ナタリー SUPER PowerPush - ドレスコーズ
甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)×志磨遼平(ドレスコーズ)対談
ヤコペッティの脳みそが好き
志磨 僕は中学生の頃、ヒロトさんが何かの雑誌で「Generation Xのレコードに感動した」って言ってるのを読んで、地元のレコード屋に買いに行ったことがあるんです。で、「G」の棚を見ながら「ヒロトが言ってたのなんだっけ? ジェ、ジェ……Genesisだ!」と思ってGenesisのレコード買って帰ってきたことがある(笑)。
ヒロト あはは!(笑)
志磨 で、聴いてみたら「あれ? なんかヒロトが言ってたのと違う……」って。
ヒロト へー、Genesisは申し訳ないけど1枚も持ってない(笑)。でもあの頃はわけわからんまま、ただがむしゃらにむさぼり食ってたわけだけど。わりと間違ってなかったよね。
志磨 そうですね。
ヒロト なんかその嗅覚だけはちゃんとあったんだよね。いるものだけ食べ続けて、いらんもんは捨ててきてたと思う。
志磨 マンガでもなんでもそうですよね。本屋さん行くと読む前から、こう光ってるやつがある。
ヒロト そう、不思議だよね。結局その感覚があれば音楽じゃなくてもいいんだよな。絵でも映画でも同じなんだよ。
志磨 映画は子供の頃から観てました?
ヒロト 僕の子供の頃はテレビの吹き替え版の映画の黄金時代だったんだよ。だから1週間に5、6本は観てた。バリバリカットされてて、日本語に訳されて、声優さんの表現が入ったものだったけど。ものすごく好きで観てたよね。
志磨 その頃好きだったのは?
ヒロト マカロニウエスタンが大好きだった。あとグレゴリー・ペックが出てた「白鯨」もものすごく心に残ってる。そんで中学のときに観て、自分の性格まで決めちゃったんじゃないかと思う映画はグァルティエロ・ヤコペッティの「世界残酷物語」。あれは今も好きでたまに観るよ。あの人の作品は「世界女族物語」とか「さらばアフリカ」とかも素晴らしい。
志磨 今度観てみます。「世界残酷物語」しか観てないや。
ヒロト ヤコペッティの脳みその中が好きなんだよ。そういうことない? 例えばボブ・ディランとか聴いてて、この人の脳が好きなんだって思ったり。その人の脳の回路の組み方とか。
志磨 あー、作品だけじゃなくて。
ヒロト 全部好きになるんだよね。照れ方とかカッコ悪さとかも含めて。あ、この人今カッコ悪く見えとるけど、このときたぶんカッコよくしたくなかったんだなってとこまでわかっちゃう。
志磨 うんうん。
ヒロト もちろん自分の想像や妄想だよ? 本当の脳のことなんかわからない。でも錯覚でもよくて、僕はヤコペッティの脳が大好きなんだ。
20歳超えたらあとはずっと余生
志磨 ヒロトさんはおじいちゃんになった自分をイメージすることはありますか?
ヒロト うーん、自分のイメージがもともとあんまりないからね。なんか自分を記号化するやり方ってあるじゃない? それはエンタテインメントとしては常套手段でさ。何もかも決めちゃう。しゃべり方からファッションから音楽の作り方からいろんなもののイメージを全部決めて例えばドラえもんみたいなキャラクターを1つ作ってしまえば、非常にポップな存在になれるし、エンタテインメントとしては大成功だと思うんだけど。でもそれができないんだよ。それが僕の中のコンプレックスにもなってて。
志磨 へー!
ヒロト それができれば、もっとプロになれるんだけど。俺はただ音楽が好きでただ音楽やってるだけじゃん、プロじゃないじゃんって思うときはよくあるんだ。そういうのも含めて自分というもののイメージがよく把握できてなくて。だから将来のことなんてもっとわかんない(笑)。
志磨 そうかー。
ヒロト ジジイになってもただ生きてるんじゃないかな。そんでたぶんそんときも「ダメだなあ俺は」って思ってんじゃないかな(笑)。
志磨 なるほど。僕は老後はなんか幸せな余生みたいな、漠然としたイメージだけがありますねえ。
ヒロト ふふふ(笑)。それを言えば今だってそうじゃん。
志磨 あー、そうかもしれない。
ヒロト ロック好きなやつはみんな20歳超えたら余生だよ。もうずっとそれが続くだけだもん。レコード聴いて、気が向いたら歌って。
志磨 そうですね。
ヒロト なんの荷物も背負わんでよくて、好きなことやればいいんだよ。それができてない人はたぶんね、免罪符が欲しいんだよね。
志磨 免罪符?
ヒロト こんな幸せだとバチが当たっちゃうと思ってるから苦労しようとする。なんか背負いたくなるんだね。背負うという娯楽だね。
志磨 日本人は浪花節みたいの好きだから。
ヒロト ただなんとなくやっててヘラヘラしててうまくいってる人のことを認めるのは悔しいんだと思う。
志磨 初めっからできることがあるっていうのを誰も信じてくれないですね。
- ドレスコーズ ニューアルバム「バンド・デシネ」/ 2013年11月6日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3465円 / COZP-808~9
- 通常盤 [CD] 2940円 / COCP-38213
CD収録曲
- ゴッホ
- どろぼう
- Zombie(Original Ver.)
- ハーベスト
- トートロジー
- シネマ・シネマ・シネマ
- Silly song, Million lights
- Eureka
- (She gets)the coat.
- Teddy Boy
- We are
- バンド・デシネ
初回限定盤DVD収録内容
Live at 日本青年館(2013.3.8)
- 誰も知らない
- TANGO, JAJ
- Puritan Dub
- ストレンジピクチャー
- レモンツリー
- Automatic Punk
- ベルエポックマン
- Trash
- ザ・クロマニヨンズ ライブアルバム「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」/ 2013年12月25日発売 / アリオラジャパン
- 「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」
- 初回限定仕様盤[CD] 3059円 / BVCL-568
- 完全生産限定アナログ盤[アナログ2枚組] 4200円 / BVJL-7/8
収録曲
- Opening(イエティ 対 クロマニヨン 愛のテーマ)
- 突撃ロック
- 黄金時代
- 人間マッハ
- 涙の俺1号
- チェリーとラバーソール
- 欲望ジャック
- ゴー ゲバ ゴー
- 他には何も
- 団地の子供
- ホッテンダー
- 恋に落ちたら
- とがってる
- 日本の夏ロックンロール
- 炎
- ヘッドバンガー
- グリセリン・クイーン
- 底なしブルー
- 鉄カブト
- エイトビート
- 紙飛行機
- 燃えあがる情熱
- 南から来たジョニー
- 雷雨決行
- ナンバーワン野郎!
- 初回限定仕様:紙ジャケット仕様
- 完全生産限定アナログ盤 24ページ写真集付き
ドレスコーズ
志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)、山中治雄(B)による4人組ロックバンド。2012年1月1日に山中を除く3名で初ライブを実施。同年2月に山中が加入し、現在の編成となる。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」を発売し、2013年3月には本作を携えた全11公演の全国ツアー「the dresscodes TOUR」を成功に収める。同年8月、フジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマに採用された「トートロジー」を2ndシングルとしてリリース。11月6日には2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発表する。
ザ・クロマニヨンズ
1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に、2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人組で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを敢行。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2013年2月には通算7枚目となるアルバム「YETI vs CROMAGNON」をリリース。本作を携えた全国ツアーの模様を収録したライブアルバム「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」を12月25日に発売する。
2013年10月29日更新