音楽ナタリー PowerPush -大滝詠一 ベストアルバム「Best Always」発売記念特集 曽我部恵一×OKAMOTO'S対談
曽我部とOKAMOTO'Sが覗いたナイアガラサウンドの深淵
- M-1. ナイアガラ・ムーン
- キャリア初のベストアルバムは、約40年前の楽曲からスタート。曲を通して鳴り響くペダルスチールの音色が心地よく、リラックスして大滝詠一の音世界に入っていくことができる。
- M-2. 12月の雨の日
- 伝説のロックバンド、はっぴいえんどの1stシングル。曲全体に散りばめられた力が湧き上がってくるようなイメージは、若者のパワフルさが際立った1970年前後の日本と重なるものがある。
- M-3. 恋の汽車ポッポ
- 1971年発表の、ソロ名義で初となるシングル。力強いビートとカントリーテイストを取り入れたロックンロールサウンド、そして熱くなりすぎず、かといって冷めすぎてもいない程よい温度感が気持ちいい。
- M-4. 空飛ぶくじら
- 「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」前後の、中期ビートルズを彷彿とさせるミディアムテンポのポップチューン。サウンドの軸になるピアノとクラリネットが印象的。
- M-5. 指切り
- ルーズなリズムとセクシーな女性コーラス、透明感のあるフルートの音色が官能的な世界を構築。AORやシティポップにも通ずるテイストが感じられる、大人びた1曲。
- M-6. Cider'73'74'74
- そのタイトルのとおり、発表当時「三ツ矢サイダー」のCMソングに使用された3曲を組曲風につないだもの。古きよき時代のアメリカンポップスと「三ツ矢サイダー」の相性は抜群。
- M-7. 楽しい夜更し
- ドゥーワップを取り入れたオールディーズ調アレンジながらも、歌われているのは若者の自堕落な生活。どこか気の抜けた世界観に、思わずクスッとしてしまうリスナーも多いのでは。
- M-8. 夜明け前の浜辺
- 8分の6拍子のロッカバラード調サウンドにThe Beach Boys風ファルセット、ハワイアンテイストのペダルスチール、そして波の音が加わることで生まれた、究極のビーチソング。
- M-9. 幸せにさよなら
- 大滝、山下達郎、伊藤銀次が交互に歌い、絶妙なハーモニーを聴かせるポップチューン。のちの渋谷系サウンドにも通ずるサウンドは、現代J-POPの教科書的なものと言える。
- M-10. ニコニコ笑って
- 緩やかなリズムと朗らかなメロディに、ブラスセクションとピアノが絡みあうミディアムスローナンバー。これぞ昭和歌謡黄金期を代表するポップスと断言できる仕上がりだ。
- M-11. Cider'77
- 大滝の1人多重録音によるドゥーワップコーラスが耳に残る、1977年の「三ツ矢サイダー」CMソング。フィル・スペクター的なキラキラした“ウォールオブサウンド”との相性も抜群。
- M-12. The Very Thought Of You
- 大滝が提供した「夢で逢えたら」のヒットで知られるシリア・ポールによる、大滝とのデュエット曲。ブラス&ストリングスを前面に打ち出したゴージャスなバンドアレンジが、楽曲にさらなる優雅さを与えている。
- M-13. 青空のように
- 普遍的に愛される名曲というのはまさにこういう楽曲のことを指すのだという、ミディアムテンポのラブソング。発表から40年近く経った今聴いても、その魅力はまったく色褪せていない。
- M-14. 真夏の昼の夢
- いかにも暑苦しそうなタイトルに相反して、聴いているだけで夢の国が目に浮かぶハートウォーミングなスローナンバー。避暑地の木陰で、横になりながら楽しみたい。
- M-15. ブルー・ヴァレンタイン・デイ
- チョコレート並みの甘さとほろ苦さを持つバレンタインソング。カントリー、R&Bなどの要素を取り入れつつも、完成した楽曲は王道のJ-POPそのもの。
- M-16. 外はいい天気だよ'78
- はっぴいえんどのアルバム「HAPPY END」収録曲「外はいい天気」をセルフカバーしたもの。シンプルなバンドサウンドで表現された原曲が、“これぞナイアガラサウンド”というゴージャスなアレンジに生まれ変わっている。
