「私はここにいるからね。大丈夫だよ」
──8月11日には早くも新曲「花のように」の配信がスタートしました。この曲は、マルイの「HANABI FLOWERS」キャンペーンソングに使われていますね。
実はこの曲、今年の2月くらいにはすでにあったんですよ。「ミュージックステーション」の「Spotlight」というYouTube企画で「片っぽ」を歌った日の帰りにスタジオに入ってセッションして。そこでできたんです。歌詞も含めて、自分の心の中をさらけ出すというか、素のeillらしい曲になっていると思います。
──歌詞には、“自分にしか咲かすことのできない花があるはずだ”というメッセージが込められています。
そうですね。“自分色に咲き誇ろう”という思いがテーマになっています。私はけっこう周りのことを気にしてしまうタイプなんですよ。メジャーに来たけど、ほかの人に実力が全然追いついていないんじゃないかとか、みんなすごく輝いているのに自分には色がないような気がするとか、そんなことを考えて悩んだ時期があったんです。なので、そういった思いを歌詞として残しておこうかなって。
──ご自身の中にある弱い部分をさらけ出しつつも、しっかりポジティブな着地点になっているのがeillさんらしいところでもあるのかなと。
そうですね。曲としては最後までつぼみのままで花が咲いてはいないんですけど、でも自分の心が前を向いていればいつか絶対に咲き誇ることができるんじゃないかっていう曲になっているので。この曲を自分自身で聴くと、「あーがんばらなきゃな!」ってすごく思えるんですよ。迷っていることがあっても、「絶対できるような気がする!」って思えるというか。そういう意味では自分に対しての応援歌になっているイメージがあります。
──歌詞で描かれているように、嫌われることを恐れて自分らしさを隠してしまう人はきっと多いはずなので、リスナーにとっても間違いなく背中を押してくれる曲になっていると思います。
変わること、前に進むことって怖いじゃないですか。でも、自分の人生は自分のためのものだと思うので、この曲が勇気を持って一歩を踏み出すきっかけになってくれたら、私としてもすごくうれしいですね。
──ラストのパートには「私はここにいるから」という1行があります。そこには、リスナーに寄り添ってくれているeillさんの思いがギュッと込められているようにも感じました。
はい。この曲は自分に対して歌うことを大事にしようと思って作ったんですけど、その1行だけはリスナーに寄り添うことを意識しましたね。自分に対してはもちろん、聴いてくれるすべての人に対して「私はここにいるからね。大丈夫だよ」って言ってあげたかったというか。レコーディングでもそういう感覚で、大切に歌いました。
泣くほど追いつめられて出てくる言葉
──「花のように」のような自分の心の中にある感情を赤裸々にすくい取って生み出す楽曲というのは、ご自身にとって書きやすいものではあるんですか?
いや、けっこう大変ですね。今回はアレンジをする段階になってもまだ歌詞が書けていなくて号泣しましたから(笑)。プロデューサーに「私のダメなところを全部教えてください」ってお願いして、ぶわーっとダメなことを言われ、「そんな自分になんて言葉をかけたいんだ?」って聞かれたから、「わかりません……」って泣きながら答えるみたいな。歌詞で迷ったときはだいたいそういう感じになるんですよ。
──それはどういう作業なんですか(笑)。
あははは(笑)。いや、なんかタイアップ曲だとドラマだったりCMだったりにテーマがあって、そこに寄り添うことで言葉がどんどん出てくるんですよ。ヒントを与えてもらえるというか。でも、自分の心から絞り出す曲っていうのはもう、そういうことをしないと出てこないんですよね。本当に毎回泣いてますから(笑)。
──外部から刺激を与えてもらうことで、自分自身により深く向き合うことができる……といった感じなんですかね?
