DISH//|最高のヒーローになるための物語

ランランここは宇宙船

──ここからはカップリング曲について聞かせてください。初回限定盤収録の「宇宙船」は、大智さん作曲なんですね。

 はい。去年のステイホーム期間中に自分と向き合う時間がすごくあって「何かやりたいな」とDTMを始めたんですけど、この曲はDTMで作った1発目の曲なんです。

──シティポップっぽい雰囲気がDISH//の曲としては新鮮で、クレジットを見て「大智さん、こういう曲を作るんだ」と少しビックリしました。

 僕も全然、シティポップな感じで作ろうとは思ってなかったんです。普通に曲を作って、みんなに聴かせたら「めっちゃシティだね」と言われて「ああ、確かにそうかも」って(笑)。意図せずそういう曲になりました。

──そうだったんですね。で、大智さんの曲に匠海さんが歌詞を乗せたと。

北村 そうですね。深夜に大智から「これに歌詞を付けてほしいんだよね」って、ポンと送られてきたんですよ。そのときに「この曲は“宇宙とネオン”だから」と言われて、実際聴いたら「ああ、今歌詞を書かないとダメな気がする」と感じて、そのまま朝まで歌詞を書きました。そんな感じで完成したんですけど、そのときから「この曲は絶対世に出さなきゃダメだ」と思えたというか。浮かび上がってきた言葉たちが、曲にガチッとハマった感覚があって。なので、こうして皆さんに聴いてもらえることを夢見ていた曲でもあります。

──最初に聴いたときにサビの「ランランここは宇宙船」というフレーズが強烈に引っかかって、この独特なフレーズになんで聞き覚えがあるんだろう……と考えていたんですけど、匠海さん、以前Instagramにこの歌詞を投稿されていましたよね?

矢部 あははは! ありましたねえ。

北村 そういうの好きなんです(笑)。宇宙の話が好きで、曲を作った当時は大智とよくそういう話をしていたんですよ。それと僕は「アミ 小さな宇宙人」っていう小説が好きで、大切に持っているんですけど……大智からこの曲が届く前から読んでいたので、そういう不思議なつながりみたいなものもあって。自分なりに宇宙旅行の話を書きたいなと思って、作詞しました。

──すごく自由な言葉使いで不思議な世界観が描かれていて、匠海さんの脳内をそのまま覗いているような感覚になりました。

北村 あはは、そうです(笑)。頭開いて、そのまま流し込むような感じでした(と言って、机上の歌詞カードに頭を付ける)。

──歌うときに何か意識したことはありますか?

北村 この曲に関してはノーパワーというか、肩の力を抜いて。大智がディレクションしてくれたんですけど、「ここをもうちょっとエモく、思いを込めてほしい」とか、彼の指示を受けてツルッと何本も歌った感じです。曲が完成したときから、大智が「ここ泣けるんだよなあ」とか感想をたくさん伝えてくれていたので、彼が感じ取ってくれた悲壮感だったり、曲に漂うどこか寂しいムードみたいなものを、僕も味わいながら歌っていました。

柊生がこの“線路”を太くしていく

──通常盤収録の「缶ビール」は、柊生さんの作詞作曲です。

 自分は作った曲をけっこうストックしてあるんですけど、そこからもう1曲新規で作ろうと思ってできたものが個人的に気に入って、フルサイズで仕上げたのがこの曲ですね。曲を作っているときにワクワクする曲としない曲があって、しない曲は途中で作るのをやめちゃったりもするんですけど、ワクワクする曲は本当にいっぱいいじりたくなっちゃう。コイツにはそのワクワクがあったから「いけるかも」と思っていたんですけど、実際みんなに聴いてもらったら好評で。

──アーバンなアレンジで、すごく柊生さんらしい瀟洒な曲だと思いました。気になったのが、歌詞は女性目線なんですね。

 そうですね。頭サビの部分でパパッと脳内に降ってきたワードが、女性目線だったんです。そこから「私の」とか「なっちゃうわ」みたいなワードがどんどん浮かんで「これ、女性目線にしよう。俺、女性目線で歌詞書いたことないし」と思って、そうしてみました。

──書き上げてみて、いかがでしたか?

