音楽ナタリー Power Push - 堂珍嘉邦

ソロデビューから3年、未来の自分に立てた“誓い”

“誓い”を立てたきっかけ

──今回は「義風堂々!!」とコラボしたこの2曲があった上で、シングルではなくアルバムを制作することになったんですか?

今回のプロジェクトに関してはKING RECORDSさんとやろうということになり、せっかくだったら5曲入りぐらいのアルバムにしようって話になったので、残り3曲をタンタンターンと仕上げて。

──その際、アルバムの全体像に関して何かイメージはありましたか?

堂珍嘉邦

PABLOと1曲、Aliと1曲、hico(堀向彦輝)と1曲ずつやろうっていうことをまず決めて。自分とバンドメンバー1人ひとりとの共同作業による化学反応を試すことは2枚目のアルバムでやっていたんで、それを改めてもう1回やってみようかなと。で、それぞれ自分で歌詞を書いていったんですけど。

──アルバムに“誓い”という意味の「VOWS」というタイトルがつけられたように、コラボ曲を含めたすべての楽曲でさまざまな“誓い”が描かれていますね。

うん。「Time to fly」は自分の未来に対して“Are you ready?”みたいな感じで前に進んで行くぞっていう誓いをしていて、「evergrey」では大切な人に対しての誓い、あと「Reflexion」でも自分自身への誓いをしてますね。「Halo」と「You&I」では友情みたいなものに誓いを立ててるし。5曲出そろったときに共通点を探したら、「これ全部、誓いだらけやな」と思って。

──最初から“誓い”をテーマにして作っていったわけじゃないんですか?

全然全然。たまたまですね。

──意識せずとも何かに誓いたいモードだったんですかね。

まあ、そうかもしれないですね。

自分の音楽に対して完璧に納得がいってる

──「Halo」「You&I」はどちらも疾走系のロックになっていますけど、あとの3曲は比較的ゆったりしたものになっています。そういう方向性になったのも今のモードだったんでしょうか?

ほっこりした感じになったのもたまたま、そういうタイミングだったんでしょうね。この先、4枚目のアルバムにつなげていくことを考えると、ここでもう1回自分自身をしっかり出しておかないといけないなってどこかで思ってたところがあったと思うんですよ。だからそういう歌詞になったし、サウンドに関しても柔らかい感じになったんじゃないかなって思うんですけど。

──それは今の堂珍さんがリアルににじみ出たものってことでしょうか?

願望も込めて、今の自分が言えること、表現できることっていう感じですね、きっと。

──「Time to fly」は、CHEMISTRYの7thアルバム「Trinity」(2012年発表)収録の堂珍さんソロ曲「She knows why」の続編をイメージして作られたそうですね。

はい。結果的に続編になったかはわからないけど、自分がアコギをガチャガチャ鳴らして、そのうしろでバンドがガツッと演奏してくれました。ある程度キャッチーなサウンド感っていうのは自分のカラーなのかもなっていうのは再認識することができましたね。歌も何も考えずナチュラルに歌えたし。

──続く「evergrey」はちょっとノスタルジックな雰囲気のミディアムナンバーですね。

この曲は転調させることでドラマチックな仕上がりになりました。ちょっと和風なAメロを付けたのは新しい試みだったし、Crosby, Stills & Nashっぽいコーラスの重ね方とか、ああいうちょっと古臭い感じが好きなんで。自分なりの大人のロックバラードができたからよかったです。

──そしてラストの「Reflexion」には、ご自身の思いが色濃く浮かんでいる印象で。ソロ3周年を経て、未来を見据えた曲だなあという印象を受けました。

堂珍嘉邦

故郷から夢を抱いて上京し、そこで経験した痛みや挫折みたいなものをストーリーとして描ければなと。で、最終的にはちょっとクサいけど愛に包まれながらまた進んでいくっていう。これはもうストーリーテラーになって歌詞を書いていった感じですね。

──結果、この物語は完全なフィクションではなく、ご自身の過去、現在、未来が詰まった曲になった。

そうですね。曲に寄り添いながら、自分のことを照らし合わせて書いていったので。「アレ? これってケミのときの俺の感じじゃね?」みたいな声の雰囲気にもなりましたね。

──本作を作り終えた今、未来に向けて具体的に思い描いていることはありますか?

まだ未来は白紙だからわかんないですけど、なるようになると思うんですよね。だから、なるようになるまでわからない(笑)。

──あんまり構想を練って動く感じではない?

1枚目2枚目の頃はわりと構想があったんですけど、最近はあんまりないかな。でも今回のアルバムであらゆることに“誓い”を立てたからね、ソロになっていろいろ大変なことも多いけど、粘り強くがんばりたいなって思ってますよ。テレビ業界なんかを見てて思うことがあって、結局のところ“続けてるもん勝ち”みたいなところってあると思うんですよね。パッと人気者になったけど一瞬で消えちゃって、「あの人は今?」みたいな紹介をされるよりも、常に2番手、3番手であっても、時間が経ったときに必要不可欠な存在になっているほうがいいなって。

──確かに。でも狙ってそのポジションに収まるのも簡単ではないですよね。

うん。だからこそ続けていくことが大事だなって。旬な存在にはもうなれないかもしれないし、逆にもう1周して旬になれるかもしれないし、それは誰にもわからない。だったら自分にできることは世の中や自分自身に対してアタックし続けることかなって。とりあえず今はね、自分がやってる音楽に対して完璧に納得がいってるから全然OKだと思います。

ニューアルバム「VOWS」2015年10月21日発売 [CD+DVD] 2350円 / KING RECORDS / KIZC-337~8 / Amazon.co.jp
「VOWS」
CD収録曲
  1. Halo
  2. You&I
  3. Time to fly
  4. evergrey
  5. Reflexion
DVD収録内容
  1. 「Halo」Music Video
  2. 「Halo」Music Video(義風堂々!!ver.)
  3. 「You&I」Music Video
  4. 「You&I」Music Video(義風堂々!!ver.)
堂珍嘉邦(ドウチンヨシクニ)

堂珍嘉邦1978年生まれ、広島県出身。オーディション番組「ASAYAN」の男性ボーカリストオーディションを経て、2001年3月にCHEMISTRYとしてデビュー。1stシングル「PIECES OF A DREAM」以降ヒット曲を次々と発表し、CDの総売上げ1800万枚を誇る国民的アーティストになる。2012年7月より本格的にソロ活動をスタートさせ、同年10月に東京・渋谷公会堂でライブ「堂珍嘉邦 "A La Musique"」を開催し、11月にソロ・デビューシングル「Shout / hummingbird」を発表。自らの音楽性を「耽美エント(耽美+アンビエント)ロック」と位置付けており、CHEMISTRY時代とは異なるロック色の強いサウンドを構築している。2013年2月に1stソロアルバム「OUT THE BOX」を発表後、「堂珍嘉邦 TOUR 2013 "OUT THE BOX"」と銘打った全国ツアーを行った。2014年3月に2ndアルバム「Bronze Caravan」をリリースし、8月には広島東洋カープの堂林翔太選手のテーマ曲「Fly away」を配信した。近年はアーティスト活動以外にも活躍の場を広げており、2009年に映画「真夏のオリオン」で俳優デビューを果たす。2011年に上演された音楽劇で2014年に映画化された「醒めながら見る夢」ではいずれも主演を務め、映画では主題歌も担当。2015年9月にはミュージカル「RENT」に出演した。10月にレコーディングメンバーにPABLO(Pay money To my Pain)、Ali(MONORAL)らを迎えた新作ミニアルバム「VOWS」をリリース。