edda|Cocco、detune.、ササノマリイとのコラボで開く新たな扉

Track 3「ダルトン」解説

──そして3曲目が、Coccoさんからの提供曲であるバラード「ダルトン」。

Coccoさんのライブを拝見したのは去年行われたデビュー20周年記念の日本武道館公演が初めてだったんです。そこで、めちゃくちゃいい意味で言うんですけど、天然記念物のような方だなって。

──それ、わかる気がします。

それで今回、Coccoさんも私もレーベルが同じということもあって、スタッフさんから「Coccoさんに作曲をお願いするのって、どう?」と言われて。

──どうもこうもないですよね(笑)。

「うれしいに決まってるでしょう!」っていう(笑)。最初にデモをいただいたときも、舞い上がってしまったと言うか。ちょうどクリスマスイブで私は実家に帰っていて、マネージャーさんからLINEで「Coccoさんからのクリスマスプレゼントです」と連絡が来て。そこに添付された写真を見たら、手書きの歌詞カードにクリスマスのシールが貼られていて、「メリークリスマス」という言葉と共にメッセージが添えられてたんです。

──Coccoさんて、そういうお茶目なこともなさるんですね。

めちゃくちゃうれしくて、そのカードは大事にとってあります。ただ、初めて曲を聴いたときに、やっぱりデモの仮歌はCoccoさんの声で歌われているので、「ダルトン」は完全にCoccoさんの曲だったんですね。それを私の歌として表現できるのかすごく不安だったんですけど、アレンジャーの河野(圭)さんとたくさんお話しさせていただいて。

──河野さんも、宇多田ヒカルさんなどを手がけられてきた名プロデューサー、アレンジャーですよね。

一緒にできてホントに光栄です。その話し合いの際に、edda的な要素としてチカチカした感じの音だったり、“音の遊び”みたいなものを入れられないかとご相談して。最終的に、EPを通して聴いても5曲の中でもちょっと、これもいい意味で言うんですけど、1曲だけ沈んでいると言うか、波ができるような面白い感じに仕上げてくださいました。

──eddaさんは、わりとアレンジにも関与されるタイプ?

はい。といっても、私には打ち込みとかの技術もないし専門用語もわからないので、すごく大まかなことを言って、その都度アレンジャーさんに意図を汲んでいただくという形なんですけど。

──日本のシンガーソングライターでアレンジまで自分できっちりやられる方って、あまり多くないと思うんですよ。でも、eddaさんは実作業としてご自身で手は動かしていないにせよ、アレンジャー的な感覚も持ち合わせている。大事なことだと思います。

ありがとうございます。なんなら、私はアレンジが一番気になっちゃいますね。

──冒頭でおっしゃったように、「ダルトン」は作詞もCoccoさんです。

edda

あくまで私個人の解釈なんですど、私はまず「ダルトン」というのは女性の名前だと考えて。で、1番Aメロの「いつか 時が来て この腕が癒えたなら」は、最初はダルトンが傷付いた自分の腕を見て言ってるのかなって思ったんです。でもそうじゃなくて、ダルトンは、自分が傷を負わせてしまった大切な人を見ながら言ってるんじゃないかと。きっと、ダルトンには接触した人を物理的に傷付けてしまう悲しい性質があって、だから彼女は今は少し離れて自分が傷付けてしまった人を見守っているけれど、その傷が癒えたら自分は立ち去らなきゃいけない。そうなったとき「空の青や赤は どう褪せていくだろう」と物思いに耽っているのかなって。

──面白い解釈ですね。

そう捉えるとサビや2番の歌詞も辻褄が合うなと思って、私の中ではそういう物語として歌おうと。

──その歌い方は、前2曲とまったく違いますね。特に「夢のレイニー」はロックナンバーらしく声を張っている感じですが、それに比べると「ダルトン」は声の出力としては6~7割くらいでは?

