音楽塾ヴォイス出身の女性シンガーeddaが、初の全国流通作品となるミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」を7月19日にリリースした。
どこか毒をはらんだ歌詞を、スモーキーかつ伸びやかな声で歌い上げるedda。「北欧の神話を伝える教本」という意味を持つその名前には、世の中に埋もれているあらゆる感情や声たちを人々に伝えたいという思いや「物語を語り継ぐ」という意味が込められている。音楽ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、彼女のルーツから新作「さんかく扉のむこうがわ」まで幅広く聞いた。
取材・文 / 秦野邦彦
鈍臭い感じや脇役に惹かれる
──5月に地元・福岡限定シングル「半魚人」をリリースされましたが反響はいかがでしたか?
私が思っていなかったような感想をたくさんいただけて、すごく面白かったです。
──この「半魚人」をリリースすることにしたのは?
曲として聴きやすいのと同時に、私の世界観が一番表れている感じがしたので。「eddaっていうのはこういう感じの子なんだな」っていうのがわかってもらいやすい曲かなと思って選びました。タイトルも耳に付く言葉ですし。
──歌詞にマーメイドという言葉が出てきますが、タイトルは「人魚」ではなく「半魚人」なんですね。
歌詞の主人公が、ちょっと鈍臭いというか、“脇役のAちゃん”みたいな子が主人公なので、マーメイドとか人魚姫と言うよりは「半魚人」かなって。目立たない子に話を聞いたみたいな内容なんです。
──eddaさんはメロディが先に出てくるのか、ストーリーを頭に浮かべてメロディを作っていくのか気になったんですけれども。
曲にもよるんですけど、どういうストーリーにしたいか、どういう主人公にしたいかを最初に決めることが多いですね。設定を細かく考えて、髪は何色だとか、身長はこれぐらいだっていうところまで考えてから歌詞を書き始めるんですけど、その子がはっきりと頭の中に浮かぶくらいまでできあがったら勝手に歩いて行っちゃうと言うか。ストーリーが勝手に浮かぶので、追いかける形で歌詞にすることがほとんどです。
──小さい頃からストーリーを考えるのが好きだったんですか?
はい。もともと物語を読むことが好きなんですけど、なぜか脇役とか、あんまり出てこない子に惹かれることが多くて。「きっと、この子はこういうことをしたんだろう」って妄想してましたね。
──スマートにこなせる主人公タイプではなく、脇にいる目立たない子に惹かれてしまう。
そういうことが多いです。たぶんひねくれてるんだと思うんですけど、「この子、なんでこんなに物語に出してもらえないの?」みたいなことを思っちゃう(笑)。
──小さい頃に好きだった絵本とか覚えてますか?
いろいろあるんですけど、「ルンペルシュティルツヒェン」という絵本が好きでした。悪魔の名前当てのお話で、それに出てくる悪魔に惹かれて。絵本の中ではただ悪いだけの存在なんですけど、この子は本当はかわいいんじゃないかって感じて。別の物語を勝手に考えて、悪魔のことを好きになりました。
──基本的に外で遊ぶより、家で本を読んでいるほうが好きなタイプですか?
はい。ゲームやアニメも大好きです。それも物語があるもの。ゲームだと「ICO」とか、ああいう世界観がすごく好きでした。
──これまでeddaさんが一番影響を受けた作品はなんでしょう?
「不思議の国のアリス」は初めて読んだときから引き込まれましたね。派生作品も好きです。明るいポップなものもあればダークなものもあるんですけど、どちらかと言えばダークなほうが好きで。ゲームだとホラー系になりがちなんですけど、「歪みの国のアリス」というゲームは小学生のときに初めて買った携帯電話から、今使っているものまで全部にダウンロードして入れているくらい大好きです。アリス関連のものはだいたい面白いし、かわいいし。ガーリーとホラーが混ざったものの頂点にして原点だと思うので。
戦ってる人が好き
──確かに、eddaさんの音楽には「不思議の国のアリス」のようにガーリーとホラーが混ざった部分がありますね。
ええ。あと基本的に戦ってる人が好きなんです。アリスみたいに自分から冒険に飛び込むような、意志が強い人が好きですね。ただのお姫様だともの足りないというか。魔法少女系とかも好きで「カードキャプターさくら」や「セーラームーン」にもハマりました。
──そういった本やゲーム、アニメを通じて、自分でも何か表現していきたい思いが強くなっていったわけですね。
はい。今までは自分で考えて作って置いておくだけだったんですけど、発信できるようになってきたので、外にどんどん伝えていけたらいいなと思ってます。eddaという名前も「物語を伝える」という意味で発信できたらなと思って付けました。
──「edda」という言葉を調べると、北欧神話を伝える教本が由来とありました。
いろんな出来事を後世に残す伝記みたいなものだったそうで、詩を後世に伝える本の名前に付けられて。響きも好きだし、意味合いとしても自分がやっていきたいことに近いので。
──eddaさんの世界を作り上げるもう1つの大きな要素として、声があります。歌うことは小さい頃から好きだったんですか?
2歳ぐらいのときに「ぞうさん」を歌っていたみたいで、その動画はあるんですけど、歌うことはそんなに好きではなかったですね。ただ音楽は好きで、小学校3年生からクラシックギターを習ってました。当時私は小さいのがいいって言ったんですけど、習っていた先生に「それに慣れちゃうといけないから」という理由で大人用のアコギを使わされてましたね。
──当時はどんな曲を弾いてました?
先生が選んだ曲なので、Hi-Fi SETの「フィーリング」とかヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」とか古い曲が多かったです。それで中学生になった頃、その先生に「歌、やってみる?」と言われて。最初は人前で歌うのは嫌だなと思っていたんですけど、歌ってみたら褒められたので「褒められた!」と思って(笑)。うれしかったんですけど、自主的に歌うことはなかったです。
──自ら歌うようになったきっかけはなんだったんですか?
高校に上がるとき進路をどうしようかと考えたんです。私、なりたいものがありすぎて。動物が大好きだから動物園の飼育員さんにもなりたかったし、宇宙飛行士になりたいと思った時期もあったり、本当にでたらめで(笑)。ずっとやってきたのが音楽しかなかったので、高校3年生のときに音楽塾ヴォイスに入って本格的に歌い始めたんです。
──絢香さん、家入レオさんなどプロデビューした卒業生を多数輩出されている音楽塾ですね。そこではどんなことを学んだんですか?
主に歌と曲作りです。入って3年くらいは楽曲構造の勉強をして、どういうふうに曲を作ればいいのかを学んで。そこでやっと音楽を作り出す方法を手に入れて、それまでやってきたことが全部音楽にダダダッて注ぎ込まれていくような感じでした。
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名刺代わりになる「不老不死」
- edda「さんかく扉のむこうがわ」
- 2017年7月19日発売 / Erzahler RECORDS
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[CD]
1620円 / PAGE-2
- 収録曲
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- 不老不死
- 半魚人
- エッセンシャルパレード
- ベルベット
- はちゃめちゃアイランド
- edda(エッダ)
- 1992年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。音楽塾ヴォイスで作曲や作詞を学び、2017年にeddaとして活動をスタート。2017年5月に福岡限定シングル「半魚人」を発表し、7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」をリリースした。