ナタリー PowerPush - 怒髪天

みんなで歌おうぜ! 最新アルバム全曲解説

05. ナンバーワン・カレー

──「ホトトギス」の戦国武将モチーフ一発というのも面白いですけど、モチーフといえば次の「ナンバーワン・カレー」ですよね(笑)。

増子 うん、カレー。最高でしょ? 30~40歳過ぎるともうね、仕事で怒られたりさ、なんかうまくいかねえなと落ち込んで帰って、人んちからカレーの匂いが流れてきたらさ、「ああ、俺も遠くまで歩いて来たんだなあ。母ちゃんのカレーが食いたいなあ」と思うじゃない。故郷に対して、距離も時間も離れて。それも旅路、タビィ・ロードだからさ。

──わかります。

増子 今食ったら大したことないと思うんだ。実家のカレーなんて。でも当時、早く家に帰りたくなる料理なんてそうそうなかったからね。今の子供だってきっとそうでしょ。誰しもが心に持ってる郷愁がカレーにはあると思うんだよね。いろいろ道は違えどさ、みんなカレーで思い出すもんがあるんじゃないかって。

上原子 昔の、黄色いカレーだよね(笑)。

──昨今のグルメブーム的なカレーとは一線を画す、黄色いカレーの歌ですね(笑)。

上原子 これもでも、元は桃屋のCM曲だよ。メンマ。

──こうやって聴くと、これ以上ないぐらいカレーのCMにピッタリの曲ですけど(笑)。

坂詰 桃屋からカレー出してくんないかなあ。

増子 ラー油もいいよ。カレー味のラー油があったら絶対おいしいと思うんだよなあ。やっぱでも夕方から夜にかけてテレビから流れてくるイメージだね。優しい感じの。

清水 そうだ、初めは4人で回して歌おうとしてたんだ。でもやってみたら、異常なドリフ感が出るからって止めたの(笑)。

増子 おっさんの合唱はどうしたって哀愁が出るね。期せずして。ライブでやろうよ。

06. 夢と知らずに

──昭和のレコードサイズで考えると「ナンバーワン・カレー」までがA面で、ここからがB面になります。

増子 そうそう。

──「夢と知らずに」はB面頭の曲として非常にフックのある曲ですが……これはやはりボーカルの方にお訊きしたほうが良いでしょうか。

増子 うちの野口五郎に訊いてください。

インタビュー風景

上原子 いやあ(笑)。これは普通に作って持ってったんだけど「これ、友康が歌えば?」って軽ーく言われて。1曲ぐらいあってもいいんじゃない、ってことで歌うことになったんですけど……。

増子 アレンジは非常に力強い、THE CLASHというよりはTHE MODSみたいな。

上原子 サイモン&ガーファンクルみたいな、秋っぽいイメージで作ってたんですよ、元々は。……自分で歌ってるから、なんとも言えない気分ですね(笑)。恥ずかしいなあ。

増子 野口五郎系の切ない楽曲なんだけど、昔の歌謡曲って洋楽のおいしいところを持ってきたりしてたじゃない? あれに近いよね。歌詞の世界観は、投げどころが自分じゃないからどんなセリフも言わせられる。で、きれいにかたちを整えた歌詞。また友康の歌声がスイートだから、非常に良いなと思って。

──非常にハンサムな美声ですね。

増子 そう。キャロルで言うところのジョニー大倉サイドね。

清水 そして坂さんのカスタネットがね(笑)。いいスパニッシュ感を出してる。

坂詰 でもあれ電子なんですよ。

──電子?

増子 坂さんはシンセパッドを電子って呼んでるの。でもやっぱ、アルバムの中にこういう曲が入ってるのはいいよ。ギタリストが歌う曲。

上原子 RCサクセションでいうチャボ(仲井戸麗市)さんとかね。リスナーとしては俺も好きだけど、自分のこととなると……。

07. 愚堕落

──次の「愚堕落」は「グッドラック」なんですね。

増子 皮肉だよね。行ってらっしゃい、グッドラック! なんだけど、家から一歩も出てない人の歌だからね。楽曲アプローチは完全に洋楽で、日本語がわからない人が聴いたら「COOL!」って言うと思うんだけど、ただ布団から出たくない人の歌。

──アハハハ(笑)。

増子 これだけ舞台背景、行動範囲の狭い曲はなかっただろうね。

清水 でもこの曲、アレンジは苦しんだよね。一番苦しんだかも。

上原子 だね。ひとつのコード進行だけで行く曲を作りたくて。上モノだけが変化する作りになってるんですよ。

坂詰 だからライブでは多分、プレイヤーとして楽しめる曲なんじゃないかな。

上原子 こういう曲にこんなテーマの歌詞が乗るっちゅうのが、昔からの怒髪天なりのバランス感覚というか(笑)。

08. そのともしびをてがかりに

──ここからアルバムのクライマックスに向かっていくような流れですが、次が「そのともしびをてがかりに」。これもストレートにグッとくる曲ですね。

増子 そうだね。震災の後、大きい会場でライブをやったときに、みんなが拳を上げてオオーッと叫んでる姿を見て「これを探してんだろうな」と思ったの。拳ってのは突き上げるだけじゃなく、会社でヤなことあったときに机の下でクソッて握りしめる拳も同じ。その握った拳に決意が入ってるのが大事なんであって、俺らはそれを探してるんだよ。その決意を勝手に諦めて消さないでほしい。とにかくそこに灯しておいてくれれば俺たちはなんとか探し出すから。「俺は誰にも必要とされてないんじゃないかな」って思うことは俺にもあるよ。でも絶対、誰かがあんたを必要としてるから。これは長年生きてきてやっとわかった、大きな収穫だよ。

──このメッセージを若いバンドではなく、さまざまな体験を経て音楽を奏でている怒髪天が歌うことに、力強さを感じるんですよ。身を持って発せられるメッセージの説得力というか。

増子 若い人でも頭ではわかってるだろうけど、実体験が伴ってるわけじゃないからね。その分の説得力はあると思うよ。ファンタジーじゃ力入んないから。

上原子 この曲はライブで1年ぐらいやってるから、みんながワーッと拳を上げてるライブの光景がすぐ頭に浮かぶけど、改めてこうやってアルバムの中で聴くと、ちょっと新鮮でしたね。

ニューアルバム「Tabbey Road」 / 2012年4月18日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS / TECI-1326

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CD収録曲
  1. 押忍讃歌
  2. もっと…
  3. 歩きつづけるかぎり
  4. ホトトギス
  5. ナンバーワン・カレー
  6. 夢と知らずに
  7. 愚堕落
  8. そのともしびをてがかりに
  9. 雪割り桜
  10. YO・SHI・I・KU・ZO・!

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OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”

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怒髪天(どはつてん)

怒髪天

1984年に札幌にて結成。1988年には増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)という抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーが揃い、「JAPANESE R&E(ジャパニーズ アール アンド イー)」を旗印に掲げた独自のスタイルで幅広い支持を集めている。2012年1月15日には、中野サンプラザ新春公演「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」を開催。4月18日には最新アルバム「Tabbey Road」をリリースし、5月からは全国ツアー「OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”」を行う。