SSAの裏側、メンバーが見つけた褒めポイント
──SSAは大成功だったと思いますが、そんな中でも特に、ステージ上はもちろん表に出ていない部分も含めて「ここはすごくよかった」と思う場面を挙げてもらえますか? ほかのメンバーのよかったところ、自分で自分を褒めてあげたいような場面でもかまいません。
安本 はい! 悠菜が「SCHOOL DAYS」の前に曲について話すところ。あの場面はまやさん(真山)から「自分が思う『SCHOOL DAYS』について話してね」っていうオーダーが悠菜にあって。それまで悠菜はあまりそういう場面を任せられることがなかったし、いつもだったらそういうときは先輩メンバーが「こんなことを言うのはどうかな」と手助けしてたんですよ。でも今回はそれがまったくなく。リハーサルのとき、初めて悠菜が考えた言葉を聞いて「ああ、すごいな」って思った。言葉をまとめる力もあるし、曲への理解度の高さというか、悠菜なりに曲とめちゃくちゃ向き合って考えているんだなというのが伝わってきて。そんな一面が知れたのがすごくよかった。
仲村 ありがとうございます(笑)。
──けっこう頭使ったんですか?
仲村 めっちゃ考えました。本番の10日以上前にまやさんから言われてたんですけど、リハーサル前日までずっと「これでいいのかな」って何回も考え直して、途中でお姉さんメンバーに「これでいいですかね」って確認しようと思ったんですけど、今までと同じじゃダメだ、もう自分で考えよう!って。真剣にしゃべるのは得意じゃなくて、ちょっと変なことをしちゃうけど、この場面ではちゃんと思いを伝えようと思って真面目に話しました。
──そんなコメントのあと仲村さんにピンスポットが当たって、1人アカペラで歌い始めるという。
仲村 緊張しましたー。めっちゃ喉が渇きました(笑)。
真山 私も褒めポイントいいですか? TikTokメドレーコーナーの小久保。最近のライブでは私がMCの台本を考えることが多いんですけど、今回はみんなが均等に話せるよう割り振りだけをして、中身はメンバーに任せたんです。小久保にはTikTokコーナーとは別で話してもらおうと思っていたパートがあったんですけど、演出家の先生と話すうち「これは蛇足だね」とパートごとなくしてしまったんですね。そのあと演出家の先生がTikTokコーナーで小久保の出しろを急遽作ってくださって、ありがたいと思ったと同時に「大丈夫か?」と不安になって(笑)。
小林 ちゃんと踊り方を説明しないといけないところだからね。
真山 しっかり説明をしないといけないパートだったので「柚乃で大丈夫かな」と心配が勝ってたんですけど、リハーサルの1回目から、すごく簡潔でわかりやすくて「あっ、これで大丈夫だな」と安心できた。柚乃はふわふわしたつかみどころのないイメージがあるかもしれませんけど、頭のいい子なんだなって改めて感じました。これから積極的にコーナー仕切りとか任せられそうだなって。
風見 照れてる(笑)。
小久保 頭抱えます(笑)。
──あの大舞台で15年間の活動の集大成を見せるだけでなく、メンバーの新たなポテンシャルを見つけるという、この先につながる収穫があったのはすごくよいことですよね。
真山 うんうん。そうですね。
──ほかに褒めポイントはありますか?
