DEZERT SORAロングインタビュー|エンタテイナーとして覚醒したV系ドラマーの誓い (2/2)

埋められない1%の満足度のために

──9月のLINE CUBE SHIBUYAに向けて、いろいろ楽しくなりそうですね。ここまでお話を聞いて気になったんですが、今のDEZERTに対してSORAさんの満足度はどれくらいですか?

1日1個はSORAとして何か満足できることを絶対にしようと思って日々生きているんですけど、大きなくくりとしてDEZERTでどれくらい満足しているかと聞かれたら、99%じゃないかな。みんなが元気に生きていて、応援してくれるファンの方がいるから。

──残りの1%というのは?

もっとワクワクさせたい、それに尽きます。昨年の武道館が終わってからそれをより意識するようになりましたけど、きっと永遠に満たされないんじゃないかなと思っていて。ゲームで言うと、キャラクターの体力が満タンじゃないと通れない扉があるとして、その体力が今は99%なわけ。「そのままじゃ通れないぞ」ってめっちゃ言われているみたいで、「じゃあ、そこを通るためにSORAはどうするんだ?」と。今はまず武道館ワンマンを目指すこと。Visual Rockを知らない若い子たちにも「ロックってこんなにカッコいいんですよ」って、どんどん伝えていくこと。僕はその大切さをhideさんから学んだから、今度は僕たちがそういうアーティストになることが恩返しだと思っているんです。大変なことはあるけど、こうやって悩めること自体がハッピーなことだと思うので、すごくワクワクしています。

──ある意味、その1%は一生埋めちゃいけないのかもしれませんね。

そうですね。埋まったら僕、バンドを辞めるでしょうから。満足したらつまんないですよ。僕はロックスターになりたいという夢があるから。その夢のために、残りの1%は埋まらなくていいのかもと思っています。だって、何事も満足したらそこで終わりじゃないですか。そこはYOSHIKIさんやHYDEさんも同じだと思いますよ。新しい刺激が欲しくてTHE LAST ROCKSTARSという名前を冠したバンドを組んだのかなと思うんです。今、僕はどうやってあの人たちと戦うかを一生懸命考えてるんですよ。それはケンカとか憎悪じゃなくて、後輩として下からどんどん攻めたいという意味で。そうしたら、きっとHYDEさんもやんちゃな方なので「かかってこいよ」って言ってくれると信じているし、お客さんにとってもたぶん面白いだろうし。ワクワクするじゃないですか。そのためにどうしようかな?と。そういうことを延々と考えるのが、その埋まらない1%なのかなと思います。

SORA(Dr)(撮影:西槇太一)

SORA(Dr)(撮影:西槇太一)

──SORAさん自身はロックスターになりたいとのことですが、一方でDEZERTはロックスターになり得るんでしょうか?

DEZERTはなりたいと思ってないと思います。それはメンバーをバカにしているんじゃなくて、僕以外の誰もロックスターを目指していないから(笑)。本人には言えないけど、千秋は圧倒的にポップスターなんですよね。千秋の音楽が僕の10代の頃にあったら、たぶん救われていただろうなって。千秋みたいな人間が今ヴィジュアル系のフィールドにいるのはすごくカッコいいと思う。ロックスターに反応するのは、DEZERTでは僕だけ。これは間違いないですし、それがDEZERTの面白いところ。千秋は自分では興味ないって言うけど、僕は彼にポップスターになってほしいですね。それが彼なりのロックなんじゃないかなあと思います。

──では、その千秋さんの作る歌詞や楽曲について、一緒に活動を始めた頃と最近とで何か変化を感じる瞬間はありますか?

上から目線の言い方になっちゃうかもしれないですけど、いわゆるDEZERT初期と呼ばれている頃は千秋にとって「これは強い殺意だ」「頭がもう初期化しそう」と歌うのがポップだった。殺意を覚えたときに「殺意」っていう曲を作ったのは、彼からしたら普通のことだから。それが彼にとっての最強にポップな表現なんです。でも、今の千秋は「一緒に歩こう」とか、あの頃には言えなかったことを歌に乗せている。昔はムカついたことを曲にすることしかできなかったけど、今はもっといろんな人をワクワクさせて、仲間を増やしていきたいと思ってる。それはすごい挑戦だと思うんです。

──そうやってメンバーの変化すらも受け入れられる状況なんですね。

うちは本当に特殊なんで、なんも気にならないっていうか。「DEZERTっぽいね」っていう言葉があるけど、それはここまで十数年の歴史があるからこそで。「なんでもアリって事」なんですよ……hideさんもそう「ROCKET DIVE」の中で言っていましたけど、本当にその通りだと思いますね。「ROCKET DIVE」を初めて聴いてから何年経ったかわからないけど、今でもあの曲には救われています。

学んだことを全部後輩たちにも伝えていきたい

──そんな今のDEZERTに「これがあったら、もうひとつ突き抜けられるんじゃないか」と思う要素について、SORAさんはなんだと考えてますか?

