音楽ナタリー Power Push - 堂珍嘉邦
ソロデビューから3年、未来の自分に立てた“誓い”
今年7月でソロ活動の本格始動から3周年を迎えた堂珍嘉邦が、通算3枚目となるニューアルバム「VOWS」をリリースする。
本作には、原哲夫原作コミック「義風堂々!!」の2015年公式応援ソングとなる「Halo」「You&I」を含め、アルバムタイトルが意味する“誓い”をさまざまな視点で描いた全5曲が収録されている。ソロアーティストとして彼は今、何に“誓い”を立てようと思ったのか? 本人に話を聞いた。なおこの特集では、彼の楽曲やライブをサポートするPABLO(G / Pay money To my Pain)、Ali(B / MONORAL)、かどしゅんたろう(Dr)、堀向彦輝(Key)から寄せられたコメントも紹介する。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 西槇太一
ソロデビューから3年経って
──7月でソロデビューを発表してから丸3年が経ちました。その期間を振り返ってみての心境はいかがですか?
ソロのだいご味だと思うんですけど、すごく自由にやってこれている感じがありますね。これまでに2枚のアルバム(2013年「OUT THE BOX」、2014年「Bronze Caravan」)を出して、2回ツアーをやったことで、自分が何を、どんなふうに、どこまでできるのかなっていうところを試せている実感があるというか。
──その中で、ソロアーティスト・堂珍嘉邦の音楽性が確立してきた手応えもあります?
毎回、試行錯誤しながら、遊びながら、実験しながらですけど、振り返ってみればちゃんと階段を上っているなっていう感じはありますよ。
──ソロでの活動を見ているとPay money To my PainのPABLO(G)さん、MONORALのAli(B)さん、かどしゅんたろう(Dr)さん、堀向彦輝(Key)さんといった“堂珍バンド”とも言えるレギュラーメンバーとともに、堂珍さんなりのロックを遊びつくしている印象です。
サポートしてくれているバンドのメンバーがいることはすごく頼もしいですね。みんなそれぞれを認めあって活動しているので、自分がその真ん中に立って思い切り引き金が引けるんですよ。楽しく遊べるというか。このメンツで音を鳴らせばこういうサウンドになるよな、っていうこともすごく明確になってきていますね。
“歌手”って言われるとムカッときてた
──ご自身の歌に関しては何か変化はありましたか?
歌も常に実験してる感じですよ。1枚目のソロアルバムを今聴くと、自分の歌に対してすごい青くせえなって思いますからね。今回のアルバムだって、完成して聴き返したらもうすでに青くせえなって思う部分はあったりするし。なので、やはり日々、変化してるところはあるんじゃないかな。
──歌い方のバリエーションは確実に増えていますよね。
もちろん増えたと思うし、ちょっとタフになった部分はあると思う。リスナーには僕の声はハイトーンで繊細な歌声ってイメージがあったと思うんですよ、今までは。でも低音をしっかり出す歌もけっこういいんだけどなっていう自負はあったから、そこらへんを1人になったことでより出せるようになったんですよね。
──その裏にはデュオ時代のイメージを意識的に払拭したいという思いもあったんでしょうか?
んー、最初は多少あったとは思うんですけど、今は別にそこに対して悩んだりもしていないし、自然にやってる感じですよ。アルバムも2、3枚目になれば気負いもなくなるもんだと思うし。前は自分の呼ばれ方もすごく気にしてて、“歌手”って言われるとムカッときたりしてましたからね(笑)。伝えたいことを持って自分で曲も作るし、自分の楽曲は日本の音楽シーンの中でちゃんと評価されるべきものだろって思ってたから。
──ご自身の音楽に対する思いと、“歌手”という呼ばれ方にギャップがあったと。
今もその思いはゼロではないけど、まあそこはなんと呼ばれてもいいのかなって思えるようにはなったかな。つまり自分が作る音楽は「ここがいいところなんだよ」と思って構築してるけど、リスナーは自由に聴いてくれたらそれでいいんだなって。ライブなんかを含めて、音楽は楽しいものなんだっていうことが伝えられればいい。
──自分のエゴを押しつけることが正解ではないと思えるようになった。
うん。お客さんと一緒に楽しみたいっていう気持ちが一番大きいから。ソロになってみて、自分のことを知らない人がたくさんいる環境になったときに、そういうスタンスを持ってないと自分の音楽を聴いてもらうことすら難しいんだなって気付けたところもあって。だからね、まあうまいことやろうっていう(笑)。そんなことをソロ活動の中で学んだ感じですね。
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CD収録曲
- Halo
- You&I
- Time to fly
- evergrey
- Reflexion
DVD収録内容
- 「Halo」Music Video
- 「Halo」Music Video(義風堂々!!ver.)
- 「You&I」Music Video
- 「You&I」Music Video(義風堂々!!ver.)
堂珍嘉邦(ドウチンヨシクニ)
1978年生まれ、広島県出身。オーディション番組「ASAYAN」の男性ボーカリストオーディションを経て、2001年3月にCHEMISTRYとしてデビュー。1stシングル「PIECES OF A DREAM」以降ヒット曲を次々と発表し、CDの総売上げ1800万枚を誇る国民的アーティストになる。2012年7月より本格的にソロ活動をスタートさせ、同年10月に東京・渋谷公会堂でライブ「堂珍嘉邦 "A La Musique"」を開催し、11月にソロ・デビューシングル「Shout / hummingbird」を発表。自らの音楽性を「耽美エント(耽美+アンビエント)ロック」と位置付けており、CHEMISTRY時代とは異なるロック色の強いサウンドを構築している。2013年2月に1stソロアルバム「OUT THE BOX」を発表後、「堂珍嘉邦 TOUR 2013 "OUT THE BOX"」と銘打った全国ツアーを行った。2014年3月に2ndアルバム「Bronze Caravan」をリリースし、8月には広島東洋カープの堂林翔太選手のテーマ曲「Fly away」を配信した。近年はアーティスト活動以外にも活躍の場を広げており、2009年に映画「真夏のオリオン」で俳優デビューを果たす。2011年に上演された音楽劇で2014年に映画化された「醒めながら見る夢」ではいずれも主演を務め、映画では主題歌も担当。2015年9月にはミュージカル「RENT」に出演した。10月にレコーディングメンバーにPABLO(Pay money To my Pain)、Ali(MONORAL)らを迎えた新作ミニアルバム「VOWS」をリリース。