Track 5「案内人」解説
──最後の「案内人」はご自身の作詞作曲。オルゴールや遊園地を思わせるような三拍子のかわいらしい曲ですが、歌詞では「夢にまで見た地獄の底」などとわりと怖いことを歌っている。eddaさんらしい曲ですよね。
こういうのやりたかったって感じですね(笑)。もともと三拍子の曲がすごく好きなので。この曲は、物語としては、夜の遊園地やサーカスのような場所に突然連れて来られた主人公が、ピエロみたいな案内人に誘導されて、怖いと思いつつどんどん進んでいくんです。で、曲が転調するところで「コンコン」っていう音を、後ろから肩を叩かれるイメージで入れてもらったんですけど、そこでくるっと振り返ると、イルミネーションがキラキラしていて、いろんな人たちで賑わっている、すごく綺麗な景色が広がっている。怖かったけど、進んできたおかげでこの景色が見えたんだっていうイメージです。
──なるほど。あと、曲の最後に1番のAメロが繰り返されるのが、ループ感ありますね。
これは、最初に案内人に誘導されていた主人公が、最後は彼自身も案内人になり代わって、また別の人を誘導していくっていう。
──どんどん案内人がバトンタッチしていくわけですね。この曲のアレンジに関してはどういったお話をされたんですか?
コラージュ感と言うか、ごちゃごちゃした感じを出したかったんですよ。だからできるだけチープな楽器をたくさん使おうと思って、安物のトイピアノとかリコーダー、カスタネットとか、あとコンガも音がペラペラな安いやつを使いました。
──ご自分で買われたんですか?
買った楽器も多かったです。そのトイピアノやリコーダーは私が弾いたり吹いたりしていて。でも、大サビのあたりは大人の雰囲気に持っていってほしかったので、トイじゃないピアノとストリングスでドラマチックに。あと、最後のサビでは、私のゲーム友達にコーラスをお願いしたんですよ。
──ミュージシャンではないんですか?
ゲーム友達なんですが、きのしたさんという方で、音楽活動をされていて。前々からすごく面白い声をしている子だなと思っていたんです。たまさんの「電車かもしれない」で、知久(寿焼)さんが1度(同じ音程)でずっと歌うコーラスを入れてたんですよ。それがすごくかわいくて、「案内人」にもそういうニュアンスが欲しかったんです。で、その方にちょっとふざけながら歌ってもらったらいい具合にどんちゃん騒ぎ感が出たので、お願いしてよかったなと。
──アレンジの話を引っ張ると、eddaさんはもともとギターから音楽の道に入られていますよね。であれば、弾き語りという選択肢もあり得たと思うのですが、基本的に打ち込み+生音という感じの音作りをされています。
少なくとも現時点では、アレンジ込みで物語を楽しんでもらいたいんですよ。私の曲って歌詞だけでは完結しないと言うか、歌詞とメロディだけだと暗すぎる気がするんですね。だから物語へ導くヒントとして、もうちょっと灯りが欲しいなって。一旦物語を知ってもらったうえで、弾き語りバージョンを再録するみたいな形は全然アリだと思うんですけど、今はたくさん音の粒があったほうがいいと思っています。もともと、作曲の時点でアレンジ込みで考えてもいるので。
──使われる楽器も想定している?
めちゃくちゃしてます。なんなら、そこから考えることのほうが多いかもしれません。「ピアノを使うなら、こんな雰囲気の曲になるよね。と言うことは、物語としてこうなるかな?」みたいな感じで。
──今後、使ってみたい楽器はありますか?
ピアニカですかね。
──わりとお手軽なのでは?
確かに(笑)。音自体がすごくかわいくて、コクがあるのに、でもペラペラで、いい具合にダサい。いつか使いたいです。
タイトル「ねごとの森のキマイラ」の由来
──作品タイトル「ねごとの森のキマイラ」の「キマイラ」は、いろいろな作家さんとeddaさんが融合して1枚の作品になっているから?
まさしく、そのイメージです。
──では「ねごとの森」は?
このEPは収録曲すべてにどこかふわふわした感じと言うか、現実なのか夢なのか、あるいはここではない別の世界なのか……みたいな、境界線が曖昧なところがあると思ったんです。寝言を言うときも、寝てるのか起きてるのか、その狭間をゆらゆらしてる感じじゃないですか。そういうのを表現したかったんです。あと、「ねごとの森の」って付くと、「キマイラ」がデフォルメされる感じありません?
──確かにかわいい感じになりますね。
「キマイラ」は使いたいけど、それ単体だとちょっとゴツすぎてイメージに合わない。じゃあそれを緩和できる柔らかいワードはないかと探した結果「ねごと」に落ち着きました。
──そのキマイラ感を否定するわけではありませんが、どの作家さんと“悪魔合体”しようが、eddaさんはeddaさんの歌を歌われているなという印象を受けました。
うれしいです。最初にお話ししたように、歌う前は不安だったんです。でも、いざやるとなったら1曲1曲に対する愛情が、いつも自分が作ってる曲と変わらないくらいかそれ以上に膨らんで。すごく、素敵な体験をさせていただきました。
- edda「ねごとの森のキマイラ」
- 2018年5月23日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD]
1836円 / VICL-65001 -
通常盤 [CD]
1620円 / VICL-65002
- 収録曲
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- グールックとキオクのノロイ [作詞:edda / 作曲:郷拓郎 / 編曲:detune.]
- 夢のレイニー [作詞:edda / 作曲・編曲:ササノマリイ]
- ダルトン [作詞・作曲:Cocco / 編曲:河野圭]
- さよなら人類 [作詞:柳原幼一郎 / 作曲:柳原幼一郎、知久寿焼、石川浩二、滝本晃司 / 編曲:砂守岳央、松岡美弥子(未来古代楽団)]
- 案内人 [作詞・作曲:edda / 編曲:ミワコウダイ]
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- リピート[作詞・作曲:edda / 編曲:ミワコウダイ]
初回限定盤ボーナストラック
- edda(エッダ)
- 1992年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。音楽塾ヴォイスで作曲や作詞を学び、2017年にeddaとして活動をスタート。2017年5月に福岡限定シングル「半魚人」を発表し、7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」をリリースした。同年10月にシングル「チクタク」でメジャーデビュー。2018年5月にCocco、ササノマリイ、detune.ら参加の新作「ねごとの森のキマイラ」をリリースする。