仲村 ハイ! 「サドンデス」の莉子ちゃんの「最新が最強の私立恵比寿中学ー!」がめっちゃカッコよくて。横で聴いてるときもカッコよかったんですけど、あとでライブのレポートを見たら、全員が下を向いている後ろでビジョンいっぱいに莉子ちゃんだけが上を向いて叫んでいる写真があって。
小林 穴が(笑)。穴が見えちゃってる。
仲村 ファミリーの方が「Riko Nakayama is The King」って言ってて、確かにめっちゃキングすぎて、超カッコよくてすごいなと思いました。
──「中山莉子がキングと化す」というのが10年前のSSA時点では一番考えられなかった未来図ですね(笑)。
中山 あのぷるぷる震えていた子鹿が(笑)。
──「えびちゅうのエンジン」と言われ始めたあたりから、それを自分でも自覚して変わってきた部分もあるのかなと思うのですが。
中山 自覚? えー? とりあえず何も考えずがむしゃらにやってたら、それが「エンジン」とされて……それまで自分には目立った特徴がないと思ってたけど、「えびちゅうのエンジン」と言われたことで、やっと自分の個性が見つかったという思いがあって。今はそれに特化してやっている感じです。
──なるほど。ほかに褒めポイントはありますか?
桜木 私も1つあります。リハーサルのときの柚乃と和香を褒めたいというか、うれしかったことがあって。リハーサルの後半でちょっと私、膝が痛くなっちゃって。このままだと本番ちょっと危ないかもと思っていて……私たちのユニット曲「王様の耳はパンの耳」は花道を走ってセンターステージに移動する場面があったんですよ。リハーサルでも最後の調整だから走らないといけないし、私も一応走ろうとしたんですけど、柚乃と和香が私の横を歩いて「ついてきなよ!」みたいな感じで言ってたのが、マンガの世界みたいだなって。
安本 いいなあ。青春だね。
桜木 2人がすごく頼もしく見えたし、すごくうれしかったです。
愛される準備ができてる君に贈る歌
──今のお話にも出てきましたが、ここからはSSAでも披露されたニューシングル「SCHOOL DAYS」やそのカップリングに収録されたユニット曲の話を。まさに昨日、小林さんの卒業が発表されたばかりですが、「SCHOOL DAYS」は卒業発表を受けると少し意味合いが変わってくるような。あらかじめ小林さんの卒業ソングとして書かれた曲なのでしょうか?
真山 杉山勝彦先生が「愛される準備ができてる君に贈る歌」というフレーズで表してくれました。直接的なお別れの表現ではなく……愛される準備ができているから、次に進む準備ができてるから卒業するんだよ、という。すごくいい曲ですよね。
小林 めちゃめちゃいい曲。泣いちゃった(笑)。
──当の小林さんは、落ちサビのドラマチックなパートを担っています。
小林 そこのパートに行くまでに、めちゃめちゃ背中を押されるんですよ。えびちゅうは基本ソロパートが多いんですけど、この曲はサビを何人かずつに分けて歌ったり、ちょっと珍しい歌割りのパターンになっていて。何人かで歌って落ちサビまでつないでくれているからこその、なんか……「あああ、ありがとう」みたいな(笑)。安心して背中を押してもらえるような感覚で。そのあと落ちサビを歌うんですけど、この歌詞もすごく大好きなんですよ。
──「そうさ 僕らは永遠に無邪気な少年少女 ときめく希望をポケットにしまって さあ」という。
小林 えびちゅうはずっと「永遠に中学生」をコンセプトにしてきたグループで、年齢関係なく、いつでも中学生の心に戻れる。だからいつまでも、ときめきをポケットにしまってていいんだよ、どんぐりみたいにって。
一同 あははははは。
小林 改めてえびちゅうの好きな部分を感じられる歌詞だったので、そんな気持ちを伝えようとがんばって歌ってるんですけども……本当に愛されてるなって思いながら歌ってます。
──この春のシーズンにリリースされる、広い意味での卒業、旅立ちの歌としてももちろん解釈できますし、SSAのクライマックスで披露された段階では、また違う意味合いを持って響いていたと思います。
