ナタリー PowerPush - ドラマチックアラスカ
物静かな“最終兵器”が秘めたる野心と自信
身体性こそが感情を揺さぶるトリガーになる
──メンバーの皆さんもアルバムを作ることによって意識の変化みたいなものはありました?
マルオカ やっぱり変わりましたね。ツアーを回ったことが大きくて。地方とかに行っても僕らの音楽を聴いてくれる方がいるのがわかったら、プレッシャーとはまた違う、これからもいいものを作っていきたいし、そういうものを作っていかなきゃダメだっていうのはすごい思いましたね。
トバ お金を払ってわざわざ僕たちのライブを観に来てくれるのに楽しくなかったら申し訳ないじゃないですか。だから当たり前なんですけど、これまで以上に責任を持って演奏をするなり、曲を作るなりするようにはなりました。
ニシバタ それにライブでしか味わえないものってあると思うんですよね。ライブは立って観るから身体を自由に動かしたりできるじゃないですか。で、ドラムっていうのはそのお客さんの身体に直接響く楽器だと思っていて。そういうことも意識して、今回のアルバムでもリズムなりフレーズなりを作っていってますし。
──その身体を揺り動かす感じっていうのはこのバンドの楽曲にとってけっこう重要なことですよね。
ヒジカタ そうですね。ライブハウスって楽しい場所やと思うんです。で、そこで踊れたらもっと楽しいかなっていうのはありますね。そのための歌みたいなことはちょっと意識しているかもしれないです。
──ヒジカタくんのメンタリティを共有してほしいっていう思いももちろんあるとは思うけど、その前に有無を言わさず身体を揺り動かしてしまうような楽曲を鳴らしたいという感覚がある?
ヒジカタ ある曲を聴くようになったり、好きになったりするときの取っ掛かりって、やっぱりその身体を揺り動かされる感じだと思うんですよね。それが結果的にその人の感情を揺り動かすトリガーみたいなものになればいいなっていう。僕はそう思ってます。
“オーロラを待つ”ための準備はできている
──実際に完成したアルバムを自分たちで聴いてみて、どんな感想を持っていますか?
マルオカ ホントにいいミニアルバムになったと思います。単純に音のクオリティも上がっていると思うし、いろんなところにこだわって作れた作品なので。
ニシバタ 作っている段階でも1曲1曲できあがるごとに納得いくものができたっていう感じがあって。なので達成感みたいなものはすごくありますね。
トバ いろんな経験をしたり、いろんな人の意見を聞いたりしながら、自分たちの技術も上がっていって。そうやって作ることができたので、これで満足しちゃいけないものの、とりあえず今までで一番いい作品ができたとは思いますね。
ヒジカタ 今回の制作を通じて自分たち自身発見したものも多かった気がしていて。このバンドを始めたきっかけが、さっき言ったみたいに「ライブをしたい」っていうすごいシンプルな理由やったんですけど、今回いろいろ制作していく中でバンドを続けている意味みたいなものをひとつひとつ見つけていけた感じはしていて。進化しているなっていうのは、自分たちでもすごい感じていますね。
──「オーロラを待っている」というタイトルにはどんな意味が込められているんですか?
ヒジカタ アラスカつながりで出てきた“オーロラ”っていう言葉は、“きれいな景色”を意味しているんですよね。やっぱり今まで悔しい思いを感じる場面もいろいろあったというか、それこそ全国ツアーとかに関しても僕らはまだどこでも満員になるような動員力もないですし。そういう部分でもいろいろ感じることがあって……。
──ヒジカタくんって実はけっこう理想が高いですよね?
マルオカ (笑)。けっこう上のほうを向いていますよね。
ヒジカタ でもそうじゃないとやる意味がないと思っているんですよね。だから、アルバムタイトルの“待っている”っていうのは、けっして消極的な意味ではなく、自分たちのできる限りのことをやりながら、そういうきれいな景色をいつか見たいと思っているっていう。そういう意味での“待っている”なんですよね。
──きれいな景色=大観衆の前に立つ準備が整った、バンドとしての意思が固まったみたいなニュアンスも?
ヒジカタ そうですね。ここで終わりでは全然ないと思っているし、前回からの進化の過程っていうのを見てほしいなっていうのもあって。前回が1話だとしたら、今回は2話っていう感じで、たぶん全部がつながっていくものやと思うし、これからもきっとそうなると思うので。シリーズとしてつながっていくものとして見てほしいんですよね。
トバ 僕らみたいな駆け出しのバンドを聴いてくださる方っていうのは、きっと僕らの中に何か可能性みたいなものを感じてくれているんだと思うし、これから成長していく過程をきっと楽しみにしてくれていると思うんですよね。だからその期待に応えつつも、1章、2章というか、成長の過程の初期段階として今回のミニアルバムを聴いてもらえたらうれしいなって思います。
ヒジカタ そこは僕らもすごく楽しみにしているところではあるんですよね。このミニアルバムをリリースしたあと、ライブをやっていく中でまたいろいろと精神的な面にも影響してくると思うので。
「まあ正直、自信はありますね」
──なんか面白いバランス感のバンドですよね。皆さん一見飄々としているようなんだけど、実はけっこう理想が高いというか、密かに自信を持っているというか。
マルオカ まあ正直、自信はありますね(笑)。
ニシバタ 口に出してはっきり言うっていう感じではないけど、行くところまで行きたい気持ちはもちろんあります。
トバ 確かに半年前とかに比べたらもっと大きな夢を見てもいいのかなっていうのは、ちょっと思っていたりします。
ヒジカタ 以前はどこか「俺らなんて……」みたいな部分が正直あったと思います。でも今はツアーを回る中で付けていった自信であったりとか、前回の作品への反応に対する自信であったりとか、その密かな自信みたいなものがどんどん確信になっているところもあって。今回のミニアルバムからそういう部分も感じてもらえたらなって思いますね。
収録曲
- 和心
- スーパーソニック
- それでも生きている
- 怠惰故
- シチヘンゲ
- 打ち上げ花火
- 星になる
ドラマチックアラスカ
ヒジカタナオト(Vo, G)、トバナオヤ(G)、マルオカケンジ(B)、ニシバタアツシ(Dr)からなるロックバンド。2010年同じ高校に通う4人で結成して以来、兵庫・神戸を中心に活動を開始する。2013年4月に地元神戸ポートアイランドのワールド記念ホールと神戸夙川学院大学で開催されたチャリティーフェス「COMIN' KOBE13」の「ESP BLACK STAGE」で大トリを務めるなど、ライブを積極的に展開する一方で同年6月に1stミニアルバム「ドラマチックアラスカ」をリリース。その後、初のライブツアーの開催や、「MINAMI WHEEL 2013」「MEGA★ROCKS 2013」などの大型イベントへの出演を経て、11月、いしわたり淳治もプロデューサーとして参加した2ndミニアルバム「オーロラを待っている」を発表した。