 けっこういけましたね! 入れ込みたいワードや要素が、すごくいっぱいあったんですよ。それを精査して削って、今の歌詞になっているので……って考えると、書きやすかったんだなあって。

北村 レコーディングも楽しかったです。この曲は柊生がディレクションをしてくれたんですけど、彼が頭の中に描いている、抽象的だけどこだわりの強い世界観を僕が具現化していく作業という感じがして。ホントになんというか、柊生の性格が出に出てる曲なんですよね。DISH//の表現において、こういうアーバンでメロウな路線は柊生が切り開いてくれたもので。今後も柊生がこの“線路”を太くしていくんだなって感じる曲でした。

DISH//って、「一緒に」がテーマじゃない?

──期間生産限定盤収録の「KICK-START」は去年6月の配信ライブ(「DISH// Spring Tour 2020『CIRCLE』-Special Studio Version-」)で初披露された曲ですよね?

 そうですね!

──ファンキーなダンスロックナンバーで、すごくDISH//らしいと言える1曲ですね。

北村 僕らが考える“ダンスロック曲”の定義が、徐々に形作られてきた感覚が最近あって。「NOT FLUNKY」(2019年7月リリース)とかもそうなんですけど、ファンキーで自然と体が動くような曲っていうのが、今のDISH//のダンスロックなんじゃないかなと。そんなことを(作詞作曲の)新井(弘毅)さんに話して完成したのが、この「KICK-START」なんです。

矢部 「こういう曲が欲しいな」と思っていたものを、新井さんが持ってきてくれた感じだったね。

北村 絶妙なレトロ感とキャッチーさが素敵ですよね。そしてなんと言っても、この曲は柊生がショルキーで一緒に踊ってくれるという。

矢部 そう!

 ふふふ(笑)。

北村 「ダンスロックバンド」と言っても僕と昌暉の2人しか踊ってないじゃんという思いが、心の片隅にずっとあったので(笑)。

──楽器の性質上、仕方ないですけどね。

北村 そう。でも、柊生が加わったことによって俄然ダンスロックバンド感が出るというか。

矢部 心強いよね。

北村 うん。ドラムはもちろん踊れないけど、3人で踊れるってことに感動があって……。

矢部 でも、いつか大智も鼓笛隊の格好して踊るんでしょ?

 いやいや(笑)。

北村 とにかく、この曲にはDISH//のダンスロックバンドとしての可能性がすごく秘められてると思います。

 あのさ、DISH//って、「一緒に」がキーワードというか、バンドのテーマじゃない?

一同 うん。

 例えばR&Bや歌い上げる系の曲って、お客さんは「観る」や「聴く」に集中するじゃないですか。DISH//の場合はそうじゃなくて、観てもらうよりも「一緒に踊ろうぜ!」っていう。だからファンクがハマるのかも。ファンクって、自然と体が動いちゃうし。

北村 そうかもしれないね。「一緒に踊ろうぜ」というのが、ダンスロックバンドの核にある思想なのかもしれない。僕ら自身、まだまだ不透明ではあるけど。

──でも、その“核”がだんだん見えてきたってことですもんね。

北村 昔ダンスロックバンドの話をしたときに僕らがしゃべっていた言葉とは、明らかに違うと思います(笑)。僕らもいろいろ模索しながらですね。今でもきっと、「ダンスロックバンドとは」という問いに、明確な正解はないから。

 取材してもらうたびにダンスロックバンド論が変わってるかも(笑)。でも、今出ている結論は、ここ数年変わってない感じがするよね。

──徐々に核心に迫ってきている感じがあるんですね。

北村 そうですね。

──では最後に、「No.1」のリリースを経てDISH//が見据えている未来について聞かせてください。

北村 バンドとして何をしたいのか、何を作り出していきたいのかが、ちゃんと形にできるタームに入ってきたのかなと思うので、ここからはファンのみんな、スタッフさんと一緒にDISH//を作り上げながらも、僕ら4人がしっかりとバンドを動かして、言葉やアクションを発信することが大事になってくると思います。今回はカップリングに自分たちが作った曲が入りましたけど、いずれは表題曲として発表したい思いもあるし……叶えたい夢や目標に、1つずつチェックを入れていくような感覚がありますね。そうやって僕らが思い描く目標にチェックを入れ終わったあとに、もっと大きな景色が見えてくるような気がします。2020年から今までは蓄える期間が長かったので、ここからはたくさん“放出”していくことが、思いを叶えていくことにつながるのかなと思います。

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