真山 そうですね。えびちゅうの15周年を飾るさいたまスーパーアリーナという場所で披露する最新の楽曲として、ファミリーとの絆、「常に私たちは愛し愛される関係だよ」ということを、私たちもパフォーマンスを通して実感させてもらったなという感覚がありました。レコーディングの段階では寂しさもいっぱいだったんですけど、ライブで歌うと、すごく勇気をもらえる歌だなって。
──えびちゅうファミリーやメンバーの皆さんにとっては、6月末まですごく限定した意味合いの強い楽曲になることは間違いないですけど、その先はきっとそうやって広く「新しい道を選んだ人の背中を押す応援歌」として受け入れられるかもしれませんね。
真山 新生活が始まったばかりのこの時期に、きっと寂しい気持ちになっている方もいらっしゃると思うので、「えびちゅうはいつも味方だよ」みたいな、そういうふうに元気を出していただけたらなと思います。
ココユノノカ&エマユナ、大舞台で初披露したユニット曲
──ユニット曲は、SSAではライブ中盤にまとめて披露されました。まずはエマユナコンビの「すたーてぃん」ですね。
仲村 大変でした(笑)。キーが高くて息継ぎする場所がないんですよ。レコーディングでは気付かなかったんですけど、リハで「これはどう歌えばいいんだ?」って。それで急遽ライブバージョンに変えてもらったら、ちょっと心に余裕ができました。初披露なのにファミリーの皆さんはもう名前のコールを入れてくれたり、間奏ではウリャオイと叫んでくださったり。新曲1回目でコールが来るなんて体感したことなかったので、初めての経験でうれしかったし……振付がいい感じにお花みたいでかわいかったでーす。
小林 ふふふ。
桜井 私は「すたーてぃん」の歌詞がめっちゃ好きで。「きっと花瓶と花みたいにね 違うものなのに一緒なら お似合いになるの」という歌詞がエマユナみたいだなーって思いました。尊い感じも表現しつつ、2人の「歌い上げたいぞ!」みたいな部分もこの曲で出せたかなって。衣装も人形が付いていたりして、すごくかわいかったのでうれしかったです。
──SSAのライブでは懐かしい過去の映像が使われたりしていたのもあって、転入まもない2人のベーシックなポテンシャルの高さを感じるというか……昔のえびちゅうはもっとフニャフニャしてたよなあと。
安本 確かに(笑)。
中山 私たちとはレベルが違う(笑)。
──と言いながらも、どこかあの頃のえびちゅうと通じる何かをエマユナ、ココユノノカの下級生チーム5人にはすごく感じるんですよね。それが何かと具体的に言葉にするのが難しいんですけど、言いようのない「えびちゅうっぽさ」がある。つくづく不思議なグループだなと思います。ココユノノカのユニット曲「王様の耳はパンの耳」は強烈なえびちゅうイズムを感じました。
風見 私たちが最初に聴いたときは、3人でLINEしてたんですけど、みんな「これ聴くのは楽しいけど、歌うのは難しいよね」って(笑)。正直、難しすぎてどう歌ったらいいのかわかりませんでした。サビはそれぞれ違うところを歌っているので、それぞれがちゃんとしっかり歌わないと成立しなくなっちゃう。それをさいたまスーパーアリーナで初披露するというのが本当に心配でした。曲自体のパワーが強い分、パフォーマンスがいまいちだと「あれ? あんまりよくなかったな」って思われちゃうんじゃないかなって。
小久保 「心菜はラップで、和香は高い声で歌い上げて、柚乃はセリフパートがあって……コールができて、ちょっと昔のえびちゅうっぽい感じの曲」ってお願いして作ってもらった曲なんですよ。
──歌詞はそれぞれのキャラクターに合わせた当て書きですよね。
小久保 普段のえびちゅうの曲は、レコーディングでは1人でフルコーラス歌って、あとで歌割りが決まるんですよ。でも「王様の耳はパンの耳」は最初からパートが決まっていたから、慣れてなくて難しかったよね。
風見 難しかった。
桜木 でも、予想はしてましたけどファミリーの皆さんは初披露のときから「パン! パパン!」とか「コメ!パン!コメ!パン」とか完璧なコールをしてくれて、めっちゃ楽しかった。振付に挑戦できたことが自分的には成長ポイントかなと思います。
──振付師・桜木心菜の誕生もSSAの大きな収穫の1つですね。本人としてはどうでしたか?
