音楽ナタリー Power Push - 堂珍嘉邦
ソロデビューから3年、未来の自分に立てた“誓い”
反発心をぶつけたソロデビュー時期からの変化
──音楽ナタリーでは1stアルバムのタイミングで1度インタビューをしています(参照:堂珍嘉邦「OUT THE BOX」インタビュー)。そのときは「歌詞に苛立ちが出ている曲が多い」というお話をされていましたよね。
そうでしたね。最初は正直、これまでの活動に対する反発心が大きかったから、ソロでスパークしてやるぞっていう感覚だったんですよ。その着火剤になるのが苛立ちみたいな感情だったっていう。でも今は、単純に楽しんで音楽をやれている感じがあるから、もっと自分の中身、本質みたいなものを燃やして音楽に落とし込んでいくことが重要だなって思えるようになった。もっと言えば、楽しいっていう感情だけでもいいっていうか。
──どんな感情であれ着火剤にはなり得ると。
そうそう。いくらでも火を点けることはできると思うんですよ。今回の「義風堂々!!」とのコラボに関しても、面白そうだなっていう気持ちが着火剤となってやらせていただくことになりましたし。
──マンガの「義風堂々!!」は読んでいたんですか?
もちろん。もともと原(哲夫)先生の「北斗の拳」はドンピシャ世代ですし、そこから友情とか愛とかいろいろ学んだってくらい。「義風堂々!!」に関してもすごくいろんな要素が詰まっているし、自分としても大好きな作品だから「ぜひ!」っていう感じで。とは言え、もちろんどういった条件でコラボするかはしっかり確認した上で、だったんですけどね。
──その条件っていうのは?
まず「義風堂々!!」の2015年公式応援ソングという部分ですけど、どこでどういうふうに曲を使われるかを確認しました。あとは「コラボするなら2曲やりましょう」ってことだったんですね。「You&I」はもうすでに曲ができていたから、作詞と歌で参加する形でお願いしますと「義風堂々!!」の制作サイドから言われたんですよ。
──なるほど。だから「You&I」は堂珍さんのレギュラーバンドとは違ったメンツで制作されているんですね。
そうですね。で、もう1曲はぜひ自分の感じでやってくださいという条件でした。「義風堂々!!」は「花の慶次」のスピンアウト作品で、主人公は前田慶次ではなくて直江兼続だから、曲の雰囲気もそれに見合ったものにしてほしいと。それが僕にならできるだろうという判断で声をかけてくださったようだったので、そこは「もちろん」といった感じで。
──関わり方の違う2曲でコラボできることに興味を持ったわけですね。
うん。面白そうだと思って飛びつきました。
オルタナ色全開「Halo」とJ-ROCK感満載「You&I」
──「義風堂々!!」応援ソングの1曲目は「Halo」です。こちらが堂珍さんのカラーを思う存分に打ち出した楽曲ですよね。全編英語詞で攻めているのが面白かったです。
そうですね。Aliが作ってくれた「Halo」がかなりオルタナ寄りで、雰囲気的に絶対日本語がハマんない感じがしたので。「義風堂々!!」の制作サイドに英語詞が通るかわかんなかったけど、ここはしっかりゴリ押ししておこうと(笑)。そしたらわりとすんなりOKがいただけて、Aliとは「いけたぞ、おい!」なんてやり取りがありましたね。受け入れていただけてありがたかったです。
──歌詞に関してはどんなメッセージを込めましたか?
英雄というものは自らの生き様を貫きながら圧倒的な強さで敵を蹴散らしていく、だから光輪(=Halo)があるように見える、後光が射しているように見えるんだよっていうことを、ちょっと皮肉めいた視点で描きました。それをサウンドに合わせて疾走感のある感じで歌えば曲がより生き生きしてくるかなと思って。
──わりとディストーションを効かせたボーカルになっていますよね。
そこは自分的にちょっとトライをしてみた感じで。声もオルタナ寄りにして歪ませつつ、でもサビではファルセットを使うという組み合わせのバランスをコントロールしましたね。
──一方、先方から用意されていたという楽曲「You&I」は戦国モノにマッチした雰囲気。歌詞も作品の世界観にかなり寄せて書かれていますよね。
ここではもう“ボーカリストと作詞家”という肩書きでオファーに応えようと。歌詞はほんとに直球な感じで、サウンド面はかなりJ-ROCK寄り。直江兼続の生い立ちから、作品内でよく描かれている月を見ながらお酒を酌み交わしている風景、あとは兼続の兜の“愛”の文字をうまく拾って歌詞に落とし込みました。ちょっとハスキー気味に歌って“しゃがれよう”という意識でしたね。
──「Halo」とはカラーが異なる楽曲になりましたけど、ちゃんと堂珍さんの楽曲として昇華されているところが見事だと思いました。
そこはね、自分名義の作品としてちゃんといいものにしようっていうことで、自分の持っていきたい方向性に関しては事前に包み隠さずお話させていただいたんですよ。楽器の録りにも立ち会ったし、音色も一緒に決めていったり、こちらのアイデアを反映させてもらえたりもしたので、“ただ歌っただけの曲”にはなっていないというか。ミックス作業にも関わらせてもらいました。
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CD収録曲
- Halo
- You&I
- Time to fly
- evergrey
- Reflexion
DVD収録内容
- 「Halo」Music Video
- 「Halo」Music Video(義風堂々!!ver.)
- 「You&I」Music Video
- 「You&I」Music Video(義風堂々!!ver.)
堂珍嘉邦(ドウチンヨシクニ)
1978年生まれ、広島県出身。オーディション番組「ASAYAN」の男性ボーカリストオーディションを経て、2001年3月にCHEMISTRYとしてデビュー。1stシングル「PIECES OF A DREAM」以降ヒット曲を次々と発表し、CDの総売上げ1800万枚を誇る国民的アーティストになる。2012年7月より本格的にソロ活動をスタートさせ、同年10月に東京・渋谷公会堂でライブ「堂珍嘉邦 "A La Musique"」を開催し、11月にソロ・デビューシングル「Shout / hummingbird」を発表。自らの音楽性を「耽美エント(耽美+アンビエント)ロック」と位置付けており、CHEMISTRY時代とは異なるロック色の強いサウンドを構築している。2013年2月に1stソロアルバム「OUT THE BOX」を発表後、「堂珍嘉邦 TOUR 2013 "OUT THE BOX"」と銘打った全国ツアーを行った。2014年3月に2ndアルバム「Bronze Caravan」をリリースし、8月には広島東洋カープの堂林翔太選手のテーマ曲「Fly away」を配信した。近年はアーティスト活動以外にも活躍の場を広げており、2009年に映画「真夏のオリオン」で俳優デビューを果たす。2011年に上演された音楽劇で2014年に映画化された「醒めながら見る夢」ではいずれも主演を務め、映画では主題歌も担当。2015年9月にはミュージカル「RENT」に出演した。10月にレコーディングメンバーにPABLO(Pay money To my Pain)、Ali(MONORAL)らを迎えた新作ミニアルバム「VOWS」をリリース。