D'ERLANGER|“4人が楽しむ”を根底に バンド感を凝縮した新作「roneve」

ワクワクした気持ちがあれば最高なものになる

──今作は「J'aime La Vie」以上にバンド感が押し出されている気がしたんです。ギターやベースの響き、ドラムの鳴り方や歌に4人の個性がしっかり出ている印象を受けたのですが、レコーディングをするうえで意識したポイントはありますか?

SEELA 常にですけど、1曲1曲の雰囲気とドラムとギターの絡み、あとは歌の位置……とにかく全体を考えながら弾きましたね。

kyo 僕の場合、歌録りは最後なので、ほかのメンバーの音や放つ熱を一番感じられるんですよね。なのでそれをしっかり感じようと思ってレコーディングしました。ワーナーに移籍してからは歌のディレクションはCIPHERがやってくれるんですけど、今回は声の“色合い”だったり、同じ言葉でもトーンを明るくしたり、暗くしたり、細かい部分に集中して指示をくれたんです。勢いに任せて歌の表情を作るというより、丁寧に曲の中に入っていって、それぞれ違う色合いを出せるようにしました。毎回ハードルは上がっていくんですけど、今回が一番難しかったですね。

──「J'aime La Vie」リリース時に「最高傑作ができた」とおっしゃっていましたから、それを更新するのは大変ですよね。

kyo 前作をリリースしたあと、4本ぐらい大きなツアーをやる中でそれぞれの曲が変化していって、新しい景色を作ってくれたんです。それを経てレコーディングに向き合ったので、「前作が最高だったから次は塗り替えなきゃいけない」というプレッシャーよりは「よっしゃ、新しいものを作るぞ」という気持ちで臨むことができて。ワクワクした気持ちがあれば、常に最新作が最高なものになるんじゃないかなと思いました。

──Tetsuさんは何か心がけたことはありますか?

Tetsu 俺の場合は、時間があればあるだけ考えちゃってキリがないので、限られた時間の中でベストを尽くすようにしています。あとは今年2月に50歳になったときに、個人的に50歳のテーマとして“引き算”というのを掲げたんです。

──引き算ですか?

Tetsu そう。僕のこれまでのドラムが足し算だったとしたら、50歳を機に引き算を意識しようかなと。とは言え、うまく引き算ができた曲と足し算しちゃったなっていう曲があったりするんですけどね(笑)。

──50歳を機に新しい試みを取り入れたと。

Tetsu D'ERLANGERの中で僕が一番歳下なんですけど、メンバーが50代になっていくのを見てカッコいいなと思ったし、それこそ10代の頃から全員のことを知っているので、この歳になって一緒にバンドができていることに特別な思いを抱いたんです。20歳のときにD'ERLANGERのメンバーが50代になることなんて想像が付かなかったけど、D'ERLANGER全員が還暦を迎える日も来るのかなと思ったり。50代を迎えた直後でのレコーディングだったので、そういうことを考えました。

D'ERLANGERでやりたい曲は“よっぽど”

──CIPHERさんはアルバムの制作を振り返っていかがですか?

CIPHER(G)

CIPHER アルバムを作るたび、毎回もうこれ以上は無理やと思ってるんです。いろいろ経験はしてきたつもりなんで、曲はなんぼでも書ける。今も書けって言われたら書けます。でもそんなのはD'ERLANGERでやりたい曲じゃない。自分がD'ERLANGERでやりたい曲というのは、言葉ではうまく説明できないんですけど“よっぽど”の曲なんです。ただその“よっぽど”の曲を作ることは誰も助けてくれない。だから自分でそれを見つけて曲にして、みんなに聴かせられるようにする。そのために自分の日常があるんですけど、その中でここ1、2年で大事なものをなくすことが多くて。例えば行きつけの飲み屋とかなんだけど。そんなことがあるたびに、喪失感があって、これは参ったなと……そこでも誰も助けてくれないんです。それで、ずっと「俺もう曲を作れんかな」と思ってしまった。だからデモを作るのが遅れるし。でも、バンドが転がっていくのに新作は必要だし、作ったら作ったで楽しいし……なんでしょうね、この矛盾(笑)。よっぽど自分から「アルバム、出そうか?」って言ってみたいですけどね。

──D'ERLANGERの場合、キャリアもありますし、再結成後にも作品をリリースされているのですでに過去の楽曲という財産があると思うんです。例えば新作は何年かかけてじっくり作って、過去の曲を中心に披露するツアーを行う形もある。それを喜ぶファンの方もいらっしゃると思いますが。

CIPHER 昔の曲ばっかりやってる人もいますからね。矛盾してるんですけど「もう新しい作品は作りたくない」と言ってるのに、いざ4人で作ると楽しいという。

──そこにカタルシスがある?

CIPHER どうなんですかね? でも、ミュージシャンとして昔の曲にぶら下がって生きてるのはカッコ悪いから。「LA VIE EN ROSE」「BASILISK」という2枚のアルバムだけで一度は終わったバンドが、10何年ぶりに集まって新曲をやっても「『LA VIE EN ROSE』がええねん」と言われるのは嫌だというのがあったんです。特に「LAZZARO」というアルバムは、これがなかったら復活した意味がないというぐらいの思いで作って。結局、そのあともバンドとして新しいものを提示するならカッコ悪いのはアカンと思ってるし、メンバーに曲を持っていったときに演奏してもらえるような曲を作らんとと思ってやり続けています。