桜木 頭抱えました。ホントに。振付を担当したいというのが19歳の目標の1つだったので、それがSSAで叶えられたのが、しかもココユノノカの曲でできたというのが本当にうれしかったです。
ニコイチで11年のカホリコ、意外とレアな“まややす”コンビ
──カホリコのお二人は去年コンビ10周年公演も行いましたが(参照:コンビで10年、私立恵比寿中学の小林歌穂×中山莉子「カホリコ」ライブで友情再確認)、ユニット曲「君のそーゆーとこ」はいかがでしたか?
小林 この曲はもう、この2人にしか出せない空気感というかね、ピクニックしてる姿をみんなに見守ってもらってるみたいな。
中山 アハハハ。なんかもう平和な。
小林 妹ちゃんたちの頼もしい姿をバンバン!って見せられて、そのあとに1回ほっこりしてもらうみたいな空気感で(笑)。歌っていて「ここは代々木公園かな?」って……。
安本 代々木公園なんだ(笑)。
小林 そんな気持ちになりつつ、本当に幸せを感じられる時間で。なんだろうな……莉子ちゃんとこういう曲を歌えてよかったなって思いました。
中山 うん。歌穂ちゃんがいるうちに2人でちゃんとユニット曲を歌えたことが、すごくうれしくて。歌詞もお気に入りなんですけど、SSAではアレンジバージョンとして曲終わりにセリフを追加したんですよ。そこがすごく気に入っています。歌穂ちゃんの「おばあちゃんになるのが夢なんだよね」という会話から、急遽セリフを付け足して。
小林 ホントに普段のカホリコの会話みたいな感じでね。
──2人は加入当初からずっとニコイチのコンビとして活動してきたので、感慨深さもありつつ、コンビでの活動ももうすぐ終わるのかと思うと寂しいですね……。そして真山さん安本さんは、気が付けば結果コンビになっていましたが(笑)。
真山 気が付けば(笑)。
安本 コンビになっちゃいましたけど、2人は加入した時期も違って、最初の頃はどちらかというと真山と瑞季がコンビっぽかったし、私は同期で入った(杏野)なつとセットになったり、くっつきブンブン(安本、廣田あいか、松野莉奈、柏木ひなたの同学年ユニット)があったり……なんとなく真山とはイメージの違うところにいて、実はあまり交わらなかったんですよ。
真山 意外とね。2人だけで歌うのは2019年のファンクラブイベントで「光年の愛」(廣田・柏木のユニット曲)を歌って以来らしいよ。
安本 そっかー。表だったペア感はなかったけど、私はもう実の姉のように慕っていて(笑)。
真山 私も実の妹のように思ってるよ。最初の頃はお母さんを介してしか会話が成立しなかったけど(笑)。いつの間にか2人でねー。まさか居残り組がこの2人になるなんて思わなかったけど。だからこそ……2人のユニット曲は「明日」というタイトルですけど、私たちは最近過去を歌うことが多かったから、明日を積み重ねて今こうして活動している私たちが「明日」という未来を歌えることがうれしくて。「光年の愛」は難しいなーと思ったけど、「明日」は3声のハーモニーでさらにムズい。でもSSAではうまくまとまってよかったなって。
──「明日」はすごくグッとくる曲ですし、長年かけて成長してきた2人の質感の異なる声が、美しいハーモニーとして重なる様は圧巻でした。15周年のプレイリスト企画でいろんな曲を聴き返したあと、SSAで「明日」を聴いて「いろいろ形が変わっても、この2人の声があればえびちゅうはずっとえびちゅうなんだろうな」とも思いました。
真山 うれしいね。ありがたいです。
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小林歌穂、えびちゅうを卒業