自分自身の音楽がやりたい

──「OUT THE BOX」って、堂珍さん自身が本当に大好きなんだろう最先端のロックを本当に楽しそうにプレイしている1枚ですよね。

ありがとうございます（笑）。

──ただ、だからこそちょっとデリケートなことを伺いたいんですけど……。

あっ、ぜんぜん大丈夫ですよ。

──ロックが好きだからこういうアルバムを作ったことはわかる一方で、これまでの歩みをいったん止める必要はなかったんじゃないか、とも思うんです。並行してやったっていいじゃん、って。

うんうんうん。ただ、CHEMISTRYって、2人のキャラクターが違ったんですよ。オーディションの頃から、2つの異なる個性が声を重ねることで、化学反応を起こすっていうコンセプトのデュオだったから、必要以上に音楽的な部分で歩み寄ることはしなかったんです。最初はその色の違いや、その2人が生み出す一体感みたいなものが面白かったんだけど、よくも悪くも間を取るというか、バランスを考えるようになってきちゃって。メインストリームの音楽の世界の中ではわりとキッチリやり続けてきたほうではあるつもりなんですけど。

──ええ。常に黒人音楽をベースにしたハイレベルなJ-POPを聴かせていたグループだからこそ、もったいない気がするんです。

だけど「もう自分自身の音楽がやりたい」って思ったんです。「CDが売れないこのご時世に、早くやらないと手遅れになる」って。ただ、とはいえ自分の思い描いているものを2人でやるわけにはいかないじゃないですか。

もう音楽については自分を隠すのはやめにしたんです

──デュオである以上、堂珍さんが勝手に「ロックだ！」って舵を切っちゃうわけにはいきませんもんね。

なので、ちょうどCHEMISTRYの10周年の時期でもあったので、そこまではがんばってみよう、と。で、アルバム「Trinity」はお互いのソロ曲が5曲ずつとCHEMISTRYの曲が5曲の15曲入りにしてみて、ツアーもケミで1時間やって、あと30分ずつソロコーナー。ケミのパフォーマンスもダンサーを入れて自分達も踊ったり、エンタテインメント性を強くしてみたし、ソロコーナーではお互い衣装チェンジするし、照明も変える。僕の場合はバンドメンバーも変えてみた。そうやって新しいCHEMISTRYも見せつつ、お互いの次の方向性をファンの人に提示していこうっていうことにしたんです。

──そして2012年にソロ1stシングル「Shout / hummingbird」を発表した、と。確かに「Trinity」の時点で堂珍さんはすでにロックを歌っていたわけですけど、それでもやっぱり1人になることには勇気が要りませんでした？

要りますよね、やっぱり。ただ、なんて言うんだろう。世の中で思われている自分自身のイメージも1つの僕の姿ではあるんですけど、それ以外の部分、もっと肩の力が抜けていたり、もっと実は悪かったり、もっと適当だったり、もしかしたらもっと優しかったり（笑）、そういう自分のいろんな面がCHEMISTRYっていうフィルターを通すと伝わりにくかったから。ちゃんとそういう自分を見てもらいたい、ホントの顔でいたいっていう気持ちがあったんですよ。で、ちょうど新しいオフィスとの出会いもあったことだし「やってみよう」って思えたんですよね。

──じゃあ今は不安やストレスはない？

まったくないって言ったらウソになりますけど、そういういろんな人との出会いのおかげで音楽についてはストレスなくやらせてもらってますね。もう音楽については自分を隠すのはやめにしましたし（笑）、そういう意味でもストレスらしいストレスは今のところないですね。