ナタリー SUPER PowerPush - ドレスコーズ
“ポップ”アルバム「バンド・デシネ」の謎
「ポップ」が僕にできる精一杯の真心
──ではあえてストレートに聞きますけど、どうしてポップなものにしようと思ったんですか?
それが僕にできる精一杯の真心だからです。「ポップ」っていうのは大衆のためのもので、それは僕の得意とするところだと思うし。1stアルバムを作り終えたドレスコーズの第2の挑戦というのが、「ポップ」なものをこのメンバーでやることだったので。精神世界のことだとか、「永遠とは?」みたいなことだとか、そういうこともこの仕事をやっていれば当然関わりが深くなっていくこともあるんですけど、今回は「生きる」ってことを真っ当にやってみたくなったんです。目に見えるものを欲しがって、目に見えるものを手にして、そして死にたい。それが自分にとって「ポップ」ってことなので。
──だから、このアルバムはとても素晴らしい曲が12曲詰まったロックンロールアルバムであると同時に、アルバム全体が志磨さんのポップ論、芸術論になっているんですよね。そこがすごいところだし、志磨さんが作ってきたこれまでの作品との大きな違いだと思いました。
うんうん。そうかもしれませんね。
──このアルバムはとてもライブ映えしそうな曲が多いのも特徴ですけど、最近の日本のロックシーンにおける4つ打ち的ないわゆるアガる曲とは違って、あくまでもバンドのグルーヴで、メロディの力で、言葉の力でアゲる作品になっていて。改めてドレスコーズというバンドの存在意義が刻まれた作品だと思うんですね。
そこはもうね、やっぱりロックンロールの良心ですから(笑)。「ロック」と「ロール」、どちらかが欠けてもダメですから。僕自身はバカっぽいダンスミュージックとかも大好きだし、Pファンクとか聴いて一生踊ってたいとも思うこともあるし。一方で、インテリっぽいポストパンクのバンドとかも大好きですけど。自分がやるとなったら、そのどちらかだけだと納得できないんですよね。「ロックンロールは人を悩みから解放してはくれない。悩みを抱えたまま人を踊らせる」というピート・タウンゼント(The Who)の名言がありますけど、それがすべてを言い得てますね。
──そういう意味では、今の音楽は逃避の意味合いが強くなっているかもしれませんよね。「悩みを抱えたまま踊らせる」感じは、あまりしない。
どうでしょうね。みんな悩みはあると思いますけどね。でも、そういうものと音楽を結びつけたがらない傾向はあるかもしれませんね。ハレの場としての音楽と、ケとしての個人が切り離されてる感じというか。
──フェスなんてまさしく祝祭、そのまま「ハレの場」という意味ですからね。
そう。僕なんかはね、昔から本当に音楽ばっかり聴いてたから、ハレもケも全部音楽の中にしかないんですよ。
レコードやCDには収まりきらない生き方をみんなに教えてあげたい
──この作品をリリースしたあとのツアーというのは、これまでとはちょっと違ってくるんじゃないですか?
なんかね、正しいことをしたい。“Do the Right Thing”って感じですね。
──スパイク・リーの映画ですか?
いや、そこからきてるんでしょうけど、ちょうど昨日読んだ長尾謙一郎さんのマンガ(「クリームソーダシティ」)にそういうユニット名が出てきて、それに感化されて(笑)。
──まさに「少年マンガ原理主義に則って」(※「ゴッホ」の歌詞の一節)ですね(笑)。
そう(笑)。でも、本当にそう思うんですよ。自分たちの正義、やり方、アティチュード、ものの選び方、遊び方、カッコのつけ方。ドレスコーズの音楽には、それが全部くっついてる感じがしていて。そういうものを、もっとキッズに知ってほしいんですよ。そういうものをみんなに教えてあげたい。
──自分たちの役割はそこにあると。それはすごく力強い発言ですね。
そうですね。これ自分の中でも新しい意見で、今言いながらちょっとビックリしてるんですけど(笑)。でも、本当にそう思ってるんですよ。何がインでアウトか。何がクールか、何がヒップか。それって音楽だけじゃなくて、レコードやCDには収まりきらない、生き方すべてに関わってくることなんですよ。僕はそれを音楽からすべて教えてもらったので、これからは自分がそういうものを見せていく側になっていきたい、なっていかなきゃと思ってます。
- ニューアルバム「バンド・デシネ」/ 2013年11月6日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3465円 / COZP-808~9
- 通常盤 [CD] 2940円 / COCP-38213
CD収録曲
- ゴッホ
- どろぼう
- Zombie(Original Ver.)
- ハーベスト
- トートロジー
- シネマ・シネマ・シネマ
- Silly song, Million lights
- Eureka
- (She gets)the coat.
- Teddy Boy
- We are
- バンド・デシネ
初回限定盤DVD収録内容
Live at 日本青年館(2013.3.8)
- 誰も知らない
- TANGO, JAJ
- Puritan Dub
- ストレンジピクチャー
- レモンツリー
- Automatic Punk
- ベルエポックマン
- Trash
ドレスコーズ
志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)、山中治雄(B)による4人組ロックバンド。2012年1月1日に山中を除く3名で初ライブを実施。同年2月に山中が加入し、現在の編成となる。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」を発売し、2013年3月には本作を携えた全11公演の全国ツアー「the dresscodes TOUR」を成功に収める。同年8月、フジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマに採用された「トートロジー」を2ndシングルとしてリリース。11月6日には2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発表する。
2013年10月29日更新