというより)しゃべってるみたい」と率直な感慨が述べられる。また都築はこの動画でアカペラ伴奏を手がけたよかろうもんに触れ、「このよかろうもんさん(のコーラスワーク)に乗せて瑛人さんに歌ってほしい」との願望を語った。
そして番組もいよいよ大詰め。最後は瑛人によるミニライブで幕が引かれる。四千頭身と星野はスタジオから退き、カメラ前には瑛人とサポートギタリストの2人だけが鎮座。当初は瑛人も椅子に座って歌う予定だったが、屋外からガラス越しに収録の様子を見守るファンが見やすいようにとの配慮から、瑛人は急きょスタンディングでのパフォーマンスを選択した。このスタイルで代表曲の「香水」と、3月にリリースしたばかりの2ndアルバム「1 OR 8」から「今、一番歌いたい歌」と語る「最愛」の2曲を歌唱。朴訥とした温かみのあるボーカルで言葉とメロディを丁寧に紡ぎ、スタジオ前に集まったファンやニコ生視聴者たちの耳と心をそっと包み込んでいった。
フンコロガシのように
番組終了後には、ニコニコプレミアム会員限定コーナーとしてアフタートークが行われた。ここでは「8クエスチョン」と題し、瑛人に8つの質問がぶつけられていく。しかしながら事前に質問内容が用意されていたわけではなく、すべて四千頭身によるアドリブ質問で進行。その結果、「今スタジオで流れているBGMは『真・三國無双』の曲ですよね?」といったボケ質問から「ブレイクしてからの一番高額な買い物は?」「結婚相手とはどれくらい付き合っていたんですか?」「お子さんは何人欲しい?」といったプライベートな内容、さらに「好きなラッパーは?」のような音楽系のものまでさまざまな話題が飛び出し、瑛人はその1つひとつに真剣に向き合って回答を重ねていった。
すべての演目を終えて瑛人は「『香水』という歌を作ってよかった、と思う日でした」と述懐。「まだまだ、フンコロガシのようにじわじわと回りながら俺はずっと歌っているので、どうかチェックよろしくお願いします」と結んだ。
※2022年5月19日~6月18日までの期間限定でアーカイブ映像を公開中。
プロフィール
瑛人(エイト)
1997年生まれのシンガーソングライター。男3人兄弟の末っ子として神奈川・横浜に生まれ、野球が好きな少年時代を過ごす。高校卒業後、同世代の友人から刺激を受けて音楽学校に入学。19歳から曲を書き始め、2019年4月に配信した初の音源「香水」が2020年春、SNS経由で大ヒットし、同年末に「NHK紅白歌合戦」に出場する。2021年1月1日に1stアルバム「すっからかん」を発表後、映画「トムとジェリー」日本語吹替版主題歌「ピース オブ ケーク」や日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」のテーマソング「風旅」などのシングルを立て続けに配信。シングル曲に新曲を加えた2ndアルバム「1 OR 8」を2022年3月にリリースした。
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四千頭身(ヨンセントウシン)
ワタナベコメディスクール22期生として出会った都築拓紀、後藤拓実、石橋遼大が結成し、2016年にデビュー。同年12月放送のフジテレビ系「新しい波24」でテレビ初出演を果たし、脱力系の漫才で注目を浴びる。2018年3月には自身初となる冠ラジオ番組「四千ミルク」がスタートし、翌4月には「オールナイトニッポン0(ZERO)」の木曜パーソナリティにも抜擢された。2020年4月には初冠テレビ番組「おしえて!四千頭身」が北陸朝日放送ほかにてスタート。ほかにも「ネタパレ」や「有吉の壁」といったバラエティ番組にも多数出演中。賞レースでは2019年に「第40回ABCお笑いグランプリ」決勝、「M-1グランプリ2019」準決勝に進出している。
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