DISH//|最高のヒーローになるための物語

DISH//が5月26日にニューシングル「No.1」をリリースする。

表題曲の「No.1」は、読売テレビ・日本テレビ系アニメ「僕のヒーローアカデミア」第5期のオープニングテーマとしてオンエアされている楽曲。疾走感あふれるサウンドに乗せ、自分だけの未来を力強く見据えるこの「No.1」にDISH//の波乱万丈な歩みを重ねたというメンバーは、ほとばしるような熱気を感じる歌と演奏で楽曲を表現している。

リリースに際し、音楽ナタリーではメンバー4人にインタビュー。「No.1」に込めた思い、個性豊かな自作曲が収められたカップリング曲の話題、さらには4人が考える“ダンスロックバンド”の現在地など、さまざまな側面から新作を掘り下げてもらった。

取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 笹原清明

僕らDISH//も自信を持って、ちゃんと挙手できる気持ちがある

──まずは、DISH//がテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第5期のオープニングテーマを担当することになった感想から聞かせてもらえますか?

橘柊生(DJ, Key) いやあ、うれしいです。

北村匠海(Vo, G) もともと、昌暉が「ヒロアカ」の大ファンだったんですよ。僕らも、今めちゃくちゃハマってて。

矢部昌暉(Cho, G) そう、だからホントに……僕、オープニングの映像を毎日観ているんですけど、そのたびに泣きそうになるくらいうれしいです。今までは自分の趣味としてアニメを観たりマンガを読んだりしていたのに、今日だって楽屋にマンガがずらっと並んでいて、合間にそれを読んだりしてる。趣味じゃなく仕事として関われることがありがたいなと思います。

泉大智(Dr) 僕の中では「ヒロアカ」って世界的に人気のあるアニメっていうイメージがあって。そういう意味でも率直にうれしいですね。

北村 実は、前にも僕ら、オープニングテーマの候補としてデモを提出したことがあったんです。今回は念願叶って担当できることになって。

 「ヒロアカ」のオープニングテーマを任せてもらえるくらいになったんだって考えると、感慨深いというかね。

──その、デモを提出したタイミングというのはいつ頃だったんですか?

北村 僕が仮レコーディングしたのが約2年前くらいだったと思います。

──そうだったんですね。だけど、今のタイミングはバンドにとってすごく機が熟した、いいタイミングじゃないですか?

北村 そうですね。当時は今に比べたら、アーティストとして自分たちの思いを曲に反映させる力が、まだまだ足りなかったと思うので。そこから自分たちも年を重ねて、少しずつ厚みみたいなものも出てきて……僕らのことを広く知ってもらえた「猫」という“きっかけ”もあり。今年に入って「X」という、DISH//にとって節目となるようなアルバムも完成したその次のタイミングで「No.1」という楽曲を発表できて、さらに「ヒロアカ」のオープニングテーマを担当できることは、本当にうれしいです。

──過去に「ヒロアカ」のオープニングテーマを手がけたのは、ポルノグラフィティに始まり米津玄師、UVERworldと……。

矢部 ホントにそうそうたるアーティストさんが担当されてますよね!

──そこに今回、DISH//も名を連ねて。

北村 「急にDISH//かよ」って思われてないかな?(笑) だけど、オープニングの映像を観ていても、自分たちの楽曲が作品にすごくマッチしていると感じてうれしいんですよ。そうそうたる皆さんに続いて、僕らDISH//も自信を持って、ちゃんと挙手できる気持ちがあるから。ちょっと客観視すると「すげえなあ」って、他人事のように思いますけどね(笑)。

 “ヒーロー”に選ばれたってことですね!

北村 そうだね(笑)。

歩んできた道のりっていうのが、図らずともこの曲に詰まっていた

──「No.1」の作詞を手がけたのはいしわたり淳治さんです。DISH//とのタッグは「理由のない恋」(2019年リリース「Junkfood Junction」収録)に続いて2度目ですね。

北村 以前書いていただいたときから「ホントにすごい作詞をされる方だな」と、ボーカルとして感じていました。今回「No.1」でいしわたりさんの書く詞を改めて見ても、その思いは同じで。アニメの世界観を捉える力もそうだし、言葉の説得力もそうだし……あとは「No.1」という1つの言葉に対して、「突き上げたNo.1が指さす空の彼方」だったり「足元でNo.1の朝日が描いた影」だったり、この言葉にまつわるいろいろな事象がナチュラルに登場するんですよね。1曲の中にすごくドラマがあって、順風満帆じゃない感じも「ヒロアカ」を強く表現していると思うし。ホントに言葉のエネルギーを感じました。

──「No.1が指さす空の彼方 今よりも高い景色が見たいから」で上、「No.1の朝日が描いた影が 止まらずに前へ進めと叫んでる」で前……と、サビが来るごとに視点がバンバン切り替わっていく感じもめちゃくちゃ気持ちいいというか。

北村 バトルシーンみたいなスピード感がありますよね。頭の中に浮かぶ絵が1つだけじゃなくて、実際のアニメのようにシーンが切り替わっていく迫力があって。そう、だからミュージックビデオを撮るときも……今回僕も少し演出に関わらせてもらったんですけど、カメラ対自分で戦っているような撮り方をして、観ている人が主体的に映像に参加しているように感じる演出を提案したんです。まさしくそういう画が、楽曲を聴くだけでバンバン出てきたんですよね。この1曲だけ持って、DISH//の4人とファンのみんなと、どこかへ戦いに行けるような気さえします。

矢部 匠海が言ったみたいに、いしわたりさんの書かれる歌詞ってすごく洒落ていて、天才だとしか言いようがないくらい素敵なんですよね。「No.1」って世界共通の言葉ですし、「No.1」と言われて思い付くポーズも1つだけじゃないですか。この曲の歌詞にはそのポーズにまつわるいろんな景色や情景が書かれてる。さっき大智が言ったように、「ヒロアカ」は世界的に人気のあるアニメだからこそ、「No.1」も日本だけじゃなく世界に向けられた曲になっていると思うんです。本当に作品にピッタリですよね。

DISH//

──この曲の鮮やかな世界観を歌で表現するとなったとき、匠海さんはどんなことを考えてマイクに向かいましたか?

北村 歌詞を読んだとき、Dメロの「誰かが残した名言も 誰かが作った前例も 当てはまらないまま日々が過ぎてく まだ言葉に出来ない まだ形にならない 歪な想い抱いて」という部分が、すごくDISH//らしいなと思ったんですよ。僕たちが歩んできた道そのものだなって。DISH//って、誰かの背中を追うのではなく、自分たちが先頭に立って何かを生み出していきたいっていう思いがすごく強いチームで。正しい形や正しい答えがわからないものに向き合って、議論をたくさん重ねてきて……今結成から9年経って、少しずつ自分たちの形が見えてきたっていう。そういう僕たち4人の関係性だったり、歩んできた道のりっていうのが、図らずともこの曲に詰まっていたんですよね。だからシンプルに、深いことを考えずに歌えば思いは届く、という気持ちがありました。僕らの歴史も噛み締めながら歌っていましたね。