- M-17. 烏賊酢是!此乃鯉
- エルヴィス・プレスリーを真似た大滝の歌声が印象的なロックンロールナンバー。プレスリーの楽曲の邦題で構成された歌詞もさすがの一言。ちなみにタイトルは「いかすぜ!このこい」と読む。
- M-18. 夢で逢えたら
- シリア・ポールやラッツ&スターをはじめ、数多くのアーティストがカバーした名曲の、大滝歌唱バージョン。意外にも大滝バージョンが世に出るのはこれが初めて。改めて大滝詠一という“希代のアーティスト”からのプレゼントを、思う存分楽しんでほしい。
- M-1. 君は天然色
- 若い世代にはお茶やビールのCMソングとしてなじみ深い、名作アルバム「A LONG VACATION」のオープニングナンバー。はっぴいえんど時代の盟友・松本隆とのタッグにより誕生した、エバーグリーンなポップソング。
- M-2. 恋するカレン
- こちらも2000年代後半に自動車のCMソングに使用されたことがある、「君は天然色」と並ぶ大滝の代表曲。BEGINやCHEMISTRY、つじあやのなど、さまざまなアーティストがカバーしている。
- M-3. A面で恋をして
- 大滝が佐野元春、杉真理という後輩アーティストとともに制作した究極のポップソング。アナログの7inchシングルをイメージしたタイトルと、キラキラしたバックトラックは1950~60年代のポップス黄金期そのもの。3人の声の相性も抜群。
- M-4. さらばシベリア鉄道
- 太田裕美に提供した楽曲のセルフカバーバージョン。奇しくもこのベストアルバムの数週間前にリリースされた吉井和哉のカバーアルバム「ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~」でも取り上げられている。
- M-5. オリーブの午后
- アルバム「A LONG VACATION」の流れを汲みながらも、より大人びたテイストを強めた1曲。この数年後に発表される最後のソロアルバム「EACH TIME」を予感させる内容と言える。
- M-6. ♡じかけのオレンジ
- 1950~60年代のアメリカンポップス黄金期を思わせるゴージャスなサウンドに、時折挿入されるシンセサイザーの音色や無機的な効果音が印象的。その手法はどことなくBuggles「ラジオスターの悲劇」を彷彿とさせる。
- M-7. ROCK'N'ROLL退屈男
- 60'sロックテイストにニューウェイブ的色合いを織り交ぜた、1980年代前半ならではのアレンジが興味深い。和洋折衷な歌詞からも遊び心が感じられる。
- M-8. CM Special Vol.2
- CMソングばかりを集めたアルバム「Niagara CM Special Vol.2」のテーマソングとして制作。歌詞に自身が手がけたCMソングやそのCMのキャッチコピーが散りばめられており、The Beach Boys風ファルセットとの相性もなかなかのもの。
- M-9. Cider'83
- 続いても1分少々のCMソング。1973年に初めて「三ツ矢サイダー」のCM楽曲を手がけてから10年、節目を飾るにふさわしいゴージャスな仕上がりだ。
- M-10. ペパーミント・ブルー
- 結果として最後のオリジナルアルバムとなってしまった1984年の「EACH TIME」収録曲。ナイアガラサウンド、そして松本隆とのタッグという意味でも完成型に到達した、究極の大滝詠一ナンバー。
- M-11. バチェラー・ガール
- 稲垣潤一が1985年にヒットさせた楽曲の、大滝歌唱バージョン。稲垣の抜けがよい歌声とは異なり、どこかくぐもった印象があるのに透明感すら感じさせる大滝の歌声。ぜひ両者のバージョンを聴き比べてみてほしい。
- M-12. フィヨルドの少女
- どこか「さらばシベリア鉄道」の続編的な雰囲気を持つアップチューン。ただし前者がマイナーコードだったのに対し、こちらはメジャーコードで進行するため、北欧と聞いてイメージする“寒さ”“暗さ”が感じられない。
- M-13. 夏のリビエラ
~Summer Night in Riviera~ - 森進一に提供し大ヒットした「冬のリヴィエラ」を、英詞でセルフカバーした大滝歌唱バージョン。若い世代にはぜひ森進一バージョンもあわせて聴いてほしい。
