ナタリー PowerPush - 怒髪天

みんなで歌おうぜ! 最新アルバム全曲解説

怒髪天メンバーが語る「Tabbey Road」全曲解説

01. 押忍讃歌

──ここからはアルバム収録曲全曲について、1曲ずつ順にお訊きします。まずは1曲目の「押忍讃歌」。押忍讃歌と書いて「おっさんか」と読むんですよね。まさにおっさん讃歌と呼べる内容で。

増子 自分を含め、おっさんという生き物は今世の中から虐げられてるけど、男なんちゅうのは一生のうちほとんどの時期をおっさんとして過ごすわけじゃない? そこを充実させないと人生は充実しない。それに、震災復興支援の様子を見ても、がんばってるのはおっさん。不条理なものと戦ってんのも、家庭を守ってんのもおっさん。だからもっと「おっさん=ヒーロー」って胸張っていられるような「おっさんの主題歌」が作りたかったの。ガキ共が「俺、おっさんに生まれたかったな」って憧れるぐらいの。まあガキはいずれおっさんになるんだけど(笑)。

上原子 この曲は元々、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」のCM曲として作ったんだけど、ゆくゆくは自分らの曲としてやりたいなと思っていて。商品名のインパクトが強いから、どういう歌詞乗っけてくるんだろうと思ったら、おっさん(笑)。最初は抵抗があったんですけどね。「俺、ライブで『おっさん』って歌うんだよな……」って(笑)。既に何度かライブでやってみたけど、もはやおっさん以外考えられない。

増子 昔っからおっさんってのはカッコいいもんだったんだから。勝新太郎とかさ。ハンフリー・ボガードも。

坂詰 極端だなあ(笑)。

増子 ホント「おっさん期」は長いんだから。今成虫だから。蝶の状態だから。蛾みたいだけど(笑)。

02. もっと…

──いかにも怒髪天らしいナンバーで幕を開けたと思ったら、2曲目の「もっと…」ではまさかの超ファンク。これはまさに先程おっしゃっていた、リズム隊の進化が如実に反映された曲なんじゃないでしょうか。

インタビュー風景

清水 これも桃屋の「キムチの素」の曲で、CMの時点でもスラップベースは入れてたんですよ。

上原子 実は坂さんもシミも得意なんですよ、こういう演奏は。怒髪天の曲ではあまりやらなかっただけで。CMだし、ちょっと大胆にやってみようかって。

増子 前までならモロにファンクみたいなことはやらなかっただろうけどね。でも前作の「オトナマイト・ダンディー」を経て、何をやっても俺ら側に引っ張っていけるなって自信が付いたから。どんだけ本格的にやっても怒髪天の音楽になる。

上原子 前ならファンクをやっても、ただのコピーで終わっちゃってたんじゃないかな。だったら俺らがやんなくても、本家本元を聴いてりゃいいやって。

増子 今の俺たちがファンクをやると、異様な昭和テイストが入ってくるんだよね。意図せず。もみ手の感覚が出ちゃうんだろうね。

──もみ手のリズム解釈によるもたり感がファンクに(笑)。

上原子 海援隊テイストが出てくる(笑)。この曲は演奏がホントに気持ち良くて。リズム隊がしっかりしてるから、ギターは今までにないぐらいペラッペラな音でいけるんですよ。

清水 アンサンブルが面白くて。後半にはいいフレーズでギターが絡んできたり。

──お互い褒めあってますね(笑)。

03. 歩きつづけるかぎり

──続いてシングル曲「歩きつづけるかぎり」。歌詞については前回の取材で増子さんにたっぷり訊きましたので、今回は特にサウンド面についてお三方の意見を。

インタビュー風景

上原子 これは割とスッと出てきたんですよ。いろんなアレンジの可能性があるとは思うんですけど、この曲はあまりこねくり回さないほうがいいなと。このアレンジで、シンプルにドカンとやるのが一番自然かな。

清水 結局これしかない、というシンプルな結論に至ったんだよね。小賢しいことをすればするほどつまんなくなっていく。この曲に関しては。みんな一緒になって大きい声出して歌うぞ、っていうのがこの曲の最大名目だから、それに向けたアレンジだよね。

上原子 とにかく疾走感ですよね。ギターもベースもガシガシ弾いて。ドラムも……。

坂詰 スティック飛ばす勢いで。

──アハハハハ(笑)。

04. ホトトギス

──そして次が「ホトトギス」。

増子 これはもう、ディス・イズ・パンクロックだね。「俺がやる」っていう精神を、戦国武将をモチーフに書いたという。これぞジャパニーズパンクロックなんじゃないかと。「鳴かぬなら 自分で鳴こう ホトトギス」。これ、中学生の頃に思いついて温めてきた言葉なんだけど、先に哀川翔さんに使われちゃって(笑)。説教臭いパンクはよくあるけど、これは新しいジャンルの「教訓パンク」だからね。

──作詞の面に関しては、みなさん完全に増子さんにお任せなんですか?

上原子 お任せですね。大体は歌詞がない状態でアレンジを進めていくんですけど、これは詞が乗ったときに良くなるなという感じが、既に見えてるんですよ。どんなテーマがきても絶対に良くなるという確信があるから、曲も自由に作れるんです。

増子 でもね、昔は1曲にテーマひとつしか考えられなかったけど、今は自分の思ってることをまとめるスキルも身に付いたから、1曲に対して2~3コ持ってって相談できるようになった。俺の名義ではあるけど、歌詞は4人のもんだから。全員が内容を理解してなきゃいけないし、わかって弾く一発とそうじゃないものは絶対違うしね。

清水 うんうん。

増子 こんだけわかりあったツーカーの4人でも、言葉によっては伝わらないことがある。この4人で伝わらないことがみんなに伝わるわけがないじゃない。自己表現なんてのは二の次なのよ。いい曲を作る、自分たちにとって最高の曲を作るってことだけに向かってる。今回はそれが特に大きかったかなあ。

上原子 曲も一緒で、作曲者のエゴでいろいろ入れたくなるんですよ。でもこれも「歩きつづけるかぎり」と一緒で、みんなでライブで歌いたいっていう、それだけですね。Aメロがあってサビがきて、またAメロがあって。

清水 最初はCメロまであったんだよね。結局シンプルな曲になった。友康さんには作ってるときにも言ったけど、これすごくいいメロディだから、このスピードでやるのもいいけど、バラードにもなると思う。

上原子 うん。でも今回はあえて疾走したいなと。アレンジでは細かいこともやってるけど、この曲のイントロが俺、アルバムの中で一番好きなんだよね。アコギを何本重ねたかわからないぐらい重ねてるんだけど、そんなの今までやったことなかったから。ライブでは絶対再現できないけど(笑)。

ニューアルバム「Tabbey Road」 / 2012年4月18日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS / TECI-1326

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CD収録曲
  1. 押忍讃歌
  2. もっと…
  3. 歩きつづけるかぎり
  4. ホトトギス
  5. ナンバーワン・カレー
  6. 夢と知らずに
  7. 愚堕落
  8. そのともしびをてがかりに
  9. 雪割り桜
  10. YO・SHI・I・KU・ZO・!

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OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”

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怒髪天(どはつてん)

怒髪天

1984年に札幌にて結成。1988年には増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)という抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーが揃い、「JAPANESE R&E(ジャパニーズ アール アンド イー)」を旗印に掲げた独自のスタイルで幅広い支持を集めている。2012年1月15日には、中野サンプラザ新春公演「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」を開催。4月18日には最新アルバム「Tabbey Road」をリリースし、5月からは全国ツアー「OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”」を行う。