まさにそうです! そういう過程を踏まないと言葉が全然出てこないんですよね。しかも、この曲は自分の誕生日に歌入れをしたんですけど、その段階でもまだ歌詞が書けていなくて。なので、スタジオに入ってから5時間くらいかけて必死に書いて、フラフラになりながら、泣くのを我慢してすぐに歌ったんです。で、歌い終わってスタジオから出たら、スタッフさんが「誕生日おめでとう!」ってクラッカーを鳴らしてくれて。そこで全身の力が抜けて、結局また爆泣きするっていう(笑)。
──何回泣くんですか(笑)。
人生について書いてる曲の場合はだいたいそんな感じです。前に出した「SPOTLIGHT」(2019年にインディーズでリリースされた1stアルバムの表題曲)のときも同じようにめちゃくちゃ泣きましたからね。でも、それが大事なのかなって私は思うんですよ。楽をしちゃダメというか。泣くほど追いつめられて出てくる言葉にこそ、自分の本音や本当に伝えたいことが隠されているんだろうなって。
──eillさんが大きく注目されるきっかけになった「SPOTLIGHT」と同じようなプロセスを経て生まれたということは、「花のように」もまたご自身にとって大事な作品になっていくのかもしれないですね。
そうですね。周りのスタッフの方にもそう言っていただけています。「SPOTLIGHT」を初めて聴いたときに近い雰囲気があるって。私自身もそんな気がしていますね。
いろんなことをやるのがeill
──ここまで2カ月ごとに新曲を配信してきましたが、9月には竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」のカバー作品がリリースされます。9月10日公開の映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」の主題歌に採用されているんですよね。
そうなんです! 映画、めっちゃ面白いですよ。不倫のお話なんですけど、少女マンガの要素が盛り込まれているので、キュンキュンが止まらなくてヤバかったです(笑)。
──原曲の素晴らしさを大事にしつつ、eillさんらしい味わいを感じさせてくれる仕上がりになりましたね。
竹内まりやさんの楽曲は以前にも「夢の続き」をカバーさせていただいたことがあって。それ以降、たくさんの曲を聴かせていただいて、いろいろ分析して勉強してきたんですよ。(山下)達郎さんのアレンジは本当に素晴らしくて、自分では考え付きもしないようなコーラスの積み方をされていたりもして。そういう発見があるのがものすごく楽しいんですよね。なので、今回またカバーさせていただけることになったのがすごくうれしかったです。
──アレンジはYaffleさんが手がけています。
はい。私はこの曲の歌詞がすごく好きなので、そこを生かしたアレンジをお願いしました。テンポをちょっと落としたり、キーをあえて変えたことで、歌詞と楽曲の駆け引きみたいな部分がしっかり伝わる仕上がりになったかなって思います。言うことないですっていうくらい素敵なアレンジをしていただけました。
──歌入れはいかがでしたか?
ほかの方が書いた曲を歌うのはすごく楽しいですね。自分にはない感情に寄り添いつつ、そこから自分の中にもある感情を見つけながら歌うのは本当に楽しい。毎度、新しい発見があります。ただ、自分からは出てこないメロディなので、そこに喉を合わせていくのがなかなか大変でもあって。キーを調整しながら何度か歌うことで、原曲の持つクールで都会的な雰囲気が出たボーカルワークになったんじゃないかなって思います。がんばりました!(笑)
──カバーであっても、しっかり自分色に染め上げることができるのはeillさんの最大の強みだと思います。ここから先もさまざまな楽曲で楽しませてくれることに期待してます。
私はデビューのときから「eillちゃんは決まったジャンルがないよね」って否定的な感じで言われ続けてきたんですよ。「何か1つのジャンルに絞ったほうがいいんじゃないの?」みたいなニュアンスで。でも、私は決まったジャンルがなくてもいいと思っているんです。「いろんなことをやるのがeillなんで!」みたいな(笑)。その精神は今もずっと変わらないし、どんな曲をやったとしても全部がeillになるから大丈夫っていう自信も活動を重ねる中でより強まってきているんです。これからもいろんなことをやっていくので、ぜひ楽しみにしていてください!
ライブ配信情報
- eill Live Tour 2021「ここで息をして」追加公演 見逃し配信
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配信期間:2021年8月31日(火)12:00~9月13日(月)23:59
※配信視聴チケットは9月13日(月)22:00まで販売中
- eill(エイル)
- 東京都出身のシンガーソングライター。15歳の頃から歌い始め、同時にPCで作曲も開始する。2018年6月にシングル「MAKUAKE」でCDデビュー。ソウルやR&Bなどブラックミュージックの要素が色濃く反映された楽曲やシルキーかつソウルフルな歌声が魅力。K-POPをはじめ、韓国カルチャーへの造詣が深く、テヨン(ex.少女時代)やEXIDへの楽曲提供などでも知られる。2021年4月にテレビアニメ「東京リベンジャーズ」のエンディング主題歌「ここで息をして」でメジャーデビューを果たし、その後「hikari」「花のように」と立て続けに配信シングルをリリース。同年9月に竹内まりや「プラスティック・ラブ」のカバーを発表する。
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