Devil ANTHEM.という名前を背負ううえでの意思表示

──メジャー2ndシングルには「GOD BLESS YOU!!」と「モンブラン TO GO」の2曲が収録されます。「GOD BLESS YOU!!」はBABYMETAL「ギミチョコ!!」などを手がけた上田剛士（AA=）さんの提供曲で、前のめりなアッパーチューンです。

あいり　最初に音源を聴いたとき、どなたが作詞作曲したか知らなかったんですけど、どことなくベビメタさんっぽさがあるなと思ったんです。海外の方にもウケそうな曲だなって。そしたら上田剛士さんの提供曲で。以前から「ギミチョコ!!」のライブ映像をよく観ていたので興奮しました。今までのデビアンの曲にはない雰囲気だからどういうふうに歌っていいのかわからず、いろいろと不安を抱えたままレコーディングに臨んだんですけど、上田さんは「自由に歌っていいよ」と言ってくださって。「自分の思うように歌ってみて」というスタンスのレコーディングが新鮮で、自分の歌の新しい領域を切り開くことができた気がします。

──「自由に歌っていいよ」という言葉を受けて、どんな歌い方を意識したんですか？

あいり　お客さんがヘドバンしてるような海外のロックフェスで歌ってる、そんなイメージでレコーディングしました。

瞳　上田さんが「ar」とはまた違う新しい風を吹かせてくれた、デビアンの可能性を広げてくださった感覚です。

──「ar」がメジャーデビュー前からデビアンと長く関わっているIMAKISASAさん、AILIさんが手がけた作品だったので、そこからの振り幅を感じられますよね。

くるみ　今のデビアンがこういう曲を歌うんだという驚きが私たち自身にあって。結成当初は悪魔と天使の二面性をコンセプトとして押し出していたんですよ。黒、白、赤のシックな衣装に天使の羽を付けたりして。だから当時のデビアンのほうが「GOD BLESS YOU!!」の雰囲気に合ってるんですけど、いろいろなことに挑戦するようになった今の私たちがあえてこの曲を歌うことに意味があるのかなと思っています。初心に返るというか、Devil ANTHEM.という名前を背負って活動していくうえでの意思表示になっている。今のデビアンがこういう曲をカッコよく歌えたら、ほかのアイドルさんとは違うアイデンティティを手に入れて、新しい扉を開くことができるのかなって。

──この曲は「ねぇ神さま」と繰り返す歌詞も印象的ですね。

くるみ　“神さま”にずっとすがっているようなイメージです。「いつも間違い失敗で」「答えが出ないなんて、なんで？」って。

瞳　「ar」が未来に対しての希望を歌っているイメージなのに対し、「GOD BLESS YOU!!」は希望よりも願望の要素のほうが強いんです。

くるみ　でも、曲の最後のほうでは「偉ぶんな！」「偉ぶった神さま」ってちょっと失礼なことを言っていて、なんだか思春期っぽくて面白いなと思います。魂を込めて勢いよく歌い上げる感じです。

あいり　デビアンは昔のほうが生意気な曲、尖った曲が多かったんですけど、用意されたものを歌わされている感じもあったんですよ。そもそも私たちは誰かに反抗したことがなかったですし（笑）。でも最近はメンバーそれぞれの意思がはっきりしてきて、自我みたいなものが芽生え始めてきたんですよね。

くるみ　私たちは曲のイメージ通り、作曲者の方が曲に込めた意図通りに表現しようとしすぎちゃう節があるんですよ。そういう意味では「GOD BLESS YOU!!」は殻を破るチャンスなのかなと思っています。

とっかかりが盛りだくさんの「モンブラン TO GO」

──もう1つの収録曲「モンブラン TO GO」は、ファンの方がイメージする従来のデビアンらしさがある、一聴しただけで盛り上がれそうなビート感の楽曲です。

瞳　過去に「ミッドナイトドライブ」などを作ってくださったRYO-Pさんの提供曲で、特に「ミッドナイトドライブ」と共通するアッパーなムードを感じられると思います。

楓　最初に「モンブラン TO GO」というタイトルを見たときは「どんな曲なんだろう？ 食べ物について歌った曲？」と不思議に思ったんですけど、「人生の中で感じるちょっとした幸せや、親切を受けた喜びを表現する」というメッセージがあって。

くるみ　歌詞の意味を考れば考えるほど難しく感じるので、響きや語呂、言葉のおしゃれさを楽しんでほしいですね。レコーディングでは、あえてクセのある歌い方をしました。「世知辛いしょっぱい日々」と歌うところで小さい「あ」の音を入れたり、「クリーミーな夢に抱かれ」というパートでしゃくり上げるように歌ったり。かわいくて甘い曲かと思えば、クセが強い面白い要素も盛り込まれているので、そのギャップを楽しんでもらえると思います。