「ダルトン」はすごく歌うのが難しい曲で。曲自体がものすごく伸びやかで、アレンジもそれを生かすような形にしていただいたので、そこに感情を乗せすぎると、重たいかなと思って。私の脳内にあるダルトン像も、情念というよりは諦念めいたものを感じさせる人だったので、そこまで気合いを入れずに。たぶん、今までで一番“ボーカリスト”感が強い曲かもしれないですね。

──eddaさんは以前「シンガーソングライター」という肩書きに違和感を覚えることがあるともおっしゃっていましたね。それよりも「ストーリーテラー」のほうがしっくりくると。

はい。いつもは“テラー”として、その物語にどれだけ寄り添えるかっていうのを優先して歌っているので。だから、音としてはあまり美しくないけど、物語に合う歌声だったらOKだったりしたんです。でも「ダルトン」に関しては、ホントにメロディを大事にしながら歌わせていただきました。

──自分以外の人の歌詞が乗った曲を歌うという点での難しさはありませんでした?

ありました。ただ、それを言ったら4曲目のたまさんのカバー「さよなら人類」もそうじゃないかっていう話になるんですけど、「ダルトン」はまだ世に出ていない曲なので。

──しかも、eddaさんのために書かれた曲。

その責任感もありますし。あと、やっぱり自分の頭の中で歌がCoccoさんの声で再生されてしまうので、それをどうやって自分の歌に書き換えるか、そこが一番難しかったですね。

──でも結果、満足してらっしゃいますよね。つまりちゃんとeddaさんの歌になっている。

はい。

Track 4「さよなら人類」解説

──4曲目は先ほどおっしゃったようにたまのカバー「さよなら人類」ですが、なぜこの曲を?

このEPにはカバー曲を1曲入れようという話は最初からしていて、私もスタッフさんもそれぞれ案を出していたんですけど、なかなか「これだ!」ってハマるものがなくて。それで、一応の候補曲が2曲ぐらい決まったのが、郷さんとの打ち合わせの直前だったんですよ。その席で「ところで郷さんって、どんな音楽を聴いてらしたんですか?」という質問に「たまを聴いてました」と答えられて。でも実は、私たまさんのことをよく知らなくて。

──Coccoさんにしてもたまにしても、表面的にはポップに聞こえるけれど、よくよく聴いたり歌詞を読んだりするとちょっとグロテスクだったりしますよね。eddaさんの曲にもそういう部分があるので、もともとたまもお好きだったのかなと思っていたのですが。

聴いたことなかったんですよ。でも郷さんが「いい」と言ってるんだからいいに違いないと思って家に帰って聴いたらハマってしまって。アルバムも買って、今めちゃくちゃたまブームがきてるんです、私の中で。

──そしてたまの代表曲である「さよなら人類」に決まったと。歌ってみていかがでした?

もう、それこそ自分の曲かっていうくらい、すんなり歌えましたね。例によってアレンジャーさんとも密にお話しさせていただいたんですけど、ホントにイメージ通りのかわいらしいアレンジにしてくださって、レコーディングもすごく楽しかったです。

edda「ねごとの森のキマイラ」
2018年5月23日発売 / Victor Entertainment
edda「ねごとの森のキマイラ」初回限定盤

初回限定盤 [CD]
1836円 / VICL-65001

Amazon.co.jp

edda「ねごとの森のキマイラ」通常盤

通常盤 [CD]
1620円 / VICL-65002

Amazon.co.jp

収録曲
  1. グールックとキオクのノロイ [作詞:edda / 作曲:郷拓郎 / 編曲:detune.]
  2. 夢のレイニー [作詞:edda / 作曲・編曲:ササノマリイ]
  3. ダルトン [作詞・作曲:Cocco / 編曲:河野圭]
  4. さよなら人類 [作詞:柳原幼一郎 / 作曲:柳原幼一郎、知久寿焼、石川浩二、滝本晃司 / 編曲:砂守岳央、松岡美弥子(未来古代楽団)]
  5. 案内人 [作詞・作曲:edda / 編曲:ミワコウダイ]

初回限定盤ボーナストラック

  1. リピート[作詞・作曲:edda / 編曲:ミワコウダイ]
edda(エッダ)
1992年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。音楽塾ヴォイスで作曲や作詞を学び、2017年にeddaとして活動をスタート。2017年5月に福岡限定シングル「半魚人」を発表し、7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」をリリースした。同年10月にシングル「チクタク」でメジャーデビュー。2018年5月にCocco、ササノマリイ、detune.ら参加の新作「ねごとの森のキマイラ」をリリースする。