- M-14. 幸せな結末
- 1997年に木村拓哉、松たか子主演のテレビドラマ「ラブジェネレーション」の主題歌として、12年ぶりに発表された新曲。ドラマ効果もあってか、100万枚近い大ヒットを記録した。現在20代後半~30代の音楽ファンにとってもなじみ深い1曲だろう。
- M-15. Happy Endで始めよう
- シングル「幸せな結末」のカップリング曲。2曲とも大滝がかつて在籍したバンド、はっぴいえんどを思い浮かべるタイトルとなっているのが興味深い。「幸せな結末」同様、“これぞ大滝詠一”と呼べる王道ポップソングだが、どちらも単なる焼き直しで終わっていないのはさすがの一言。
- M-16. 恋するふたり
- 2003年、テレビドラマ「東京ラブ・シネマ」の主題歌として発表された2000年代唯一の新曲。「幸せな結末」で名作「A LONG VACATION」「EACH TIME」を90年代にアップデートさせた大滝が、ここでは70年代に制作したサウンドを2000年代によみがえらせている。
- M-17. 恋のひとこと
~SOMETHING STUPID~ - フランク&ナンシー・シナトラのヒット曲を、竹内まりやとのデュエットでカバー。大滝最後の公式レコーディング曲となってしまったが、結果として彼のルーツである黄金期のアメリカンポップスで最後を飾ることになった。
- ナイアガラ・ムーン
- 幸せにさよなら
- 夢で逢えたら
- ROCK'N'ROLL 退屈男
- CM Special Vol.2
- Cider '83
- 夏のリビエラ
- 幸せな結末
- Happy Endで始めよう
- 恋するふたり
- 大滝詠一 ベストアルバム「Best Always」/ 2014年12月3日発売 / Sony Music Records
- 「Best Always」
- 初回限定盤 [CD3枚組]4320円 / SRCL-8010~2
- 通常盤 [CD2枚組]3780円 / SRCL-8013~4
大滝詠一(オオタキエイイチ)
1948年生まれ7月28日岩手生まれ。1970年代にはっぴいえんどのボーカル&ギターとして活躍し、解散後は自身のレコードレーベル「ナイアガラ」を創設。1981年発表のソロアルバム「A LONG VACATION」は日本のポップス史に残る名盤となった。その後も松田聖子「風立ちぬ」、森進一「冬のリヴィエラ」、小林旭「熱き心に」など数多くのヒット曲のプロデュースを担当。1997年には自身のオリジナル曲「幸せな結末」が月9ドラマの主題歌として大ヒットを記録した。2013年12月30日解離性動脈瘤により死去。2014年12月3日に初のベストアルバム「Best Always」がリリースされる。
曽我部恵一(ソカベケイイチ)
1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在はソロのほか、再結成したサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。
OKAMOTO'S(オカモトズ)
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)の4人からなるロックバンド。バンド名およびメンバー名は、彼らが敬愛する岡本太郎に由来する。抜群の演奏力とアグレッシブなライブパフォーマンスに定評があり、2010年3月にはアメリカのショーケースイベント「SXSW」に出演。続けて行われた全米ツアーでも高い評価を受けた。次世代のロックシーンを担うホープとして注目を集める中、2010年5月に1stアルバム「10'S」でメジャーデビュー。2011年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '11」に初出演を果たし、10月には初のアジアツアーを開催した。2014年はCDデビュー5周年を掲げ8月にRIP SLYME、奥田民生らを迎えてコラボレーションアルバム「VXV」をリリースし、秋にアニバーサリーライブツアーを実施した。