ワクワクするアイデアですね。例えば、このインタビュー記事のビュー数を絶対に50万くらいいかせたいという目標があったとして、それに向けて何をするかと考えることもそう。QRコードを背負って渋谷にずっと立っているとか、よくわからない恰好をしてナタリーマンみたいなキャラクターを作ってTwitterでつぶやいてもらうとか、街中で謎のチラシを配るとか。「みんながワクワクすることってなんだろう?」と考えているのが今のDEZERTなんです。

──昨年6月、渋谷のスクランブル交差点付近に掲示された「V系って知ってる?」の巨大ボードや、Twitter上でバズったハッシュタグ「#V系って知ってる?」もまさにそういうアイデアの1つですよね。

そうです。自分的にもコロナ禍で覚醒した感覚があって。しんどかった時期にコロナ禍に入ったことで、作曲をしたりビデオの編集を覚えたり、アートワークは何がおしゃれで何がハイセンスで、こう思われるからこうしたいとか、いろいろ考える時間ができて。あと、僕には素晴らしい先輩がいっぱいいるんですけど、その中でいつも楽しく相談する先輩が1人いて、それがラルク(L'Arc-en-Ciel)のKenさんなんです。アーティストとしての在り方、エンタテイナーとしてワクワクさせるにはどうするかとか、自粛中に何十時間話したかわからないですけど、自然と勉強させてもらったことが身になり始めたのが日比谷野音の施策(SORAは2022年6月の日比谷公園大音楽堂公演にて上半身裸でドラムを叩くことを開催前に宣言。体を絞り、腹筋を6つに割りライブに臨んだ)。あと、ファンの方が昔のhideさんのファンクラブ会報をくれたのでそれを自粛中に読んだりとかして、エンタテイナーとして俯瞰で物事を見ることを勉強したんです。

──めちゃめちゃ刺激になったんですね。

はい。だって酒を飲んでいるときもハイボールの缶ラベルを見て「こうだったら絶対に買うのにな」とか、武道館が終わってからそういうことばかりを考えちゃう脳みそになってしまって。年明けにKenさんに電話したときにそれを伝えたら、「ようこそ、こちらの世界へ」って言われたんです(笑)。あれは痺れましたね。Kenさんの存在はマジでデカいです。

SORA(Dr)(撮影:西槇太一)

SORA(Dr)(撮影:西槇太一)

──「ようこそ、こちらの世界へ」は僕が聞いても鳥肌モノですし、当事者のSORAさんはその何倍も痺れたんでしょうね。

ですね。そこからは、生意気な話ですけど「hideさんならどう考えるんだろう?」っていう考え方もするようになりましたし。それこそhideさんがLUNA SEAやGLAYへ自分の意志をつないだように、僕も学んだことや得られたものを全部後輩たちにも伝えていきたいんです。そんなタイミングで「The Walker」っていう曲が自然と生まれたのは、このバンドの運命だったのかなと最近思いました。もしかしたら、この情熱は破滅への一歩かもしれないけど(笑)、みんなが楽しければそれでいいですし。そもそも自分を大切にしたいなら、30を超えてこんなタトゥーを入れて、人前に立つ行動自体していないと思うので、そこは覚悟を決めないと。自分たちだけで天下を獲るみたいな暴走族の時代じゃないんだし、平和なヴィジュアル系の世界を作りたいってだけ。そのためには、まずは9月の渋公を成功させなくちゃいけないし、楽しいことを考えるという、すごくシンプルなことなんですよね。

──半年後がどうなっているのかがわからないですけど、仮に失敗してしまったとしてもそこまでの過程で得られるものもあるでしょうし、それがまた次につながっていくわけですね。

けど、成功したとしても満足はしないでしょうね。一度イベントで武道館の景色を見せちゃったわけだし、そこで満足してしまったらファンに対しても失礼ですから。あれ以上に面白いことをしないとヴィジュアル系のファンの皆様にも顔が立たないですし、D'ERLANGERの皆様やHYDEさんも引っ張り出したからには、先輩たちに恥をかかせられない。そのためには口だけじゃなくて行動に移してどれだけワクワクさせられるか、常にSORAとして考える毎日です。ゲーム配信するときもそうだし、親父とメシを食うときもそうだし、友達の相談に乗るときも運動してる時もそう。運動してるときって、めちゃくちゃいろんなアイデアが出るんですよ(笑)。お金を払って僕らを見に来てくれるファンの皆さんをハッピーにさせたいだけなんです。その本質を忘れている人が今のヴィジュアル系には多いんじゃないの?って、カッコよくない人たちを見ると思いますね。

──昨年からのいろんな施策や活動が、今日のお話ですべてひとつの線となってつながりました。ここからの展開が楽しみです。

よかった。ここでまた1人ワクワクさせられましたね(笑)。

──9月23日のLINE CUBE SHIBUYAまでには、ツアーも控えていますね。

今年はとにかく渋公までみんな楽しみにしていてほしいと伝えたい。ディズニーランドに入園するまでのような気持ちを9月23日までに持たせ続けるのが、僕らの今の目標なんです。

DEZERT

DEZERT

ライブ情報

DEZERT LIVE TOUR 2023 / 天使の前頭葉-零-

  • 2023年3月11日(土)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
  • 2023年3月12日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2023年3月18日(土)石川県 Kanazawa AZ
  • 2023年3月21日(火・祝)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2023年3月25日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2023年4月1日(土)京都府 京都MOJO

DEZERT LIVE 2023 / 天使の前頭葉-結ふ-

  • 2023年4月24日(月)東京都 渋谷CLUB QUATTRO(※追加公演)

DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”

  • 2023年6月17日(土)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2023年7月1日(土)新潟県 studio NEXS
  • 2023年7月9日(日)宮城県 Rensa
  • 2023年7月15日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年7月16日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年7月22日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2023年7月23日(日)香川県 高松MONSTER
  • 2023年7月29日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年8月26日(土)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2023年8月27日(日)大阪府 なんばHatch

DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-

  • 2023年9月23日(土・祝)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

DEZERT(デザート)

2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組。2012年より音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年に入ってからは主催ツアー「DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2018」を実施し、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTらと各地で対バンを繰り広げた。2018年8月にMAVERICK DC GROUPの新レーベル・MAVERICKより2年半ぶりのアルバム「TODAY」を発表。2021年7月にアルバム「RAINBOW」をリリースした。2022年6月には初の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)単独公演を行った。2023年はライブ活動を精力的に展開しており、9月23日には東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライブを開催する。