侑芽　この曲ではプロのコーラスの方にレコーディングに参加してもらったんです。「モンブラン TO GO」のよさをさらに引き出してくださったと思っているので、ぜひいつかライブでコラボしたいです。

くるみ　佐藤さん（マネージャー兼プロデューサーの佐藤海人）から「コーラス雇ったぞ！」というLINEが届いて、そのときはなんて返したらいいかわからなかったんですけど（笑）、音源を聴いたらすごく素敵でした。自分たちではできない表現が加わっていて。

あいり　サウンドを魅力的に感じる方もいれば、面白くてかわいい歌詞のほうに着目する方もいると思うんですよ。いろんなとっかかりがあるので、どんな反応が返ってくるのか、ファンの方がどう解釈するのか楽しみにしています。

楓　振付もコミカルでかわいいので、ライブで披露するのが楽しみです。

くるみ　「モンブラン TO GO」というタイトルに掛けて、モンブランが入った箱をお店で受け取って持って帰るイメージで、その箱を手の動きで表しています。あと、手のひらで栗を表現したり、モンブラン要素が多めですね（笑）。

メンバー1人ひとりが主役

──12月29日にはTOKYO DOME CITY HALLで結成9周年記念ライブが開催されます。TDCホールはデビアンが前に周年ワンマンをやったSTUDIO COASTよりもキャパが大きい会場で、屋内としては過去最大規模の単独公演になります。

瞳　わー！

楓　対バンでTDCホールのステージに立ったことがあるんですけど、3階席まである広い場内の景色が印象に残ってます。12月のワンマンでは「1階席！」「2階席！」ってステージ上から呼びかけたいです。

くるみ　9周年ライブの開催が決定したことは、6月のZepp Shinjukuワンマンの中で発表したんですよ（参照：Devil ANTHEM.メジャーデビューを経て春ツアー完走、結成9周年ライブはTDCホールで）。私たちは会場がTDCホールであることを事前に知っていたんですけど、お客さんの前で発表したときはすごく緊張しました。「言っちゃった……！ もう後戻りできない！」って。メンバーそれぞれchuLaさんや真っ白なキャンバスさんのTDCホールワンマンを観に行ったことがあるんですけど、会場を見て「でかっ！ どうやって埋めよう!?」って思いました。どんなライブになるんだろうね？

あいり　今までのワンマンは2時間くらいかけて全力で走り切るイメージで、それが気持ちよかったけど、そろそろ新しいことに挑戦してみたいよね。ステージのセットなり、演出なりで。

くるみ　会場が大きい分、夢が広がるよね。炎やレーザーの演出はすでに経験しているし、ステージの装飾も桜を飾ったりいろいろやってきたから、新しいことにチャレンジするとしたらなんだろう。

あいり　でも現実問題、そこにお金をかけるためにはチケットを売らなきゃいけないから、対バンなどを通してデビアンのライブのよさをより多くの人に知ってもらわないとだね。

くるみ　TDCホールは、佐藤さんが私たちに立たせたいと思っていた会場なんですよ。佐藤さんの親心みたいなものも背負って立つステージなのでがんばりたいですね。佐藤さんは私たちのことを直接褒めたりしないし、大きいワンマンが終わったあとも「よくがんばった」とか言ってくれないんですけど、そんな佐藤さんを感激させたいと思っています。それも1つの目標です。

あいり　ファンの方の期待値も大きいよね。

瞳　「TDCホールを成功させたら、その次はどの会場でやるんだろう？」って思ってるかも。

くるみ　ドキドキだね。去年、日比谷野音で8周年ワンマンをやったときに、お客さんを集める大変さを身をもって感じたから、TDCホールワンマンに向けてそろそろ焦らないとヤバいよ。

あいり　気持ちよく2023年を終えたいしね。

くるみ　今年の夏、メンバーそれぞれちょっとずつ体調を壊しちゃって。声が出なくて歌えなくなることもあったんですけど、そのときに元気なメンバーが「じゃあここのパートは私が歌うね」って言ってくれたりして、お互いにカバーして助け合えたんです。そういう夏を経験したことで、メンバーそれぞれの大切さに改めて気付くことができました。デビアンって1人ひとりが主役で、アベンジャーズみたいだなって。この5人だからこそのデビアンだと胸を張って言えます。

──確かに、5人がそろったときのグループとしての完成度の高さは、年々増してますよね。

くるみ　6月に開催を発表したときは不安が大きかったですけど、今は素敵なライブにできる自信があります。