ナタリー PowerPush - ドラマチックアラスカ
物静かな“最終兵器”が秘めたる野心と自信
今年6月にリリースした初の全国流通盤「ドラマチックアラスカ」で、鮮烈な印象を残した神戸発の4人組バンド、ドラマチックアラスカ。その彼らが、早くも2ndミニアルバム「オーロラを待っている」を完成させた。初の全国ツアーを経てより確かなものとなった自信と確信を、綿密に構築されたサウンドとエモーショナルな言葉で打ち放つ全7曲入りの本作。大いなる可能性を秘めた“神戸の最終兵器”こと、ドラマチックアラスカとは果たして何者なのか? 彼らのホームである関西の地まで足を運び、直撃取材を試みた。
取材・文 / 麦倉正樹
とにかくライブをしたかったからバンドを結成
──まずは、結成のいきさつから教えてもらえますか?
ヒジカタナオト(Vo, G) えーと、高校の先輩(マルオカ、トバ)と後輩(ヒジカタ、ニシバタ)なんですけど、僕とトバくんが中心となってメンバーを集めたんです。高校の文化祭とかに出ている中で楽器が上手やった人たちをとりあえず連れてきて結成したっていう感じですね。僕自身は最初BUMP OF CHICKENとかELLEGARDENとかを聴いて、そういうのをコピーしていたんですけど「コピーじゃなくて、ちゃんとバンドを組んでオリジナルをやってみたいよね」っていう話をトバくんとしていて……。
トバナオヤ(G) 僕とヒジカタが同じ軽音楽部に入っていて、インディーズで活動している先輩のバンドを観に2人でライブハウスに行ったときに「カッコいいな……俺たちもちゃんとバンドをやってみたいよね」っていう話になったんです。
ヒジカタ そう、とにかくライブがしたかったんですよね。でもライブハウスに出るためにはどうやらコピーじゃいけないらしいっていうことがわかって……。
──ああ(笑)。
ヒジカタ それでまずは曲を作ろうと思って、自分でいろいろ曲を作ってみたりとかして。普通の人は音楽で何かを伝えたいとかっていう動機で曲を書き始めたりすると思うんですけど、僕はあんまりそういうのがなくて……。とにかくライブをするために自分で曲を作り始めた感じなんですよね。
──ライブハウスにはよく行っていたんですか?
ヒジカタ いや、ライブハウスにも実はそんなに行ったことがなくて……。なんかすごく敷居の高い場所っていうイメージやったんです。
──それでもライブハウスでやりたかった?
ヒジカタ 文化祭とかって年に1回しかないし、しかも選ばれた人たちしか出られないというか、学校とかでもわりと目立つ人ばかりが出ている印象があって。恒常的にライブをやるためにはやっぱライブハウスしかないんじゃないかなって思ったんですよね。
──ちょっと面白い発想な気もします。
ヒジカタ (笑)。普段からあまり日の光を浴びて生活している人間じゃなかった感じやったんです。クラスとかでもイケイケなコミュニティには属せなかった人間なので。そういう自分が唯一みんなに見てもらえる、全員から注目される場所が文化祭で。それが楽しいっていうことに気付いたのも文化祭だったんですけど、年に1回じゃ物足りなくて。
憧れられたくはないけど、何をすべきかもわからない自分
──そしてマルオカくんとニシバタくんを誘ってみたと。
マルオカケンジ(B) ヒジカタのことは正直あんまりよく知らなかったんですけど、誘われてしばらく経った頃にいきなりデモみたいなのがメールで送られてきて。で、それを聴いてみたらすごくよかったんですよね。メロディと言葉の使い方がすごく独特で、これはいいなって思って。それで一緒にやってみることにしたんですよね。
ニシバタアツシ(Dr) 僕はもともと文化祭とかでヒジカタと一緒にやっていたりはしたんですけど、そのときはほかのバンドもやっていたんですよね。でも、ヒジカタがオリジナルをやりたいってなってデモを聴かせてもらったら、やっぱりそれがすごくよくて。
──それっていつ頃の話なんですか?
ヒジカタ 3年前の6月ぐらいですね。で、結成から2、3カ月くらいに確か初ライブをやったんだと思います。
──念願のオリジナルバンドを組んだヒジカタくんはどんな感じの音楽をやってみようと思ったんですか?
ヒジカタ 正直「バンドとして」っていうところまでは深く考えてなくて。曲作りの部分で打ち出したかったのはとにかく僕の普段の生活。どちらかというと日陰で生きているような僕の毎日だったりとか、学校生活で人気者とかにあたるコミュニティに対しての憧れというか……。別にそうなりたいわけじゃないんだけど、でも自分自身がどうしたらいいのかもわからないっていう気持ちやったりを、全部曲にぶつけていた感じですね。
──そんなにひどい日々だったんですか?
ヒジカタ いや、別にそんなに悪くはないんだけど、けっして満足はしていないっていうような。今にして思うとたぶんそういう毎日やったなと。
言葉よりもまずは曲ありき
──ただ、そういう鬱屈とした気分を吐き出すようなサウンドにはあまりなっていませんよね?
ヒジカタ 僕たちの核の部分はthe pillows的というか、唯一メンバー全員が好きで聴いているのがthe pillowsやったりするので、ヌケがよくて強い感じのギターロックサウンドになってるのかなって思ってます。
──でもthe pillowsともまたまったく違う音になっています。
ヒジカタ そうですね(笑)。今のシーンで流行っている、そういう日本の音楽とかもけっこう好きで聴いているから、そういうものがブレンドされているのかなと。ただそういう流行りみたいなものに寄せ過ぎないっていうところで、the pillows的なメンタリティに引き戻されているというか。そういうブレンド感があるんだと思います。
──なるほど。確かにドラマチックアラスカの曲を聴いて、まず印象に残ったのは、さっきヒジカタくんも言っていたような音のキレのよさとビート感だったんですよ。鬱屈とした感情云々よりも、曲のカッコよさが前面に出ていますよね。
ヒジカタ あ、それはちょっと狙っているところではありますね。やっぱりまずは音やと思うんですよね。曲ありきの歌詞やとも思うので。それが表れているんじゃないですかね。あと、僕のデモは弾き語りでメロディの部分しか作らなくて、それをメンバーに投げておのおの固めていってもらうっていうやり方なので。そういうメンバーの個性みたいなところで自然と組み上がっていったものなのかなとは思います。
収録曲
- 和心
- スーパーソニック
- それでも生きている
- 怠惰故
- シチヘンゲ
- 打ち上げ花火
- 星になる
ドラマチックアラスカ
ヒジカタナオト(Vo, G)、トバナオヤ(G)、マルオカケンジ(B)、ニシバタアツシ(Dr)からなるロックバンド。2010年同じ高校に通う4人で結成して以来、兵庫・神戸を中心に活動を開始する。2013年4月に地元神戸ポートアイランドのワールド記念ホールと神戸夙川学院大学で開催されたチャリティーフェス「COMIN' KOBE13」の「ESP BLACK STAGE」で大トリを務めるなど、ライブを積極的に展開する一方で同年6月に1stミニアルバム「ドラマチックアラスカ」をリリース。その後、初のライブツアーの開催や、「MINAMI WHEEL 2013」「MEGA★ROCKS 2013」などの大型イベントへの出演を経て、11月、いしわたり淳治もプロデューサーとして参加した2ndミニアルバム「オーロラを待っている」を発表した。